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乱れた食行動と甘えられないこと

[2018.03.12]
摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』の第20章「ストーリータイム——3人の女性の物語」には、「食べ物が心や魂の糧のメタファーであり、乱れた食行動は人からの注目や認知、愛情や評価への渇望を満たそうとする試みであると気づくこと」の大切さについて説明されていますよね。   『食行動障害および摂食障害と「「甘え」のアンビバレンス」』で説明したように、「人からの注目や認知、愛情や評価への渇望」は、二者関係の中で主観・間主観の領域に現れる情感の動きである「甘え」であり、「甘え」は必然的にアンビバレンスを孕みます。 そのため、乱れた食行動で悩む女性たちは、解消されなかったネガティブな情動を周囲に受けてもらうことを諦め、自分の心の中で蓋をして見ないようにし、その部分を自分から切り離し、受け入れてもらえるはずの「いい子」を演じることで、過剰適応してきたようです。  
ソフトドラッグ(違法性がないか、違法であっても覚せい剤と比べればイメージが薄い)群の生きづらさは、表面上、何不自由なく家庭生活や社会生活を送っているその裏側にある。患者たちが語ってくれたエピソードは、どれもその状況にいる本人でなければ苦しさがわかりづらいものばかりだった。 小林『人を信じられない病 信頼障害としてのアディクション』日本評論社
  乱れた食行動で悩む女性たちも、一見社会適応がよさそうに見えるものの、心の中では満たされなさや空虚感を抱えていますよね。  
私の家族はそれぞれが別々の生き方をしていたので、私はいつも家で一人でした。自分の部屋でテレビを見ていたりしたものです。両親と一緒に何かをした記憶もあまりありません。一緒に家にいたところや、私になにか聞いてきた姿も想像できません。 私はきっといつも寂しかったんでしょうね。でも慣れていました。唯一親しく感じていたのは、一歳年上の兄でした。いつも何でも話していました。 (中略) ある日、学校のバンドのクラスでフルートを渡されました。とても良いフルートでした。百ドルはするに違いない!と思っていたのを覚えています。部屋で練習を重ねるにつれてどんどん上達して、誰かに聞いてほしくて大きな音で吹くようになりました。 あるとき母親が『ドアを閉めなさい!』と叫ぶまでは。 ジョンストン『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』星和書店
  満たされなさや空虚感の本質が「甘え」であり、満たされなかった「甘え」(心の空虚感)を満たすための試みが、乱れた食行動(過食や自己誘発嘔吐)として表現されます。  
母は私を支配してたし、意地悪で、当時は彼女と縁が切りたくてしょうがありませんでした。愛情を見せてきても、私が反応するとすぐに取り上げたし、いつも自分から彼女に近寄ろうものなら、お尻を蹴飛ばされるんじゃないかと感じてもいました。 だから、彼女が満足してくれるくらい良い子になるにはどうすればいいのか、ものすごく一生懸命考えました。でも十分なんてありえなかったんです。決して、ただの一度も。 ジョンストン『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』星和書店
  甘えることができるのは、甘えを受け止め、受け入れてくれる(甘えさせてくれる)人がいるからであって、甘えを受け止めてもらえるかどうかは相手次第というアンビバレンスが、乱れた食行動で悩む女性たちを「孤立と無力感」に追いやってしまうのです。  
別のアルコールの女性患者は、父に酒乱傾向があり、母が常に父の世話でかかりきりになっているため、「少しでも母を楽にしてあげなければ」「母に喜んでもらわなければ」と思い、小学校低学年の頃から必死になって家事を手伝い、わがままは我慢していた。 ある向精神薬の女性患者は、いつも不仲な両親の間に立って気を配り、祖父母からも頻繁に生活ぶりを詮索され、母から送られてくる頻回の「今どこでなにをしてるの?」という確認メールにもその都度返事をすることが義務になっていた。 小林『人を信じられない病 信頼障害としてのアディクション』日本評論社
  ソフトドラッグのアディクトたちの姿は、乱れた食行動で悩む女性たちの姿とオーバーラップしますよね。   そして、乱れた食行動で悩む女性たちの受け止めてもらえなかった「甘え」は、「甘え」のメタファーである食べ物で解消されようとします。  
そして、過食するのはいつも甘いもので、アイスクリームやケーキ、クッキーだって気づきました。甘くてクリーミーなもの。 私が欲しかったけど手に入れられなかった、スイートで(優しくて)、慈しみ育ててくれるようなお母さんのシンボルね。 ジョンストン『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』星和書店
  乱れた食行動で悩む女性たちは、人を信じられず、食べ物や食べることといった「行動」しか信じられなくなる「行動依存(乱れた食行動)」に陥ってしまいます。 乱れた食行動で悩む女性たちが、どのような生育過程を辿るのか、次回も『人を信じられない病 信頼障害としてのアディクション』を参照しながら見ていきましょう。   院長
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