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過食症からの回復とセルフ・モニタリング

[2019.07.22]

ed43edbb7a325f9331cdb3f22624807a_m係性には、「自分自身との関係」「二者関係」「集団との関係」の3つの次元があります。

自分自身との関係を土台に考えると、関係性は、「身体との関係」「心との関係」、そして自分の外側の対人次元の「二者関係」「集団との関係」に分けられます。

 

過食や過食嘔吐から回復するときには、自分自身との関係を改善し、行動の仕方を変え、二者関係・集団との関係を改善するという、3つの次元への取り組みが必要になります。

3つの次元に取り組むことで、どんな自分も認めることができて(自己志向)、他者との関係を改善すること(協調性)ができてくると、過食や過食嘔吐から回復していくのです。

 

エドと別れる、分離するということは、決して簡単な作業ではありませんでした。
回復の過程を通して、私は常に、「これは私の考えなの?それともエドの考え?」と自分に繰り返し問いかけていました。
私の答えは、たいてい「エド」でした。

(中略)

結局、エドの存在と正面から向き合い、私が行動を起こさないと何もならないということに気がついたのです。

シェーファー、ルートレッジ『私はこうして摂食障害(拒食・過食)から回復した』星和書店

 

摂食障害を取り除くことではなくて、摂食障害との付き合い方を変えること」、つまり摂食障害との関係に変化を起こすことが、過食や過食嘔吐からの回復をもたらします。

その土台となる一番最初の作業が、「自分自身と摂食障害の部分を分離すること」です。

その作業を「自分自身との関係を改善する」プロセスと呼びます。

治療の中で、(1) 自分自身の身体感覚(情動)や感情を感じられるようになること、(2) 自分自身の心の中で起きていること(とくに思考)をモニタリングすること、にとり組んでいきます。

  

今、あなたにはエドの声が聞こえますか?
この本を読み進めながら、エドの反応をうかがってみてください。
エドの反応と、あなた自身の反応を区別するように練習してみましょう。
あなたはエドではないんです。

エドは自分の欲しい情報だけをこの本から得ていくでしょう。
しかしあなたの仕事は、あなたの回復のために、あなた自身の人生のために、何が自分に必要かを見極めていくことです。

シェーファー、ルートレッジ『私はこうして摂食障害(拒食・過食)から回復した』星和書店

 

ジェニーさんがとり組んだ「エドの声」を聞き、「自分の反応とエドの反応」を区別する取り組みは、「セルフ・モニタリング」と呼ばれます。

セルフ・モニタリングは、自分自身の中で起きていることを客観的に俯瞰する作業です。
セルフ・モニタリングの取り組み方は、思考と思考によって引き起こされた身体感覚(情動・感情)から距離を取る方法でもあるのです。

 

対人関係療法でのセルフ・モニタリングでは、思考から距離をとって眺める、真に受けない、現実ではなくたくさんの思考のうちの一つにすぎない、などなど、思考との付き合い方(関係性)を変えることにとり組みますよね。

対人関係療法でとり組むセルフ・モニタリングは、過食症だけではなく、自分を責める考え方で抑うつ状態が続いてしまう「性格と間違われやすい慢性のうつ病(気分変調症)」や、考えにとらわれて身動きできなくなってしまう「不安障害」に対しても効果があるのです。

 

セルフ・モニタリングを行うときには、自分自身という主体性の土台(アイデンティティ)が安定している必要があります。

しかし、摂食障害はアイデンティティが確立する思春期に発症するため、「自分は誰か」という自己固有性が揺らいでいることも多いですよね。

アイデンティティの揺らぎ状態が長く続いている過食症や気分変調症では、セルフ・モニタリングは、最初はすごく難しく感じられますよね。

  

私は、エドが考えていることはだいたいわかっていましたが、この私、ジェニーが考えていることを探し出すのには苦労しました。

不思議なことに、私はエドのことはとてもよくわかっていたのですが、これまで自分自身であるジェニーに会ったことがないのか、と思えることがたびたびありました。

(中略)

そして、エドと自分自身とを切り離し、本当の自分自身に初めて、あるいは再び出会わなければいけないのです。

シェーファー、ルートレッジ『私はこうして摂食障害(拒食・過食)から回復した』星和書店

 

過食症や気分変調症では、他者(とくに養育者)の価値観を自分自身の考えであるかのように取り入れてしまい、自分はダメだ、自分には価値がないと感じてしまいます。

そして、取り入れた価値観が本来の自分自身の固有性と衝突し、その苦痛を自分でなだめようとする行動(自己治癒行動)が過食や過食嘔吐に結びついています。

 

その状態から抜け出すためには、自分自身と向き合い、本当の自分自身と出会うプロセスが必要不可欠なのです。

 

回復とは、人生に新しい視点を持つことです。

小さな変化の塊が、大きな変化へと導いていってくれるのです。

自分自身の中に長期的な変化を起こすのには、時間がかかります。

どうぞ忍耐強く励んでみてください。

シェーファー、ルートレッジ『私はこうして摂食障害(拒食・過食)から回復した』星和書店

 

小さな変化の積み重ねが長期的な変化、つまり対人関係療法でいう「ライフ・ゴール(人生の価値や目的)」へと導いてくれます。

摂食障害(拒食・過食)から回復されたジェニーさんの言葉を信じて、皆さんも夏休みの間に、小さな一歩を踏み出してみてくださいね。

 

院長

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