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「協調性(社会脳)」の脳科学

[2015.09.18]

秋のシルバーウィーク直前なので、軽い読み物を。

愛着(アタッチメント)は安心感・安全感の土台だけでなく
脳の機能発達にも大きな影響をおよぼすことがわかっています。

たとえば、生理欲求が十分に満たされていても
関係欲求が満たされないと脳の活性は上がらないのです。
苦しみや困難に向き合う強さを支えてくれる対人関係は
クロニンジャーの「協調性(対人志向性)」で表されます。

健常者に、幸せな表情(ポジティブ条件)と
悲しみや怒りの表情(ネガティブ条件)を見せると
ネガティブ条件で左の「扁桃体」が活性化することが知られています。

「扁桃体」は価値判断や情動にかかわる「社会脳」の中心とされており、
自制や計画にかかわる領域、価値判断や情動にかかわる領域や
自分の行動に誤りがないかをチェックし修正する領域とつながっており
さまざまな情動、感情のネットワークの中心でもあるのです。

リチャード・デヴィッドソンら(Lutz et al., PNCS,2004)によると
このネットワークは「自らが苦痛を感じていたり、
誰かが苦痛を感じているときに賦活される」とされています。

デヴィッドソンらの研究では、15~40年の瞑想体験をもつチベット僧が
「無条件の愛と慈悲の瞑想」を行うと
共感や母性愛と関連するとされている扁桃体ネットワークが活性化され、
同時に、積極性、喜び、意志とかかわる左側の前頭前野が活性化し
抑うつ状態とかかわる右側の前頭前野の活動は抑制されていた
と報告しています。

この効果はチベット仏教の慈悲の瞑想だけでなく
上座部系のヴィパサナ瞑想でも認められており
マインドフルネス瞑想は、身体の状態の知覚、他者の情動への共感性を高め
行動のしかた全体を変容させる、と考えられているのです。

さらに修行を積んだ仏教僧だけではなく、
初心者が慈悲の心の訓練を1日30分、2週間おこなうことで、
心身の健康についての自己評価の向上と神経活動の変化がみられ、
ストレス耐性の向上がみられた、ということも報告されています。

この慈悲の瞑想は、他者中心のメタ認知にとどまらず、
善悪の判断抜きに観察する瞑想(「開かれた自覚」)であり、
心理的な葛藤が解消されるレベルでもあるだけでなく、
そのような高度や認知を習慣化することができる方法なのです。

つまり、慈悲(思いやり)の訓練によって
情動や意識に対応する神経ネットワークを成長させることが可能なこと、
さらに、慈悲の訓練によって、
ネガティブな感情と関連した回路は徐々に力を失っていくこと
が示されているのです。

参照:瞑想の脳科学(日経サイエンス)

脳は可塑性があり、神経ネットワークは変容ができるわけですから
自分の心と向き合うことで、協調性や自己志向を伸ばすことも
自分はダメだというストーリーから脱却することも可能なわけですよね。

マインドフルネス瞑想が一種の流行になっているようですが、
一度もマインドフルネスのトレーニングを行ったことのない精神科医が
本を読んで見よう見まねでやってみたら、患者さんの状態が悪くなった
という事例もあるのです。

また「過食症」や「むちゃ食い障害」、あるいは「気分変調性障害」の方も
「呼吸に意識を向け、思考にラベリングする」マインドフルネスを行うと
ある障害がおきてくる場合があるので、違った取り組み方が必要なのです。

マインドフルネス瞑想のトレーニングを長年続けた経験がないと
マインドフルネスの指導は困難ですから、マインドフルネスのやり方は
三田こころの健康クリニックで直接指導をうけてくださいね。

院長

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