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摂食障害(エド)との自己内対話

[2019.10.21]

18447217_1354113961341841_6081065231441651593_nこころの健康クリニックでは、対人関係療法による過食・過食嘔吐の治療の一番はじめに、「自分の気持ちをよく振り返る」セルフ・モニタリングの練習をしてもらっていますよね。

しかし多くの患者さんが、考えと気持ちを区別することを難しく感じ、身体が感じる感覚もキャッチすることもハードルが高いので、このプロセスに取り組むときは、皆さんが悪戦苦闘されています。

これまで、過食・過食嘔吐で自分の気持ちや身体の感覚を麻痺させ、感じないようにして、なかったことにしてきたのですから、治療の初期には気持ちや身体感覚がわからないのは無理もないことなのです。

 

ジェニーさんは、心理療法家のトムさんから、自分と向き合う最初の課題として、「エンプティ・チェア(2つの椅子)」という課題を出されました。

 

最初の頃の面接で、トムは、予備の椅子を出してきて、その椅子に私の摂食障害が座っているものと思って話をするようにと言いました。

私は、なんて馬鹿なことを言っているの?という顔をしていたと思いますが、その様子をトムは無視して、「もしも今、この椅子に君の摂食障害が座っているとしたら、君は何て言いたい?」と尋ねました。

トムは専門家ですし、私はお金を払って面接を受けに来ているのだから、と思い、試してみることにしました。

シェーファー、ルートレッジ『私はこうして摂食障害(拒食・過食)から回復した』星和書店

 

こころの健康クリニックでも、健康な部分と摂食障害の部分の対話に、このやり方を勧めていますよね。

「エンプティ・チェア(2つの椅子)」のやり方は、自分自身の考えと摂食障害(エド)の考えを切り離し、距離をとって客観的にみることができるようになるだけでなく、後に、考え方がちがう人とのコミュニケーションにも役立てることができるのです。

 

私は椅子を見つめて言いました。

「なんで私のすべての動きをコントロールしようとするの?なぜ私のことを放っておいてくれないの?」。

私はこの言葉を言ったあとで、少し摂食障害から離れられたように感じました。そして同時に爽快感も味わいました。
そのあとも、私は自分自身と摂食障害との会話をずっと続けました。一時間が過ぎる頃、私は摂食障害のことを、エドという男性の名前で呼ぶことにしました。

そしてそのとき初めて、私は、摂食障害から別れられるかもしれないという感覚を持つことができ、自由に向けて、最初のステップを踏み出すことができたのです。

(中略)

みなさんも、トムが治療的なアプローチを私に示してくれたときにはどれだけ私が安心したか、おわかりになるでしょう。ついに、自分の摂食障害と話すことができたのですから。

摂食障害について、これまで私が何と思っていたのかについて、直接摂食障害に話すことができるなんて、とても興奮しました。

ほんの一瞬だけ、長いこと隠れていた健康な部分のジェニーを体験することができたのです。

シェーファー、ルートレッジ『私はこうして摂食障害(拒食・過食)から回復した』星和書店

 

摂食障害(エド)との対話や自己内対話で練習してもらうのは、「非暴力コミュニケーション」というやり方です。(詳細はクリニックで聞いてくださいね)

 

安定した自己感や適応的な関係性を支えるコミュニケーションを取ることができるのは、自分自身と他者の取る言動を、心の状態と関連づけて思いを馳せるメンタライズする能力があるからです。
摂食障害(エド)の考えに支配されてしまうと、対人関係の問題が引き起こされるだけでなく、心の状態に思いを馳せるメンタライジング能力が制止してしまいます。

「非暴力コミュニケーション」を使って摂食障害(エド)との関係を改善し、メンタライジングを回復させることが、自分自身との関係を改善することにつながり、さらに、対人関係上の機能不全が修正されていくのです。

「非暴力コミュニケーション」で自分自身(摂食障害:エド)との関係を改善する方法の1つが、「エンプティ・チェア」という方法です。

 

トムさんが「エンプティ・チェア(2つの椅子)」のやり方を解説してくださっています。

 

この練習をするために、椅子を2つ用意してください。
1メートルほど離して、向かい合うように椅子を置きます。片方をエドの椅子に、もう一方をあなたの椅子に決めます。

そして、エドの椅子に座っているときには、あなたはエドになったつもりで話をします。その椅子に座っているかぎり、あなたはエドを演じるのです。

あなたの椅子に座るときには、あなた自身になる練習をしてみてください。摂食障害に操作されていない、本当のあなた自身になるのです。

多くの人にとって、はじめはかなり難しいかもしれません。
私のところに通っている患者さんたちも、摂食障害の自分以外の自分自身について、あまり知らないという場合が多いものです。

でも私は、多くの人たちが回復する様子を見てきているので、皆さんにも約束できます。
この練習を続けていくと、あなた自身の内なる声はだんだんと強くなって現れてきます。

シェーファー、ルートレッジ『私はこうして摂食障害(拒食・過食)から回復した』星和書店

 

過食や過食嘔吐から回復するために、ローゼンバーグの非暴力コミュニケーションを使った自己内対話を練習するときのコツのようなものが3つあります。

それは、ジェニーさんが「今日すること」としてリストアップしてくれている課題の中に含まれています。

 

次の質問への答えを、1週間毎日続けて日記に書き込みましょう。

エドと自分自身の考えを区別する練習です。

  • エドは、今日は私に何をしてほしがっているんだろう?
  • 摂食障害から回復するために、今日は私は何をしないといけないだろう?

簡単なように思うかもしれませんが、決して簡単ではありません。

いつでも新しいことを学ぶときには時間と労力がかかるように、一生懸命練習しないとなかなか上手にできるようにはならないのです。

根気強く、あきらめないで続けてみてください。

シェーファー、ルートレッジ『私はこうして摂食障害(拒食・過食)から回復した』星和書店

 

ローゼンバーグの非暴力コミュニケーションを使った自己内対話のコツの2つは、ジェニーさんが書いてくれているものです。

  • 欲しいものは何か?(私に何をしてほしがっているんだろう?過食?嘔吐?)
  • 必要としているものは何か?(私は何をしないといけない?)

過食や過食嘔吐からの回復に必要なものは、摂食障害(エド)が欲しがるものの下に隠されています。

 

そしてもう1つのコツは、

  • 必要としているものが得られて満たされたなら、どのように感じるか?

ということです。

 

摂食障害(エド)が必要とするものを手に入れたときに、どのように感じるか?を知ることが、摂食障害(エド)と闘わずに摂食障害から回復するために必要不可欠なのです。

そしてその多くは、『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』の「第9章 力――内面的な力と外面的な力の違い」で説明されているものなのですよ。

 

院長

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