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「過食症」の「傷つき体験(プチ・トラウマ)」を対人関係療法でなおす

[2015.06.29]

過食症の対人関係療法で取り組んでいく課題は

○自分の気持ちをよく振り返り、言葉にしてみる
○自分のまわりの状況に変化を起こすよう試みる

というシンプルなものです。

つまり

過食を治していくためには、怒りや罪悪感をできるだけ抱え込まないようにすること、やたらと自分を責める習慣を変えていくこと、また不安があるときはまわりの人の助けを借りて解決していくこと、などが必要なのです。
水島広子『拒食症・過食症を対人関係療法で治す』紀伊國屋書店

などの自分自身で取り組んでいく課題である「怒りや罪悪感を抱え込まない」「自分を責める習慣を変える」というメンタライジングやマインドフルネスについては、『対人関係療法で「過食」に焦点を当てないもう一つの理由』で「心の姿勢」ということで説明しましたよね。

 

この「心の姿勢」を使って、不安があるときはまわりの人の助けを借りて解決していくなど、「周囲の人たちとのつながりを取り戻すプロセス」に取り組んでいくことが対人関係療法による治療になります。

「トラウマ/PTSD」の治療と同じように、「過食症」の治療においても、対人関係療法の治療者は

患者の代弁者としての暖かさを保ち、全体として、評価を下さない、無条件の肯定的関心を注ぐ。
水島広子・著『対人関係マスターブック』金剛出版

という姿勢が重要視され、中でも「治療関係への注意」「患者の感情への注意」「患者のアタッチメントスタイルへの適応」が、対人関係療法の治療者としての熟達度にかかわるとされます。

つまり「トラウマ/PTSD」も「過食症」も安心感の提供、つまり治療関係という安全基地の中で、患者さんに修正安定型の愛着スタイルへの変化が起きることが、「自分のまわりの状況(特に対人関係に関するもの)に変化を起こすよう試みる」への取り組みを促進するのです。

 

多くの人が失敗するのは、問題自体に目を奪われ、そちらを何とかしようと血眼になるあまり、愛着はますます傷つき、ギクシャクして、結果的に問題がいっそうこじれる展開に陥ってしまうためである。
問題にあまりとらわれず、愛着の改善に努めることが重要なのである。その場合のポイントは、安全基地を確保することである。
安全基地が確保されると、愛着も安定化しはじめる。すると、放っておいても、問題になっていた症状や行動は減っていく。
力づくで動かそうとしてもビクともしなかったものが、自然に動き始め、肝心な方向に向かい出す。周りの人がその人に「何かをしろ」とひと言も命じなくても、自分から行動を起こし始める。
それは安全基地のマジックである。
岡田尊司・著『回避性愛着障害』光文社新書

上記の「問題」を「過食」に置き換えて読めば、愛着関係をベースにした対人関係療法のすすめ方が浮き彫りになりますよね。

ふつうに食べられない状態とは、食のハビトゥスが身体から流出し、食の順拠点が日常の時空間の外側に移動した結果、食を通じて他者と関わりを生みだし維持する力、言い換えると人と人との間に意味を生みだし、維持する力が失われた状態である。
磯野真穂・著『なぜふつうに食べられないのか 拒食と過食の文化人類学』春秋社

「対人関係に意味を見出し維持する力が失われた」、周囲の人たちへの信頼感が断絶した「過食症」を治療関係という「安全基地」をベースに治療していくのが対人関係療法ということになります。

 

つまり対人関係療法による治療で目指していくことは、対人関係に問題があるからそれを修復する、対人関係が苦手な性格を克服するということではなく、人とのつながりという対人関係の力を利用し自己肯定感・自己効力感を引き出して病気を治していく治療法ということになりますよね。

 

このような「アタッチメントスタイルへ適応」した対人関係療法はどこでも受けられるものではありませんから、過食症やむちゃ食い障害を何とかしたいと思っていらっしゃる方は詳細な診断と愛着志向の対人関係療法を行っている三田こころの健康クリニックに相談してみてくださいね。

院長

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