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摂食障害からの回復過程の紆余曲折をどう意味づけるか

[2018.01.15]
三田こころの健康クリニック新宿では、【自己志向】の中心である【深い自己受容】を、【セルフ・コンパッション】の概念を援用して、(1) 自らの思考・感情・感覚に気づいていること、(2) 生きている限り誰しも感じる感情を苦悩に変えないこと、(3) 自分への優しさ、と説明していますよね。 対人関係療法による治療では、「自分の気持ちをよく振り返る」内省に取り組みます。 過食で麻痺させたり、排出行為でなかったことにして、これまで見ないようにしていた心の中を観察するわけです。   しかし治療を始めてすぐの頃は、まだ気分耐性が高まっていない(心の枠組みが広がっていない)こともあって、辛く感じてしまうのです。 『8つの秘訣』にも、「それまでずっと覆い隠されていた無数の気持ちともう一度つながろうとするからこそ、回復への道を歩み始めたばかりの頃は一時的に苦しさが増強しがちなのです」と書いてありますよね。 ジョンストン先生も、そのことを教えてくれています。  
感じないようにしてきた感情に対する気づきが増えたり、怒りや哀しみや孤独といった感情の力を真っ正面から受け止めて、それらを感じることができるようになったりする過程では、気分が前よりも悪いと感じるせいで、克服するどころか悪くなっているように思うこともあるでしょう。 けれども実際は、前よりも多く感じているだけなのです。 最初に表面に出てくる感情は、たいてい最も不快なもので、気づかれることや表現されることが最も必要なものです。 ですから、それらの感情が表に出始めたときには、厳しく評価したり他人からの批判の対象にしたりしないようにすることがたいせつです。 それらの感情は何によりも感じられ、受け入れられ、表現される必要があるのです。 そうすることで、邪魔することなく過ぎ去ってくれます。 ジョンストン『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』星和書店
  このようなときに取り組むのが、「ジャーナリング(ノートに書きだしてみる)」ことです。 あるいは『8つの秘訣』にもあるように、「名前をつけて手なづける」「評価しない」などの方法を使って、「気持ちは感じたままにしておけるだけでなく、しっかり感じているとむしろ圧倒されにくくなる」ことを体験してみるのもよいでしょう。  
ときには、感情が浮上することと、その感情に対処するスキルが身に付くこととの間に「時間のずれ」を感じるかもしれません。 しかし、新しい感情の扱い方を学ぶことで、過食や絶食、ダイエットや過活動の衝動が収まっていきます。 この過程で欠かせないのが、思考と行動には大きな違いがあり、両方を尊重しなければならないこと、そして変わるのには時間がかかるということを理解することです。 たとえば、自分が食べ物で何をしているかをすぐに理解できても、感情面での問題への対処方法はすぐには変えられないかもしれません。 感情への対処方法を変えるには時間がかかりますし、練習も必要だということを忘れないでください。 「もっとよく考えないとだめだ」とか「いったい自分はどうしちゃったの?」というような厳しい自己批判は何の助けにもならず、むしろ邪魔になるだけです。 新しい過程でつまずいたときこそ、今までになく自分への優しさや思いやりが必要なのです。 ジョンストン『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』星和書店
  ジョンストン先生の解説のように、【深い自己受容】を培っていく心の姿勢を、三田こころの健康クリニック新宿では、【好奇心・寛大さ・受容・愛情(英語の頭文字をとってCOAL)】と説明していますよね。(『摂食障害からの回復には心の姿勢を明確にすることが大切』参照)   ジョンストン先生が「感情への対処方法を変えるには時間がかかりますし、練習も必要」とおっしゃっているように、自分の心と少しずつ馴染んでいく練習が必要です。   『8つの秘訣』にも、「回復していくクライエントさんのほとんどが、自信をなくし希望を見失う時期を体験します」「回復の過程では紆余曲折はつきもので、立ち止まったり、転んだり、時には後戻りして症状が再燃したりすることさえあるでしょう」と説明されているように、摂食障害から回復する道のりは平坦ではなく感じられるのです。  
迷宮から抜け出して乱れた食行動を克服する道中では、逆戻りしている螺旋のような道のりを歩いているような気がするかもしれません。 それもいたって普通のことです。 自分の考えや感情に食べることで(あるいは食べないことで)対処している瞬間に気づけるようになるまで、何度でも来た道を引き返すからです。 食べ物と感情との関係についてのぼんやりとした理解は、少しずつ、乱れた食行動の引き金となる特定の出来事にも広げなければなりません。 来た道を引き返すたびに、認識レベルが上がっていくのです。 ジョンストン『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』星和書店
  三田こころの健康クリニック新宿では、後戻りしたように感じたときは、土台固めが必要ということがわかって、そのきっかけとなった体験をよく吟味するように、と伝えていますよね。 そして、その次のステップは、以前に到達していたところから再スタートなのです。 『8つの秘訣』でも、後戻りしたような体験は、「どんな経験が摂食障害を引き起こしやすいのかを見極めることで、自分が取り組む必要のある領域を知る手がかりになります」と説明されていますよね。  
まずはパターンを見つけるところから始まります。(中略)ある程度の期間、自分の行動を観察して記録しなければわからなかったパターンです。 旅を続けるにつれ、より早く自己認識できるようになります。 (中略) いずれは、感情を押し込めているその瞬間に、どんな感情を押し込めようとしているのかがわかるようになります。 (中略) しかし、まだその場で過食をやめることはできません。動き出してしまった車輪の勢いを制止きれないからです。そこで過食をやめられないことで自分を批判するのではなく、この時点では、新しい気づきができたことをみとめてあげなければなりません。 ジョンストン『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』星和書店
  後戻りした感じを、挫折ととらえるか、課題の提示ととらえるか、「意味づけ」の仕方によって、長期的な価値につながる感じ方はどちらなのだろう?と考えていけば良さそうです。 「たとえ行動を変えることができなくても前に進み続けているときもあるということを、ぜひ忘れないでください」ね。   院長
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