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摂食障害とパートナー関係

[2017.09.04]
ここ数回で摂食障害症状と、女性の月経周期、とくに「月経前症候群(PMS)」や「月経前感受性(PMS)」、妊娠・出産とアタッチメントの関連について見てきました。 摂食障害と月経周期の関連については、「制限型の拒食症」や「過食嘔吐を伴う拒食症」などで、低体重になると月経が停止し、エストロゲンの分泌が減るため骨粗鬆症のリスクが高まる、との医学的記述があるくらいで、セクシュアリティとの関連までは明らかにされているテキストはほとんどありません。   ジョンストン先生は、パートナー関係(セクシュアリティ)は周期であり、女性として生きていることだとおっしゃいます。 対人関係療法でも思春期・青年期以降の成人期前期から成人期にかけて、重要な他者との関係をあつかうときは、アタッチメントの力動的成熟を考慮して養育者との関係ではなく、パートナー関係に焦点を当てますよね。  
セクシュアリティを探究すると、自然との周期に気づくことがよくあります。 セクシュアリティは常に安定した波のないエネルギーではなく、満ちては引く潮のようなものです。 (中略) セクシュアリティを周期としてとらえることができると、引きの時期を、もはや性的ではないサインとしてではなく、新しいサイクルへの移行期間として正確に捉えることができます。 (中略) 女性としてのセクシュアリティを大切にすることで、ありとあらゆる感覚を研ぎ澄ますことができ、今という時間に十分に存在することができ、自分自身にとっての真実を体験し、自分は完全であると感じることができます。 女性としてセクシュアルであるということは、生きているということなのです。 ジョンストン『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』星和書店
  女性として生きていること、ありとあらゆる感覚を研ぎ澄ますこと、の大切さを考えると、感情をなぐさめ麻痺させる過食や、満たされなさや空虚感をなだめるダラダラ食いの意味を感じられるようになってきます。   先日、ある患者さんからお腹いっぱいなのに、チョコレートをだらだら食べたという話をお聞きしました。 チョコレートを食べたいと感じたのはなぜだと思いますか? チョコレートでなければならなかった理由は何か思いつきますか? チョコレートを食べた後、どんな気持ちになりたかったのだと思いますか? チョコレートではなく、本当は何が必要だと感じていたんだと思いますか? 患者さんに投げかけたこのような質問の答えを考えながら、ジョンストン先生の解説を読んでみましょう。  
性的な欲求不満を感じた女性が、チョコレートのような特定の食べ物でそれを満たそうとするのもよくあることです。 自分のセクシュアリティに対して抱いている感情と似たような感情をチョコレートから得られることに気づくと、セックスの代わりにチョコレートを食べるようになります。 快感を食べる(得る)価値のない人間だと思ってしまっている女性にとって、両方とも「罪深い」くらいに美味しく、禁じられたものであり、官能的ではあっても、不必要なもので、自分にとってよくないものなのです。 ジョンストン『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』星和書店
  食べ物は、心や魂が本当に必要としているモノやコトの象徴やメタファーなのです。 この患者さんにとっても、チョコレートとパートナー関係(セクシュアリティ)との関係を示しているようでした。 さらにそこから、カレには太って欲しくない、でも、カレが太っていても、カレ以外の痩せている人と結婚することなんて考えられない、あれっ?太っても痩せててもカレの本質は変わらないのに不思議ですね、と、話しながら矛盾した考えに気づいていかれました。 この矛盾が、「健康な部分」と「摂食障害の部分」の考え方の闘いなのです。  
セクシュアリティとのつながりを長いこと失っていた女性は、この女性らしさの最も深いところのつながりに飢えています。 完全に満たされている状態をただただ切望します。 そして、もはや本当のところは何に飢えているのかわからないために、それを食べ物への飢えだと勘違いするのです。 ジョンストン『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』星和書店
  ここでちょっと脱線して、自分自身とのつながりと、他者とのつながりの関係について説明しておきます。(崔『メンタライゼーションでガイドする外傷育ちの克服』星和書店から抜粋) 養育者が子どもの中で何が起こっているのかを省みて(リフレクト)、親は自分の心の中に子どもの心のジオラマを作り上げて見わたし(メンタライズ)、そして省みて消化された情動を子どもが鏡でみるように子どもに示す(ミラーリング)というプロセスが十分でなかった影響は、青年期から成人期にも影響します。 メンタライズ(自分と相手の心の中を見わたす)が弱く、感情調節(感情を抱えておくこと)が苦手です。基本的信頼感が乏しく、自己評価がもろく不安定で、自責の核になるヨソモノ自己が発生します。(『摂食障害から回復するために自己志向と協調性を高める』参照) 虐待やネグレクトではありませんので、このような人たちは愛着障害とはいえませんが、愛着スタイルは不安定型になります。   自分と母親はどの部分も融合していないという「分離の感覚(自他境界の感覚)」が不十分で、この世のどこかにすべてをわかってもらえる融合状態があるかもしれないという「100%幻想(依存欲求)」を捨てきれません。 ジョンストン先生がおっしゃる「完全に満たされている状態」、つまり「100%幻想(依存欲求)」が大きくなればなるほど、見捨てられ不安も大きくなります。 その葛藤の苦しみを逃れるための対人関係行動は大きく2種類に分かれます。
  • 100%信頼できるかどうかハッキリさせる(試し行動)
  • 葛藤を感じないようにその人から遠ざかる(遠ざかり)
  摂食障害は自分の心の動きを「回避(退避)する病」ですから、対人関係も回避的(遠ざかり)で、波風を立てないようにしています。波風を鎮めるためのスキル(「協調性」のうちコミュニケーションによる自己主張&交渉スキル)が身に付いていないのです。 さらに、心の中で何が起きているのかがわからず・わかろうとせず(メンタライズが弱い)、感情を抱えておくことが苦手(感情不耐)なので、食べ物でなだめ麻痺させようとしますし、あるいは排出行為を使って無かったことにしようとします。   そのとき選択された食べ物(この場合はチョコレート)から、心の状態を見わたしてみると、どうもこの患者さんの場合はパートナー関係(セクシュアリティ)に関連したテーマがあるようだったというお話でした。   院長
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