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摂食障害からの回復と自己次元の成長

[2019.10.28]

59087168_2187788044641091_5642465297450401792_n前回の『摂食障害の部分(エド)との対話』で、非暴力コミュニケーションを使った自己内対話を練習するときの3つのコツを紹介しました。 

アサーションや非暴力コミュニケーションを日本語で行うときには、日本語特有のクセを理解しておく必要があります。

その1つがジェニーさんが使っていた「なんで〜するの?」「なぜ〜してくれないの?」など「Why」を使った話し方です。

「なぜ?」「どうして?」から始まる発言は、単に理由を聞いているのではなく、相手に対しての攻撃や責めるニュアンスを含むので注意してくださいね!と、こころの健康クリニックでは、その言い換え方や、他者からそのような言葉を言われたときの心の使い方も教えていますよね。

 

ジェニーさんは、エドに対する怒りを表現しています。

 

エドがどれほど私の人生に影響を与えてきたか、いや、私の人生を支配してきたのかが理解できるようになると、私は、とてつもない怒りを覚えました。

こんなにもエドの言いなりになってきてしまったことが、とても恥ずかしくもありました。本当にひどいことも、いくつもしてきたのです。

シェーファー、ルートレッジ『私はこうして摂食障害(拒食・過食)から回復した』星和書店

 

摂食障害(エド)や自分、あるいは生まれ育った環境や親を責めたくなる気持ちはわかりますが、いくら責めたとしても現実が変化するわけではなく、気分がますます落ち込んでしまうだけですよね。

 ジェニーさんもそのことを体験されていますね。

 

事実、それまでは、面接のたびに、回復への見込みも感じられずに、さらにがんじがらめになっていく自分を感じていました。面接中、ずっと泣きながら、なかなか回復できないことへの不満を語り続けでいたものです。

誰も、私が摂食障害と肯定的に闘っていくというステップを示してはくれなかったのです。

シェーファー、ルートレッジ『私はこうして摂食障害(拒食・過食)から回復した』星和書店

 

責めたい気持ちがあるということと、実際に責めることは別であることを理解した上で、「セルフ・コンパッション(自分への優しさ)」の土台として、『摂食障害の部分(エド)との対話』で紹介したエンプティ・チェアの技法を使って、「自分が、自分と同じような他者と向き合ったとき、自分と同じような他者に対して、どんな言葉をかけてあげるだろうか?」という練習もしますよね。

また身体感覚に対しては、自分が一生の面倒を見てあげなくてはいけない生き物として向き合うことを勧めたりしていますよね。

 これらの練習が、自分自身と他者に対する「優しさと思いやり」を培うことに役立つのです。

 

しかし同時に、私自身のしてきたこれらの行動に対して、私は、ひどい罪責感に苦しまなくてもいいと思えるようになりました。

なぜなら、私が本当に大事にしている人生における価値観は、私の中にそのまま存在し、見失われることなく、しっかりと根づいていたからなのです。

日頃の生活の中で、特にエドがうろついているときには、自分の信じるものを見失わないように、きちんとそれらを意識することが必要だったのです。

シェーファー、ルートレッジ『私はこうして摂食障害(拒食・過食)から回復した』星和書店

 

摂食障害思考(エドの考え方)から抜けるのはなかなか難しく、摂食障害症状がなくなったとしても考え方だけが残ることもあります。「7.摂食障害行動はやめられるけど、摂食障害思考が頭から離れない」、実行期の最後の取り組みが必要な段階ですよね。

この状態が、性格と間違われやすい「気分変調症(慢性うつ病)」や、「不安障害」と同じように見えるのです。

 

ジェニーさんは、食障害思考(エドの考え方)の中でも「価値観」や「信じるもの」を見失わないようにした、と書かれています。

 

「人生の価値や目的の創造」と、「価値や目的に沿った行動」は、対人関係療法では「人生の目標(ライフ・ゴール)」として治療の目標にしますよね。また、どんな自分も受け入れる「自己受容」とともに、自己の次元の成長の指標である『自己志向』の要素でもありますよね。
(「自己志向」を誤って自尊心と説明してある本もありますので、間違えないようにしてくださいね)

 

『自己志向』が高まると、自分の心を通して、相手の考えや気持ちを理解できるようになります。これが「共感」であり、自分と考えや価値観の違う他者を認めることができる「他者受容」の土台になります。 

「共感」と「他者受容」、そしてコミュニケーションを介した交渉能力である「協働」の3つは、社会性や関係性の成長指標である『協調性』の要素です。

 

自分と他者の心の状態に思いを馳せる能力であるメンタライジングの障害(自己受容の低下)は対人関係にも影響を与えますし、また対人関係上の問題はメンタライジング能力を低下させます。 

対人関係上の機能不全を修正するためには、まずメンタライジングの回復が必要不可欠なのです。

 

でも私は、自分の内側を深く見つめ始めるようになって、痩せていることだけが何よりも重要だとは考えなくなってきました。

私は他の人たちのことを、サイズや外見で判断してお付き合いをしているわけではありません。私自身についても容姿で自分の価値を決めるべきではない、と頭ではよくわかっています。

私の毎日の生活の中で大切にしたいと思うことは、体重計が示す数値ではなく、私自身の内面が人間としてどうなのか、ということなのです。

シェーファー、ルートレッジ『私はこうして摂食障害(拒食・過食)から回復した』星和書店

 

日本語で協調性というと、自分の意見はさておき他者に合わせる、追従すること、と誤解されていることも多いですよね。 

本来の『協調性』の意味は、自分と考えや価値観の違う他者を認めることができる「他者受容」であり、その土台がジェニーさんが「私自身の内面が人間としてどうなのか」と書かれている『自己志向』の中心である「自己受容」なのです。

こころの健康クリニック芝大門では、「自分の思考・感情・身体感覚に気づいていること」、「誰しも感じる苦痛を避けようとしないこと」、「自分に対する優しさと思いやり」を『自己受容』の要素として説明していますよね。

 

ある患者さんが、夏休みの間に『過食症:食べても食べても食べたくて』にある「過食をやめるための二週間プログラム」を書いてある通りに実行してみたそうです。

その後3ヵ月の間、過食嘔吐は4回、それも「もぅいいかな…」と途中で止めた過食がほとんどだったそうです。この患者さんは「8.行動からも思考からも解放されている時が多いが、常にというわけではない」段階、ほとんど治ったと言っていい「維持期」の段階まで回復していらっしゃいました。

そして、自分に対して優しく接することができるようになり、「自分は本当はどんな生き方をしたいのか」を考えるようになって、自分の心に正直に、その方向に一歩を踏み出されたのでした。

面接時にそのときのノートを持ってこられていましたが、1センチほどの厚さにまで膨れあがった大学ノートが、患者さんが自分の心と向き合ったメンタライジングのプロセスを雄弁に物語っているようでした。

 

院長

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