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回避型アタッチメントと摂食障害

[2018.04.02]
虐待と愛着(アタッチメント)2〜反応性愛着障害」でジーナーらが提唱した「愛着の適応レベル」を紹介したことがありますよね。   回避型と抵抗型(アンビバレント/両価型)は非安定型(非安心型)とされています。 ここで注意しなければならないことは、非安定型は弱みがある、心の病を発症しやすい、安定型(安心型)がよくて非安定型(非安心型)はよくない、ということではないのです。 アタッチメント・スタイルは今の環境のなかで適応するためにどのような方略を用いているかということなのです。ですから多少の脆弱性はあったとしても、適応できているのであれば、非安定型(非安心型)でも十分適応していると考えるわけです。   非安定型(非安心型)のうち「回避型(拒絶回避型)」のアタッチメント・スタイルは、自己信頼が非常に高く、何かを達成することを重視し、近しい関係になることに対して心理的な障壁があり、他者に不信感をもち、人と一緒にいたい欲求が低い(孤立をもちこたえてきた孤高の人)とされています。  
信頼障害を抱えていない人ならば、普段は単独行動の趣味だけで過ごしていても、何か人生において重大な困難に直面した時、単独行動だけで何とか対処しようとすることはなく、基本的な他者への信頼感に基づいて、適切に周囲に助けを求め、アディクションの悪循環を回避することができる。 小林『人を信じられない病 信頼障害としてのアディクション』日本評論社
  他者に対する信頼障害を抱えている〔拒絶回避型〕と、乱れた食行動に悩む女性たちは、対人関係の取り方は似ていますが、心の内面の充実感や自分自身への信頼感が正反対のようですね。  
アディクトにとって「他者」とは自分に危害を加えたり、プレッシャーや不安を与えたりして何らかの苦痛を強いる存在、常に気を遣い、我慢しなければならない相手でしかない。 彼らが「恋人」や「親友」、「兄貴」などと呼ぶ「他者」も、完全に安心できるわけではない。常に相手の機嫌をうかがい、相手に負担を与えないよう配慮し、相手の期待に応え続けなければ見捨てられてしまう、という潜在的な不安と表裏一体の存在なのである。 だからこそ、家族や友人たち、同級生や職場の同僚などには気づかれていないが、アディクトたちは基本的に「人」と一緒にいると疲れるのであり、信頼関係ができて本音を言ってくれるようになると、「本当は一人でいるほうが楽」と応えるものである。 小林『人を信じられない病 信頼障害としてのアディクション』日本評論社
  乱れた食行動に悩む女性たちは、自分を適切に主張することが不得手で、人と親密になるのは快適とは感じないものの、他者から認めてほしいという気持ちは強く、人との関係に一喜一憂してしまいがちです。 さらに、親密さを求めますが拒絶されることが怖いので、結果的に親しい関係を避けてしまうことになる「対人恐怖的回避型」というタイプのようです。  
暗黙の生きづらさを生き延びてきたアディクトたちも、家庭や学校という居場所を失わないために自己犠牲的な我慢と努力、つまり過剰適応を続けてきた。 自分が本音を漏らさなければ、自分さえ我慢して周囲の期待に応え続ければ、家族も学校生活もうまくいくのだから、と誰かにみずからの正直な感情を吐露することを諦めてきた。つまり、アディクトは「我慢を続けてきた人」なのだ。 だからこそ、彼らはアディクトではない人々より実ははるかに我慢強い。通常ならとっくに根を上げて、誰かに泣きつきたくなるような状況でも、アディクトは我慢を続ける。泣きつけるほど信頼できる、安心できる他者を彼らは持っていないからである。 小林『人を信じられない病 信頼障害としてのアディクション』日本評論社
  孤立感・孤独感と無力感に苛まれている乱れた食行動に悩む女性たちは、自分自身だけでなく、現前の他者(二者関係)、そして集団や組織との関係にも信頼感を持つことができずに、過剰適応(自己犠牲的な我慢と努力)を続けています。   そして、その孤立感・孤独感と無力感をなだめ、感じないようにし、なかったことにするために、過食や嘔吐という食行動(単独行動)にしがみついてしまいます。  
信頼障害を抱えているアディクトは、基本的な他者への不信感から適切に周囲に助けを求めることができず、単独行動だけで何とか負の感情に対処しようとする。 しかし、スポーツジムでいくら筋力を強化しても、人生において直面している困難が消えるわけではない。 やがてスポーツジムだけでは寝つきの悪さや不安感、イライラ感を解消できないことに気づいたアディクトは、より即効性があって、負の感情を麻痺させてくれる効果が高いアルコールや薬物、ギャンブル、あるいは自傷行為や過食嘔吐などに手を出すようになるのである。 小林『人を信じられない病 信頼障害としてのアディクション』日本評論社
  ある本には、過食症を作る性格として「冒険好き」の「心配性」がなりやすいと書かれています。「冒険好き」は専門用語で「新奇性追求」と呼ばれるもので、好奇心が強くて積極的に行動する反面、がまんが苦手で行き当たりばったりの行動を取りやすいという傾向があるとされています。 ところが実際の臨床の場面では、「新奇性追求」が高い過食症・むちゃ食い症の患者さんはほとんどいらっしゃらないのです(5%未満)。「対人恐怖的回避型」という過食症のアタッチメント・スタイル特徴も、「新奇性追求」とは正反対のようですよね。 反面、過食症やむちゃ食い症の人のほぼ全例にみられる特徴は、気分の感情の賦活に伴う身体感覚を区別することが困難で、感情体験が乏しく、感情表現による感情調節の困難さ、というアレキシサイミア傾向です。そのため物質や行動を使って感情を調節しようとしたり解消しようとしてしまうのです。   「対人恐怖的回避型」の人のように、たとえ幼少期に否定的な体験があったとしても、それをメンタライズし、体験を内省し、ある程度過去と和解することができる「内省的自己機能」と呼ばれる能力が、予後に関連することがわかっています。 三田こころの健康クリニック新宿の専門外来で行っている「過食症」や「むちゃ食い症(過食性障害)」、あるいは「排出性障害」の治療では、まず「こころの知能指数(エモーショナル・インテリジェンス)」を高めていくこと、つまり効果的に感情をモニターし、制御するための多くの認知的スキルを身につけていくことからはじめるのは、上記のような理由からなのですよ。 ※こころの知能指数:人間関係をうまく維持する能力、相手の感情を理解する能力などとも呼ばれる、自己や他者の感情を知覚し、また自分の感情をコントロールする能力のこと。   院長
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