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パニックや不安障害による女性の休職と職場復帰

[2019.10.17]

74c706b9c82d53324e08733837931ca5_tリワークプログラムへ参加される方は、男性の方が女性よりも多い印象があります。ところが休職されている方は男性の方が多いのかというと、そうでもないようです。

うつ病は女性の方が多いことが知られていますし、不安障害の中でもポピュラーな疾患である「パニック発作」も、女性の有病率は男性の2倍であることが知られています。

 

パニック発作」は、たとえば、電車の中などで急に不安になり、動悸、心拍数の増加、発汗、震えやしびれ、息切れ、息苦しさ、窒息感、胸部を締めつけられる感じや胸痛、吐き気、悪寒や熱感、感覚が麻痺したような感じ、うずく感じなどの身体症状と、現実感喪失、自己コントロールができない感覚、死んでしまうのではないかという差し迫った恐怖が起こり、これらの多彩な自律神経症状と精神症状が同時に出現するのが特徴です。

さらに、「パニック発作」に加えて、またパニック発作が起きるのではないかという「予期不安」と、予期不安のためパニック発作が起きた状況を避けるなどの回避行動が1ヵ月以上続くことにより、日常生活に大きな支障をきたします。

 

パニック発作は「パニック障害」のみに起こるものではなく、「社交不安障害」や「心的外傷後ストレス障害(PTSD)」など、他の不安障害でも起こります。
このようにパニック発作を引き起こす可能性のある「不安障害」は、うつ状態とならぶ出社困難の原因として頻度の高いものです。

 

上記の症状を訴えて医療機関を受診すると、なぜか「うつ状態」や「うつ病」あるいは「適応障害」と診断されます。また、会社に行けないなら休職するようにと勧められ、抗うつ薬と抗不安薬、睡眠薬などの処方とともに、休職の診断書が出されます。
何でもかんでも「適応障害」と診断されてしまう現在の精神医療は大きな問題ですので、このことはまた別の機会に解説しようと思います。

 

パニック発作は、誘因となった環境や状況を離れることで、症状が速やかに改善します。
そこで復職することになるのですが、症状は軽快していても、同じ環境や状況に曝露されると、当然のことながら同じ症状が引き起こされてしまいます。

うつ状態や適応障害と診断されたこのような女性の患者さんがリワークプログラムに参加すると、うつ病に特化した認知行動療法や疾患教育などのプログラム自体がしっくりこないだけでなく、小集団とはいえパニック発作が起こりやすくなります。
患者さんが主治医に相談しても、薬が増えるだけで、良くなった気がしないのです。

ちなみに蛇足ですが、不妊や児の催奇形性など将来的なリスクを考えずに、妊娠可能な女性に安易にバルプロ酸が処方されてしまう問題も起きています。バルプロ酸の投与を一部禁止するFDA のアラートについて知っていたかどうかのアンケートで、90%以上の医師が知らなかったと回答し、知っていた医師は8%程度だったそうです!

うつ状態や適応障害の過剰診断の問題の1つは、 適切な診断と治療がなされていないことで、患者さんの人生に悪影響を与えてしまっていることなのです。

 

さて、話を戻します。

パニック発作を起こしたことのある患者さんの中には、混んだ電車に乗らなくてもいいように会社の近くに引っ越したりする人もいます。パニック発作は、容易に脱出できないような状況、たとえば、地下鉄の中や車の運転中で渋滞に巻き込まれたとき、トンネルや高速道路の運転、人混みの中、あるいは会議室での会議中でも引き起こされます。

このような「閉所恐怖」が、複数の閉所に対して過剰な不安・恐怖と回避行動(安全保障行動)がみられると「広場恐怖症」と診断されます。広場恐怖の患者さんの約半数がその発症前にパニック発作を経験しているといわれています。 

 

ところで、パニック症患者さんでは、初めてのパニック発作が起こる数ヶ月前に、パートナーとの別れや大事な人との死別を体験しているなど、ストレスフルな状況を抱えていた人が少なくありません。

また意識的には特に大きなストレスもなく、突然発症したように見えても、その発症前後の状況を注意深く診ていくと、その人にとって発症がひとつの転機となっていることがあります。 

平島『不安のありか』日本評論社

 

パニック発作の背景には、上記のような近しい人との別離の体験や、人生のターニングポイントなど、「分離と自立の無意識的な葛藤」があることが考えられています。人に助けを求めることと分離/自立の関係』参照)

 

パニック発作を有する女性の場合、職場復帰よりも転職を考えられることが多いような印象があります。
それはパニック発作の発症による人生の変化という文脈でも考えられますし、同時に、その人なりの分離と自立の試みとも考えられるのです。

そのため、こころの健康クリニック芝大門のリワークプログラムは、女性の方も参加しやすいように不安障害もリワークプログラムの対象疾患にしているだけでなく、同じ状態を繰り返さないスキルを身につけるために、転職を考えていらっしゃる方も対象にしているのです。

 

また、彼ら(註:パニック障害や広場恐怖症の患者さんたち)は自己主張が苦手で、自分の怒りの感情を適切に表現できないという問題を感じていることが少なくありません。それは、彼らが抱える根源的な不安のためであるように思います。

(中略)

先述した「人間の根源的な不安は、依存欲求と密接に関連している」ことが想起されるところです。

平島『不安のありか』日本評論社

 

パニック障害や社交不安障害、混合性不安抑うつ障害など、不安障害群に対するリワークプログラムでは、まず、これまで押し殺してきた感情を適切に理解し、その意味を見いだしていくことが必要不可欠になります。 

こころの健康クリニック芝大門では、リワークプログラムだけでなく、メンタルヘルス外来でも対人関係療法でも、このような病態に対する対処スキルの1つとしてセルフ・モニタリングを共通プログラムとして位置づけているのです。

 

「人間の根源的な不安は、依存欲求と密接に関連している」ということは、安全保障行動である愛着システムの過活性化が、メンタライジング能力の制止を引き起こしてしまうということです。 

メンタライジングが上手く機能しないと、適切な社会的関係の構築が困難になるだけでなく、ある状況について代わりの表象を働かせることができなかったり、解離的なデタッチメント(回避行動)を使ったりと、問題が維持されてしまいます。

 

メンタライジング能力を高め、感情の意味の理解を深め、感じるべき感情を適切な態度で感じられるようになることを、復職あるいは転職を考えていらっしゃる不安障害の女性に共通する治療テーマにしているのですよ。

 

院長

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