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「評価」というプチ・トラウマは愛着障害なのか

[2014.08.18]

「反応性愛着障害と脱抑制型対人交流障害」の最新情報』で思春期以降の行動パターンは、親の育て方の影響をほとんど受けないという行動遺伝学の考え方を紹介しました。

また『思春期以降に明らかになる愛着障害はあるのか?』で「プチ・トラウマが関与するのは育て方とは関係が無いのか?」という疑問も呈しました。

 

たとえば、『ダイエット依存症』にはこう書かれています。

ヒトミさんの母親は常にヒトミさんに評価を下し続けただけでなく、「人からどう思われるか」ということを引き合いに出して、他の人も母親同様に評価者なのだということを示しました。
父親からは、それに加えて、「その評価は通常は隠されているもので、いつ自分に怒りとしてぶつけられるかわからない」ということも学びました。
そうやって育ったヒトミさんが「人からどう思われるか」を気にし、空気を必死で読むようになったのも、無理もないと言えます。
水島広子・著『ダイエット依存症』講談社

やはり生育環境はかなり影響していそうです。
これをどう考えたらいいのでしょうか。

 

結論から先に言うと、『思春期以降に明らかになる愛着障害とは?』で書いた「遺伝的要因」と「環境要因」の相互作用は、「生育環境要因」からは除外されてしまうため「家庭環境要因」はほとんど目立たなくなるのです。

 

水島先生の『ダイエット依存症』に書かれている上記のヒトミさんも、少なくとも乳幼児期には、母親との共生的な時間を過ごしたはずです。
しかし、その環境は「教育」という視点によって揺らぎはじめます。
そこでは、本人の能力への評価や、努力の仕方への評価、他者との比較評価など、ありとあらゆる評価が押し付けられます。

それを作りだしているのは、その人が「誰であるか(註:being)」よりも「何であるか(註: doing)」が優先される社会的土壌であり、それを取り入れている家庭の雰囲気である。
ここからその子どもは、課せられたた努力を続ける事によってのみ原初の至福が回復される可能性があるという条件を受け入れた人生を歩むことになる。
子どもをそのような方向に誘導する他者は、のちにアリエティが「支配的他者dominant other」と呼んだ他者に相当する。
津田均・著『気分障害は、いま』誠信書房(註:『刹那の反転7〜 トラウマと愛着障害の彼方へ』参照)

「支配的他者(dominant other)」による「評価」というプチ・トラウマの積み重ねがあるからといって、全員が気分の不安定性を呈するわけではありません。
支配的他者との関係に疑念や攻撃的な気持ちを抱くようになり、反発することで境界線を明確にしていける場合もあります。

もともと「自分は他人から受け入れられる人間だ」という感覚を強く持っている人が他人から批判されたとしても、自分の問題としてそのまま吸収してしまわずに、現実的に修正可能な部分だけを取り入れるか、単に「相手の感じ方」と位置づけることが出来るでしょう。
一方、そもそも自分はだめな人間だと思っていれば、その批判は鋭く突き刺さってしまうでしょう。
水島広子・著『ダイエット依存症』講談社

 

最近では、特定の遺伝子をもつ人は幼少期の外傷体験に抵抗がなく、感情制御が脆弱になってうつ病になりやすいといわれています。

このようなプチ・トラウマの積み重ねは「支配的他者(dominant others)」との二者関係、あるいは自分を取り巻く他者との関係(対象関係)の中で小児期あるいは思春期に、トラウマ関連障害の様相を帯びた「不安型気分変調症」として発症してくることがありますので思い当たる方は、三田こころの健康クリニックに相談して下さいね。

院長

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