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摂食障害からの回復の7段階目で取り組むこと(2021.05.31更新)

8つの秘訣』の6段階目「やめられる行動もいくつかあるけど、すべてはどうしても無理」の段階で取り組むことは、セルフモニタリングを通して乱れた食行動を突き動かしている感情や考えを知ることでした。

新しい対人関係療法による治療では、これを「自分自身との関係を改善する」と呼びます。

 

過食やむちゃ食い、あるいは過食嘔吐などの摂食障害の症状は、摂食障害思考によって引き起こされた感情を感じないようにする、あるいは感情をなかったことにするための方法でした。ですから、摂食障害症状引き起こした摂食障害思考や感情は変わらないままで摂食障害症状だけをなくそうとしても、うまくいかないのです。

摂食障害症状から抜け出すためには、それらを引き起こす摂食障害思考(エド)を知り、その反応である感情を抱えておくことができるだけの心の枠組みを拡げていく取り組み(6段階目の課題)が必要になります。

 

感情を心の中で抱えられるようになったら、次の段階である「乱れた食行動という習慣」を「行動の仕方を変えていく」ことに取り組みます。これが7段階目の「摂食障害行動は止められるけど、摂食障害思考が頭から離れない」に相当します。

 

『さよならエド、こんにちは私』では、エドと、自分の回復に責任を引き受けることについて、もう一つとても大事な点をご紹介しています。

「エドのせいにしない」という考え方については、この本のあとがきにも書きました。

この考え方の大切さに初めて気づかせてくれたのは、夫婦や家族関係を専門にした心理療法家であり、『ダイエットに夢中のあなたの娘さん』の著者の一人でもあるキャロライン・コスティンさんです。彼女のおかげで、今では「エドのせいにしない」は私の取り組みの大きな柱になっています。

そもそも、エドを擬人化して切り離す主な目的の一つは、自分自身がエドとは別な存在としてしっかり立って、回復に向けて決断し、行動していけるようにするためです。

「エドがそうさせた」と言い訳するためではありません。

シェーファー、ルートレッジ『私はこうして摂食障害(拒食・過食)から回復した』星和書店

 

治療の初期には、HALTという心の動きが過食衝動の引き金になっていましたよね。HALTは、H(嬉しい、お腹空いた、傷ついた)、A(イライラする、気がかりなことがある)、L(何もすることがない、寂しい)、T(気疲れした)の略でした。

これらの心の動きを感じないで済むように、心を麻痺させたり、なかったことにするために摂食障害思考(エド)のささやきに乗って摂食障害行動を使っていたのです。

 

でも7段階目では、摂食障害行動を使っても摂食障害思考(エド)はいなくならないことに気がつくようになります。

つまり、「摂食障害行動は止められるけど、摂食障害思考が頭から離れない」ので、摂食障害行動のぶり返し(再発・再燃)が起きやすい時期でもあるのです。

この時のぶり返し(再発・再燃)は、摂食障害思考がきっかけになることもありますし、ある状況で条件反射的に摂食障害行動が起きやすくなるのです。

 

ジェニーさんは、『摂食障害から回復するための8つの秘訣』の著者であるキャロリン・コスティンさんから「エドのせいにしない」ことを学びました。

 

では、7段階目では何に取り組めばいいのでしょうか?

 

私たちは「気づいていること」だけを変えられるのです。

(中略)

これらの自動反応が長期間活性化したままの状態となり、習慣的なパターンになってしまった時には問題が生じます。当初の目的とは異なる状況で、その反応が起動してしまうからです。害のないまったく「ささいな」状況で、あたかも「命を脅かされている」かのように反応してしまうのです。

ゴンザレス『複雑性トラウマ・愛着・解離がわかる本』日本評論社

 

摂食障害からの回復の7段階目の「摂食障害思考」とのつきあい方は、治療の初期から取り組んできたセルフモニタリングを使って、自分自身の心の中で起きていることに「アウェアネス(自覚・気づき)」を高めていく取り組みになります。

 

それに加えて7段階目では、良い/悪い、好き/嫌い、安全/危険という扁桃体から発せられる「自動反応」、つまり「ジャッジメント(評価)」にともなう葛藤や、対立(コンフリクト)の解消に取り組んでいきます。

 

摂食障害という生き方から抜け出すために』で触れたように、「医学モデル」では“病気=悪/健康=善”という対立構造ができてしまいます。

対立構造により「△△だから、○○ができてない」、「△△だから、~になる」という「ダメ出し・メッセージ(自己否定・自己批判)」が起きやすくなり、モチベーションが下がりやすくなってしまいます。これもまた、摂食障害症状のぶり返しを後押しします。

そのため、摂食障害や気分変調症などの慢性疾患に医学モデルを適応するとうまくいかないことが多いのです。

 

また「評価をせずに聴く」ということを謳い文句にしているやり方もありますが、「評価(ジャッジメント)」は人間に備わった身を守るための基本的な反応ですから、否応なしに起きてきます。

「ジャッジメント(評価)」を選択するかどうか、私たちには「選ぶ」という主体性がそなわっています。

摂食障害を「手放す」のに必要な「責任」と「自覚」』で説明した「アウェアネス(自覚・気づき)」と「ノン・ジャッジメント(評価を手放すこと)」は、「主体性を培っていく」ということでもあるのです。

 

本書では、このようなトラウマ体験による心理学的影響について述べていきますが、冒頭のヴィクトール・フランクルの引用にあるように、人間には「選択する自由がある」ということ、これが本書の主たるテーマです。

自己決定のためには、「自分が抱えている問題を理解すること」「自分の内外で起こっていることを意識できるようになること」「どのような選択肢があるのかを考えること」が必要です。

劣悪な環境に耐え続けているときには、その環境に適応するための「反応パターン」が固定化されてしまいます。その「反応パターン」を修正します。

居たくない環境にみずからを縛りつける“習慣”を、意識して積極的に打破していくのです。

ゴンザレス『複雑性トラウマ・愛着・解離がわかる本』日本評論社

 

自動生起する「ジャッジメント(評価)」に対して、自分自身の心の中で起きていることに「アウェアネス(自覚・気づき)」を向けて現実と脳内劇場を区別し、「ライフ・ゴール(人生の価値や目的)」に向かって「ジャッジメント(評価)」に「触れつつ巻き込まれない」ことに取り組んでいくのが、7段階目の「摂食障害行動は止められるけど、摂食障害思考が頭から離れない」への取り組みになります。

 

そして「自分の内・外で起こっていることを意識できるようになる」、つまり現実と脳内劇場を区別できるようになってくると、「自分が抱えている問題を理解」し、「どのような選択肢があるのかを考える」という主体性が培われてきます。

 

完璧にできなくても「ライフ・ゴール(人生の価値や目的)」に向かって少しでも進んでいれば、「○○ができたら、もっとよくなる」「こんなやり方もできる」と、自分自身も認めることができるようになり(自己承認)、自己受容感や自己肯定感が高まってきます。

 

「選択する自由がある」という主体性が高まってきたところで、固定化した「反応パターン」を意識的に打破していくのが、8段階目の「行動からも思考からも解放されているときが多いが、常にというわけではない」の課題につながっていくのです。

 

院長

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