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摂食障害からの回復段階の6段階目に到達する(2021.05.17更新)

今回と次回にわけて、『8つの秘訣』の6段階目「止められる行動もいくつかあるけど、全てはどうしても無理」から、8段階目「行動からも思考からも解放されているときが多いが、常にというわけではない」までの間に、何が起きるのかについて説明していきます。

 

ほとんど知られていませんが、過食(むちゃ食い)やダラダラ食い、あるいは大食後の自己誘発嘔吐や過食嘔吐など、「準備期」を過ぎて「実行期」での乱れた食行動から回復していく段階には、大きく2つの段階があります。

 

最初の段階は、セルフモニタリングを通して乱れた食行動を突き動かしている感情や考えを知ることです。新しい対人関係療法による治療では、これを「自分自身との関係を改善する」と呼びます。

これが「止められる行動もいくつかあるけど、全てはどうしても無理」という6段階目です。6段階目ではすでにいくつかの行動が改善してきます。

 

感情を心の中で抱えられるようになってくると、次の段階である乱れた食行動という習慣を変えていくことが課題になります。これが「摂食障害行動はやめられるけど、摂食障害思考が頭から離れない」7段階目と、「行動からも思考からも解放されているときが多いが、常にというわけではない」8段階目で取り組んでいく、「行動の仕方を変えていく」ことに相当します。

 

そもそも、「人とのつながりを快適なものに修正しようとすること」「不安や心配事がうずまく日常を乗り越えようとすること」、これらが乱れた食行動に悩む女性たちが目指した方向でしたよね。

しかしあるとき、フッと頭に浮かんだ摂食障害思考(エド)のささやきに耳を貸したばかりに、道が逸れてしまいました。エドは甘いささやきで自己愛をくすぐりました。

 

中身より外見。
(中略)これこそが、他人に(自分自身にも)大してかつてないほど非現実的に高い期待をかけるやり方である。これこそが、本当はできないことをできると考えるように自分自身を騙し込むやり方である。これこそが、抑うつに脆弱になる方法である。それは、中身が外見に一致しないときである。

ヤプコ『鬱は伝染る。』北大路書房

 

感情調整スキルや感情耐性スキルが高まっていなかった乱れた食行動に悩む女性たちは、エドのささやきに乗って、心の中を満たすのではなく痩せた外見を手に入れようともがき始めました。

 

そうなるとエドの支配はますます強大になり、 エドとの関係は自らの心や身体をないがしろにしてしまう虐待関係にまで進展してしまいます。

 

エドとの約束は、患者さんにとっては当然長所のように思えるはずです。
たとえば、「体重が減ると自分がとても好きになれるよ!」といったたぐいの内容です。

でも、そこで治療の専門家の皆さんは、言葉や物理的な意味でのエドの虐待はかなり大きな短所だという点を理解できるようにやんわりと導くことができるのです。

シェーファー、ルートレッジ『私はこうして摂食障害(拒食・過食)から回復した』星和書店

 

この状態から回復するわけですから、回復までのロードマップが必要になります。

その第一段階がセルフモニタリングを通して乱れた食行動を突き動かしている感情や考えを知ること、そして、それらと自分を区別することです。

 

「もちろん摂食障害が本当に昼となく夜となく私につきまとうエドという名前の男性だったわけではありませんが、気分としては、まさにそんな感じでした。エドは、私が生まれたときから私が身につけてきた考えの集合体でした。回復のための他の方法とは違って、摂食障害をエドとして擬人化することで、エドが本来の私の一部ではないのだと学びました。だから、この方法に基づいて回復への道を進んでいくときには、目標はいつでもエドから離れることでした。回復を目指すための方法や練習はたくさんありますが、どれが役に立つかは人それぞれです」。

『さよならエド、こんにちは私』の中で、私はこのように説明しました。

シェーファー、ルートレッジ『私はこうして摂食障害(拒食・過食)から回復した』星和書店

 

