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「体重が増えるのが恐くて食べられない」考えとどう向き合うか

[2020.01.06]

f606a5399044108dae9f4acd3cd0d7e8_s忘年会、クリスマス、そして年末年始で食べすぎたと感じていらっしゃる人も多いかも知れませんね。

あるいは、受験生のみなさんは、勉強しながらついお菓子を食べてしまってヤバイと感じていたりしませんか?

 

「体重を減らさなきゃ!」「太ったので何とかしなきゃ!」「自分の体型が嫌い!」という思考に突き動かされ、食事を抜いたり、甘いものや炭水化物を制限したりしますよね。

この行動が、食べすぎや過食、あるいは過食嘔吐を誘発してしまうのです。 

そうなるとますます「体重を減らさなきゃ!」の考えが強くなり、食事を減らしたり抜いたりして、その反動で、食べることを禁止しているものを食べたくなったり、食べすぎたりしてしまいますよね。

食べ始めると過食・過食嘔吐になってしまうため、「普通の食事の量がわからなくなった」「食べ物を摂らないようにしている」とおっしゃる患者さんもいらっしゃいます。

実は、ダイエットや下剤服用、あるいは嘔吐が摂食障害を続けさせている要因の1つなのです。

 

ダイエットをして短期的にカロリー摂取量を減少させると、当然一時的に体重は減少する。

そのままやせ続け、低体重を維持するのが拒食症(神経性やせ症)であるが、それは若年女性の0.1〜0.3%でしかなく、ほとんどの女性はダイエットを継続できず、リバウンドで食欲が亢進する。

そうなったときに過食と拒食を繰り返し、自己誘発性嘔吐や下剤乱用などにより体重増加を防ぐのが過食症(神経性過食症)だが、それも若年女性の1〜3%にすぎない。

それ以外のほとんどの女性は、体重がもとに戻り、ときにはダイエット前より増加し、ダイエットに失敗した自分が嫌になり、自己評価を低下させ、やせれば自身が取り戻せると再度ダイエットを繰り返す。

これを読んでいる女性の方々、こういったことにこころあたりはありませんか?

山田恒. 「やせたらうれしい?」——やせ礼賛文化はいつ始まり、誰が広めて、どう影響しているのか. こころの科学209: 31-37, 2020

 

規則正しい食生活という生物学的な安定は、過食や過食嘔吐が減ってくる心理学的安定の土台になります。

生物学的な土台が揺らいでいる状態では、心理学的な安定や対人関係上の安定は得られないのです。

飢餓過食が落ち着いてくると、仕事や人間関係の出来事や、気分によって引き起こされた過食や過食嘔吐について、心と向き合う治療ができるようになるのです。(「生物・心理・社会・職業モデル」参照)

 

回復の道をたどり始めて何年かした頃、栄養士のスーザンに会いに行ったとき、新しい食事プランが書かれた紙を渡されました。

(中略)

スーザンにも、食事プランを手にした私がどんどん不安になってくるのがわかったと思います。

そこでスーザンは、決して忘れはしない、すごいことを言い放ったのです。

「食事プランは捨てちゃいましょう。その紙を破ってゴミ箱に捨てていいですよ」と。

(中略)

一番大切なのは、食事プランが今のあなたに必要なものを満たしていて、あなたの性格に合わせて作られているかどうかということです。

(中略)

あなたの食事プランは、健康になるために、またエドの言いなりにならないために、その日に何を食べなければならないかということを教えてくれます。

シェーファー、ルートレッジ『私はこうして摂食障害(拒食・過食)から回復した』星和書店

 

食事プランを渡されたジェニーさんはすごく不安になっていますよね。

 

摂食障害の認知行動療法でも、最初は心理教育とともに、規則正しい食事のパターンを確立することから開始します。

1日を通して規則正しい間隔で食べ、食事と食事の時間を空けすぎないようにすることで、まず飢餓過食から減らしていきます。 

 

認知行動療法による摂食障害の治療では、3回の食事と2回の間食によって、①4時間以上食事の間隔を空けないこと、②空腹感や満腹感を目安にしないこと、③何を食べてもいいけれども、④食べた後に嘔吐(排出)しないことに取り組んでいきます。

 

上記の「生物・心理・社会・職業モデル」から考えても、すごく理にかなった治療法になっていますよね。

 

今日、生物ー心理ー差破壊モデルは主要な対人援助専門職にとっての共通理解であり、どれか一つの要因のみで支援を検討することはできない。

それぞれの要因による影響を理解することで、クライエントの抱える課題に対して、生物学的要因、心理的要因、社会的要因のそれぞれの異なった領域から支援アプローチを提供することが可能になる。

加藤「成人期前期における性行動をめぐる社会的要因の特徴」精神療法 44(5): 639-642, 2018

 

しかし患者さんは【体重のこと】で頭が一杯で、「食べると体重が増えてしまう!」「食べ始めると止まらなくなったらどうしよう?!」と思い込み、規則的な食事をすることが恐くなってしまいますよね。(Akoさんの『太ることを受け入れる』も参照してみてくださいね)

 

ここで大きなヒミツを教えておきますね。

じつは、週ごとの体重の数値の変化は、脂肪がついたかどうかを示すものではなく、水分の変化によるものなのです。

多くの人に読んでいただいている『嘔吐をやめると体重はどうなるのか?』でもそのことを説明していますから、参照してみてくださいね。(Akoさんの『浮腫み』も参考になると思います)

 

「食べ始めると止まらなくなったらどうしよう?!」に対しては、こころの健康クリニックでも最初から【衝動の波に乗る】やり方を指導していますよね。(『8つの秘訣』P.209参照)

この方法は過食やむちゃ食いをガマンするのではなく、食べたい衝動を感じたときに、それを突き動かしている考えや気持ち、身体感覚をとらえようとするやり方です。

 

最初は、ひょうたん型の容器(お腹)が空いているのか、ハート型のバスケット(心)が満たされないと感じているのか、を感じる練習から始めます。

 

そして、(お腹が空いた/嬉しい/傷ついた)、(イライラする/気がかりなことがある)、(何もすることがない/孤独感を感じている)、(身体が疲れている/気疲れしている)のHALT(ハルト)の項目を一つひとつ自分に問いかけてみます。

そして、そのような心や身体の状態を引き起こした仕事や人間関係の出来事を振り返ってみるのです。(Akoさんの『前向いて』を参照してくださいね)

 

仕事や人間関係の出来事によって引き起こされた過食や過食嘔吐と向き合い、自分はどんな生き方をしたいのか、そのためには現実の何をどう変えていけばいいか、に取り組んでいくのです。

 

こうやって、摂食障害思考(エド)に支配された人生から、自分自身の生き方を取り戻していくプロセスが過食や過食嘔吐からの回復なのですよ。

 

皆さんにとって何かの参考になればと思い、松本先生の講演記事をリンクしておきます。

この講演記事を読むと、生物学的な安定の上に心理学的な安定が成り立つことが理解できると思いますし、摂食障害から回復したいと思っている人や、精神科や心療内科に通院している人にとって、役立つヒントを見つけられるかもしれませんね。

食事、睡眠、仕事や勉強、人付き合い 生き延びるために日常生活をどう乗り切るか

 

院長

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