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「具合が悪いので今日は行けません」

[2021.02.26]

摂食障害の患者さんから、体調不良を理由に受診キャンセルのお電話をいただくことがあります。

もう少しお伺いしてみると、「朝から過食嘔吐が始まってしまった」や「精神的に落ち込んでいる」などの理由が多いようです。

 

ここで皆さんに少し考えていただきたいことがあります。

例えば頭が痛かったり、お腹が痛かったり、熱が出たりしたら皆さんはどうするでしょうか。

しばらく様子を見てみるとか自宅にある薬を飲むなどするかもしれませんね。それでも良くならなかった場合、病院に行くことを考えるのではないでしょうか?

 

「頭痛」も「腹痛」も、「過食嘔吐」も「気分の落ち込み」もすべて「病気の症状」であることには違いないはずですよね?ではなぜ、「過食嘔吐」や「精神的な落ち込み」の場合は受診することを選ばずに受診をキャンセルしてしまうのでしょうか。

 

今日はあなたの中の「インナーマザー(内なる母親)」についてお話ししたいと思います。

アニータさんは、乱れた食行動に苦しむ女性のインナーマザーについてこう説明していますよね。

 

「彼女たちのインナーマザーは若い母親のようにとても未熟で、自分に確信が持てていません。そのため、心の糧が欲しいというリクエストにうまく答えられず、逆に彼女たちを困惑させてしまうでしょう。甘やかしすぎると思ったら、次の瞬間には愛情を与えず批判的になる、というふうに。そして、この関係性が食べ物に反映されてしまうのです。食べ物は糧の象徴ですから。」

アニータ・ジョンストン著 「摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語」より

 

若く未熟なインナーマザーは、心が欲しているものが何かをうまく受け取れずに、食べ物で対処しようとしてしまうのですね。

そのうえで、アニータさんはどんなインナーマザーを育てていくのかを説明していますよね。

 

「彼女たちは、子どものことを過度に甘やかすのではなく、バランスよく愛情でもって世話ができる、より成熟したインナーマザーを育てる必要があります。子どもが本当に必要としているものを見抜き、チョコレートを欲しがっているように見えても、その裏に潜んでいるニーズを理解し、本当の満足感を与えてあげるようなインナーマザーです。感情を批判するのではなくサポートしてくれ、何かを求めるときには直観と常識の両方を使い、今まで自覚していなかったことに気づかせてくれるようなインナーマザーです。」

 

ここまで読み進めてぴんと来ないと感じる方は、インナーマザーを自分の「健康な部分」と置き換えてもう一度読んでみてください。

 

「過食嘔吐」や「精神的な落ち込み」にために受診できないと感じた時、あなたの「病気の部分(インナーチャイルド)」はあなたの「インナーマザー(健康な部分)」に対し、どんな言葉を投げかけているでしょうか。

アニータさんはあなたにこう語りかけています。

 

「どうすればいいかって?自分のことを、大切な我が子のように扱うのです。たとえば、何かミスをしたときにただ自分を叱り飛ばすのではなく、そこから学べるように見方を変えます。つまり、「なんて馬鹿なことをしたの!」と叱るのではなく、「今回の経験を基に、次はどうすればいいかな?」と自分に尋ねるのです。」

 

「今日は行きたくない」「行けない」と感じた時、その言葉を鵜呑みにする前に、まずは「あら、今日はどうしたの?」とあなたのインナーチャイルドに語りかけてみてほしいのです。

行きたくないと駄々をこねている小さな子どもに、あなたのインナーマザーはどう接するでしょうか?

 

今回は体調不良を取り上げましたが、新型コロナウイルスの感染を懸念しての受診控えについても同様のことが言えるのではないかと思います。

繰り返しになりますが、身体の症状では受診しても、摂食障害に関連する症状では受診を控えるということの背景にはどんな思考が影響しているでしょうか。

 

自慢するつもりはないのですが、私自身は体調不良を理由に治療をキャンセルしたことは数年間の治療中一度もありませんでした。一度だけ予約の変更をお願いしたのは、父が急死して実家に戻ったときです。

私がなぜ休まずに治療を続けることができたのか。それは何も私が特別だったわけではないのです。ただ、「このままの自分では嫌だ」、「ノートの1ページ目に書いたような自分になりたい」という想いを持ち続けただけなのです。摂食障害を抱えながら生きてきた今までの人生を考えれば、私には受診を休む理由がありませんでした。

 

今日はアニータさんの力強いこの言葉で締めくくりたいと思います。

 

どうあがいても、過去は変えられません。けれど、将来はまた別です。自分自身に必要な糧を与えてくれ、ただ生き抜くだけでなく成長し、より良い日々を過ごせるようにと導いてくれるような、良いインナーマザーを育てる能力が自分にもあるということを認識することが大切です。

 

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