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適応障害だから休職するようにと言われたら(2021.05.19更新)

新社会人だけでなく、プロジェクトが変わったり、昇進したりして、業務内容や環境の変化により、ストレス反応を自覚することがありますよね。

 

たとえば、ストレス反応は、睡眠、思考力、行動、さまざまな身体症状などとして表れます。

以下のような症状を感じたことのある方や、今現在、このような症状で困っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 

寝付きが悪い、なかなか起きられない、夜中に何度も目が覚めたり、起きる時間の2時間以上前に目が覚めたりする「睡眠覚醒リズムの障害」。

頭がボーッとして仕事がすすまない、ミスが増えるなどの「思考力・判断力の低下」。

不安やイライラ、急に涙が出てきたり、こんな自分はダメだと自責的で悲観的になるなど「感情の不安定さ」。

何もやる気がせずに投げやりになったり、遅刻や欠勤を繰り返したり、お酒の量が増える、あるいは、スナック菓子など炭水化物を食べ出すととまらなくなるなど「行動の変化」。

頭が重く、いつも疲れが抜けない感じがする、ずっと肩が凝ったり背中や腰が痛んだり、胃がシクシク痛み食欲が低下し、下痢や便秘を繰り返す、などの「身体症状」を自覚することもあります。

 

このようにストレス反応は、不快感をともなって自覚されることが多いのですが、それ自体は生命維持のために不可欠のものであり、正しく理解し適切に対処することで、成長の機会とすることもできるわけです。

 

ストレッサー(ストレス因)に対して、ストレスコーピング(対処)が適切に機能すると、ストレス対処の好循環が生まれ、ストレス反応は徐々に軽減していきます。

 

しかし、ストレス反応が大きく、ストレスコーピングが充分に機能しない場合は、まず、充分な休息を取って身心の状態を立て直すことが優先されます。

そのうえで、何を対処困難と感じて情動的反応が起きているのか、どのように対応すればいいのかの認知的評価など、問題焦点型および情動焦点型のストレスコーピングを行う必要があるのです。

 

ところが、上記のようなストレス反応によるさまざまな心身の不調を主訴に、精神科や心療内科、メンタルクリニックを受診すると、「うつ状態をともなう適応障害」あるいは「うつ病」と診断され、抗うつ薬、抗不安薬、睡眠薬が処方され、また、休職するようにと診断書が提出されたりします。

 

精神科医から「薬を飲んで休養すれば治る」と言われますから、患者さんはそれを信じてしまうのも当然のことです。

患者さんは、ストレスコーピングを身につけるなどの自分の努力は必要なく、薬で治す病気と考えてしまいます。実際、適応障害であればストレッサー(ストレス因)から離れると、急速に症状は改善します。

 

そのため、心の内面をふり返り自分と向きあうという心理的な作業の必要性を自覚できないだけでなく、抗うつ薬や抗不安薬によってますます自分の内面を感じにくくなってしまいます。

さらに、産業医を通して職場と連携を取って職場環境を調整していく必要性については、主治医も患者さんも理解が及ばなくなってしまいます。

 

このように薬物療法が最優先される現行の精神医療によって、ストレスコーピングを身につけたり、適応反応を実感する機会を奪われてしまいます。

その結果、本来であれば6ヵ月以上続かないはずの「適応障害」で1年以上休職したり、あるいは、職場から離れたことで急速に症状が軽快して職場復帰したものの、3ヵ月程度で再び休職になってしまうケースも後を絶ちません。

 

長期間通院して薬も飲んでいるのになかなか治らないので病院を変えたいと、こころの健康クリニック芝大門に転院して来られる「適応障害」のケースも多いのです。

 

こころの健康クリニック芝大門のメンタルヘルス外来や、職場復帰支援プログラム(リワーク)では、「適応障害」に対して以下のようなアセスメントを行い、治療方針を考えていきます。

 

  • 何がストレッサー(ストレス因)なのか。長時間労働や過重労働などの仕事の量か、本人の適性と仕事の内容の不適合なのか。あるいは誰とのどのような人間関係の問題なのか。
  • どのようなストレス反応が出ていて、どんなきっかけで増悪したり軽快するのか。それに対してどのように対処しているのか。
  • 非障害性の自閉症スペクトラムやパーソナリティの成熟度の問題など脆弱性があるのか、あるいはどのようなレジリエンスを持っているのか。上司や同僚、あるいは家族や友人からのサポートはどうか。
  • 今後、似たような状況になった場合や、同じような身心の反応が出た場合には、どのように対処すればいいのか。
  • 再発を防ぐには、職場にどのようなことをお願いすればいいか。合理的配慮を依頼する必要があるか。
  • 睡眠薬を使わずに睡眠覚醒リズムを整えるにはどうすればいいか。抗うつ薬や抗不安薬を服用している場合は、どのくらいのペースで減薬・中止すればいいか。

 

皆さんが受けている治療方針と比較してみると、かなり大きく違うので驚かれた方も多いのではないでしょうか。

 

ところが、「適応障害だから、異動が決まれば治って職場復帰できるはず」、あるいは逆に「うつ病と診断されて抗うつ薬も飲んでいるんだから、適応障害のはずはない。前の先生が効かない薬を出し続けたので長引いているだけだ。異動は必要ない」とおっしゃる方も中にはいらっしゃいます。

 

適応障害は、[ストレス因>ストレス反応]ではあるものの、背景にはその人のストレス脆弱性やストレスコーピングの稚拙さなどの問題があるのです。

適応障害と診断されている多くの人は、[ストレス因<ストレス反応]となっていることがほとんどなので、異動すれば改善するという単純なものではないのです。

やはりセルフモニタリングやセルフケアのスキル、ストレスコーピング・スキルを身につけない限り、何度も不適応を起こしてしまうことになりかねません。

 

抗うつ薬を処方されているからといって、うつ病とは限りません。うつ病という病名は安易に診断されすぎるきらいがあることが指摘されています。

精神科の疾患は同じ病名でも治療法にばらつきが大きいため、本当に抗うつ薬による治療が必要だったのかを含め、その人に合った治療方針や予測される転帰・予後を説明されているかどうかが、診断名の告知以上に大切なことなのです。

 

院長

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