ジェニーさんはまず摂食障害思考(エド)と自分自身を切り離すことを学びました。

そして「回復しはじめたばかりの頃には、エドとの対話を書き出してみると、自分に向けられていた怒りの矛先を摂食障害に向け直せるようになりました」と、摂食障害思考(エド)の虐待的な支配に屈せずにすむように、徹底したセルフモニタリングに取り組んでいますよね。

 

確かに、摂食障害エドについて読んで、そこに紹介されているエドの考え方の多くが自分にも当てはまるということがわかると、自分が摂食障害でないと否定し続けるのは難しくなるでしょう。

また本書を読んで、それまでは個人的特特性にすぎないと思っていた食行動に関連したちょっと風変わりな習慣が、命を脅かすほどの病として紹介されている行動と全く同じだと気がつく人がたくさんいます。

摂食障害に実際に罹っていることを患者さん自身にとって受け入れやすくするには、第1章の「エドのルール」(37ページ)を読んでもらうといいと提案しています。

スージーさんは、「患者さんには、その人のエドのルールを全部書き出したリストを作ってもらいます。摂食障害に罹っていることがどうしても信じられない患者さんには、食べ物と体重と服のサイズについて自分で設定しているルールをリストにしてもらいます。これもまた、患者さんがゆっくりとでも避妊を打ち破るきっかけとなります。リストを目にすると、コントロールしているのは実は自分ではなく、エドなのだと気がつきやすくなるのです」と説明しています。

シェーファー、ルートレッジ『私はこうして摂食障害(拒食・過食)から回復した』星和書店

 

摂食障害から回復するということは、摂食障害行動以外のスキルを身につけるということでもあります。

 

乱れた食行動を使って感じないようにしよう、麻痺させよう、なかったことにしようと目論んだ感情は、結局戻ってきてしまうのです。

摂食障害行動に頼っている限り、摂食障害思考や感情ときちんと向き合うことができませんから、別のやり方を試し、新しいスキルを身につけていくのです。

 

ある時点では救済であったことが、のちにはまったく不必要なものになっているということには、なかなか気づかないものなのです。

たとえば「船が沈み、ボートにしがみついて海の中を漂流し、ようやく陸地にたどり着いたとしたら、その後、陸の上では、その命綱であったボートはもはや不必要で厄介なものであるにもかかわらず、そのボートを手放せない」というようなものです。

ゴンザレス『複雑性トラウマ・愛着・解離がわかる本』日本評論社

 

摂食障害から回復したいと思い始めた時期(熟考期)や、回復の道を歩き始めたばかりの頃(準備期)には、「今まさに苦しんでいる人にとって、摂食障害を経験してそこから実際に回復してきた人の話は、よい刺激となってくれます」と、実際に回復した人に話を聞くことをジェニーさんは勧めていますよね。

 

彼らは、とても大切な点について率直に発言できるという特別な立場にいるのです。

たとえば、「ともかく食べなさい」という発現は、摂食障害に苦しんだ経験のない人から言われると威圧的で理解されていない感じがするかもしれません。

でも、『さよならエド、こんにちは私』にも書きましたが、苦しみを乗り越えてきた人の口からこの短い言葉を聞くと、前に進み続けようと思わせる力となって背中を押してくれるかもしれないのです。

シェーファー、ルートレッジ『私はこうして摂食障害(拒食・過食)から回復した』星和書店

 

こころの健康クリニックには、風間副院長という実際に摂食障害から完全に回復した先生がいらっしゃいます。風間先生は10段階目に到達されました。

 

乱れた食行動で悩む女性の方は、風間先生のブログ『星とたんぽぽ』を読んだり、実際にお話を聞いたりして、摂食障害からの回復する具体的なイメージを持っていただきたいと思っています。(風間先生のブログは先生が多忙なため、現在は休止されています)

 

院長

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