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乱れた食行動とアタッチメント・スタイル

[2018.03.19]
今回も『人を信じられない病 信頼障害としてのアディクション』を参照しながら、「物質関連障害および嗜癖性障害(いわゆるアディクション)」と「食行動障害および摂食障害」との心理的な背景の類似性について考えていきましょう。   『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』の第5章「依存——精神的、感情的な飢え」には、「依存症に苦しむ人は、物事をありのまま、自然の流れに任せるということができません。常に正しいあり方、より良いあり方、そしてより完璧なあり方でなければ気がすまないのです」とあるように、「食行動障害および摂食障害の患者さんたち(乱れた食行動で悩む女性たち)」も、アディクトたちと同様、「過剰適応」的な生き方をしてきたようなのです。  
彼らは子どもの頃からずっと、周りを満足させるために自分の満足を諦め、周りを安心させるために自分の安心を諦め、周りの怒りをなだめるために自分の怒りを抑え込んでいる。 そして「周りの満足こそが自分の満足」「周りの安心こそが自分の安心」と自分自身の心に刷り込んでいく。 小林『人を信じられない病 信頼障害としてのアディクション』日本評論社
  食行動障害および摂食障害は「いい子」がなりやすいと言われるように、乱れた食行動で悩む女性たちも、自分の気持ちを抑圧し、周囲人たちの顔色を読み、適応しようと賢明の努力を重ねてきたのですよね。   否定的情動・意図の表出を抑制し、アタッチメント対象が望むことを行うことや、偽りの肯定的情動の表出は、「強迫的世話焼き」や「強迫的従順」など「A-タイプのアタッチメント方略(回避/拒絶型)」とされています。 評価に関して他者に依存したり、否定的情動に対する恥ずかしさなど、孤立感や無力感の原型である「承認欲求」が満たされないことがその背景にあると言われています。 しかし、ここで注意しておいていただきたいことは、「回避/拒絶型」の不安定型アタッチメントスタイルが良くないということではないのです。   アタッチメントのことをよく知らない精神科医は、幼少期の親、とくに母親との関係が問題だと言います。親が不適切な養育をするのは、親に発達障害があるから、親が不安定型のアタッチメントだから、親にトラウマがあるから、などと原因探しをし、その結果、子のアタッチメントが不安定型になると言いますし、そう書いてある一般向けの本もたくさんありますよね。  

しかし、親が虐待を受けてトラウマを持っているから子どもを虐待をする、親がひどい育ちだったから子どもにひどい養育をする、親が不安定なアタッチメントを持っているから不安定なアタッチメントの子どもになる、そのような話ではないのです。 現在では、アタッチメントの乳児期決定論はほぼ否定されているのです。

さらに、母親や父親、あるいはおじいちゃんやおばあちゃん、保育士さん、学校の先生など、それぞれの他者との関係性について独立したアタッチメントが形成され、それらが総合されて内的作業モデルが形成されると考えられています。つまり、アタッチメントは状況や環境、親子関係やそれ以外の対人関係に適応するために培われた対人関係方略だということなのです。  
しかし、どれほど自分自身を「洗脳」しようとしても、周囲に自分の感情を受け止めてもらえない無力感と、抑圧された不満や怒りは消えるわけではない。 それは、幼少期には爪かみや抜毛、突然のかんしゃくとして、思春期以降は突発的な抑うつ気分や不眠、食欲低下や過食、頭痛、めまいなど、原因不明の心身の不調感などといった症状に姿を変えて表れることが多い。 10代から20代にかけて心身不調感を自覚したアディクトは、家族に相談して医療につながり、精神安定剤や睡眠薬を処方されて、そのアディクションに陥る場合もある。 運良くなんとか我慢と努力で20代から30代まで切り抜け、社会人として自立し、結婚して家庭をもったとしても、まだ安心はできない。 小林『人を信じられない病 信頼障害としてのアディクション』日本評論社
  ここに挙げられている自律神経症状、強迫性障害の関連症状や過食や抑うつ気分などは、疾風怒濤の時代である思春期に一過性に生じることもありますが、薬物療法により悪化しやすいこともよく知られていますよね。  
ソフトドラッグ群のアディクションは、「暗黙の生きづらさ」から始まる心理的孤立と無力感の末に過剰適応の連鎖が起き、最後に過剰適応が破綻する時に発症する「声なきSOS」なのだ。 小林『人を信じられない病 信頼障害としてのアディクション』日本評論社
  乱れた食行動で悩む女性たちも、ソフトドラッグ群のアディクトたちと同じように、「暗黙の生きづらさ」から始まる心理的孤立と無力感が背景にあり、過剰適応をしていますよね。 「食行動障害および摂食障害の患者さんたち(乱れた食行動で悩む女性たち)」も、学生時代であれば学年が上がる時あるいは進学や就職の時、社会人であれば会社を辞めたり転職した時、配偶者と別居・離婚したりした時などに過剰適応が破綻し、これまで蓄積されていた不満が噴出することになってしまうのです。 そして過剰適応が破綻した時に、乱れた食行動が始まるのです。   上記の引用の箇所を読んだ時に私が思い出したのは、『なぜふつうに食べられないのか』の次の一節でした。
彼女たちが食べ方を変えたそもそものきっかけは、人と人とのつながりをより快適なものに修正することだったのである。しかしそれは結果的に、孤立という彼女たちがもっとも望まない方向に彼女たちを誘導することとなった。 日常の食を反転させる形で行われる過食は、フローを引き起こし、それは彼女たちが不安と心配事がうずまく日常を乗り切るための術として定着した。しかし、そのフローは誰とも共有することができない。 過食は続ければ続けるほど孤立を生む、悲しい祝祭なのである。 磯野『なぜふつうに食べられないのか』春秋社
  「暗黙の生きづらさ」を抱えた「乱れた食行動で悩む女性たち」は、人とのつながりを快適なものにするための過剰適応が破綻した時に、食べ物との関係を変えます。 『8つの秘訣』P.101にも「食べものとの関係と、どのように人間関係を築くかは、どちらもその人の特性と「人となり」に基づいているので、自然に似てきます」と書かれていますよね。   しかし、過剰適応が破綻し、「心理的孤立と無力感」をなんとかするために食べ物との関係を変えること(日常の食を反転させる形)は、ますます「心理的孤立と無力感」を強めてしまう「悲しい祝祭」なのです。 ですから、食行動障害および摂食障害の治療では、「摂食障害にではなく人々に助けを求める」必要があるのです。
クライエントさんたちが恥ずかしさを乗り越えて助けを求められるようになると、ありのままの自分を見せる誠実さは、人を遠ざけるものではなく、人との関係を深めてくれるものだと気がつくようになります。

コスティン&グラブ『摂食障害から回復するための8つの秘訣』星和書店

  摂食障害だけではなく、アタッチメントと甘えの改善プロセスで、人との関係を深めていく土台となるのが、「自分自身への信頼感」であり、どんな自分も認めることができる「自己受容」が必要不可欠ですと、三田こころの健康クリニック新宿の専門外来では説明していますよね。   院長
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