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五月病と適応障害(2021.05.12更新)

自粛ムードのGWも終わり、気が抜けたのか、疲れが溜まったのか、この時期から調子を崩す人も多いようです。

以前から「五月病」と呼ばれているこの状態は、どういう理由か定かではありませんが、長期化するとうつ病になると誤解されているようです。

 

たとえば、こういうケースが「五月病」の典型例と考えられます。

 

3月に地元の大学を卒業して上京した。4月に新入社員として1週間ほどの研修を受け、プロジェクトに配属された。初めての仕事で覚えなければならないことも多く、また、慣れない人間関係の中で気を使うことも多く、なんとなく会社に馴染めない感じがしていた。

ゴールデンウィークで実家に帰省し比較的ゆっくりと過ごせたが、会社が始まると疲れが残っているような感じでなかなか起き出せない。食欲も減ってきたし、お腹の調子も悪く下痢したり便秘したりする。

やる気も起きず、仕事に集中できなくてミスが多くなり、上司や先輩に注意されることが増えた。頑張らなくちゃと焦り、不安になり動悸がする。夜はなかなか寝付けないし、寝ても夜中に何度も目が覚めてしまう。特に月曜の朝はなかなか起きられず、遅刻したり休むことも増えてきた。。。。

 

特に去年と今年のようにコロナ禍の影響で外出自粛ムードの中では、どこにも行かずに家のなかで過ごした人も多いのではないでしょうか。

人間の概日リズムは日照量、身体活動量などのサーカディアンリズムと、食事の回数などのホメオスターシスリズムで調節されています。在宅勤務などもそうですが、身体活動量が減った場合、食事も夜型になり、朝起きるのがおっくうになってきます。

集中するための意欲も上がらず、仕事はやりたくなくて、何となくダルイのでずっと寝ていたい。もしかするとうつなのかもしれない。そう考え始めることが多いようです。

 

このような人たちが精神科や心療内科、メンタルクリニックを受診すると、10分程度の診療で「適応障害のうつ状態」と診断され、抗うつ薬、抗不安薬、睡眠薬が処方されます。

場合によっては、「適応障害 1ヵ月の休職を要する」との診断書が提出されることもあります。

 

「五月病」は「適応障害」なのでしょうか?

 

就職という環境の変化によるストレス・緊張・不安など、張り詰めた状態で溜まった疲れがGWの長期休暇で一気に出てきた状態を、俗に「五月病」と呼ぶことが多いようです。

 

ストレッサー(ストレス因)とストレス反応の総和をストレスと呼びます。

「適応障害」と診断するためには、環境負荷の評価としてどのような環境の変化、仕事の量や内容、あるいは誰とのどのような人間関係がストレッサー(ストレス因)となり、どのようなストレス反応が出ているのかを詳細に検討する必要があります。

また、その人自身が持っている状況変化に対するストレス耐性(あるいは脆弱性)についても評価する必要があるのです。

 

たとえば、ほとんどの⼈が耐えられないほど⼤きい状況の変化(事件や事故、災害、犯罪など)の後に精神⾯の不調が起これば、「急性ストレス反応」や「PTSD(心的外傷後ストレス障害)」と診断されます。

「適応障害」も、ほとんどの⼈が耐えられないほどの環境負荷(長時間労働や過重労働)が引き金となり、ストレス反応が起きているものとされています。

 

一方、不調を引き起こすとは考えにくい程度の状況変化でも身心の不調が起き、他の様々な状況でも同じような不調を繰り返す場合は、パーソナリティーの問題(未熟性)や発達障害(自閉症スペクトラム)による影響ではないかと考えられることが多く、状況変化への脆弱性が問題となります。

 

「適応障害」は、ストレッサー(ストレス因)としての環境要因の関与が大きいわけですから、治療方針は抗うつ薬や休職ではなく、業務量の軽減や、場合によっては部署異動など、可能な限り環境を調整することです。

「うつ状態をともなう適応障害だから、まず抗うつ薬を飲んでみましょう」と告げ、環境について詳しく尋ねないのは不適切な診断であり、不適切な治療である』と、北里大学の宮岡教授は述べておられます。

 

しかし、環境調整でも改善しない場合もあるのです。

 

たとえば、あるプロジェクトでの実績を買われて、新規プロジェクトに抜擢されたけれども、期待されたパフォーマンスを発揮できず、焦りや不安、自責感から身心の不調をきたし、「適応障害」の診断で休職してしまった。

 

あるいは、「適応障害」の診断で職場復帰した社員さんを異動させたけれども、異動先でもなかなか仕事のパフォーマンスが上がらず、上司や同僚との関係もギクシャクするようになり、遅刻や欠勤が増え、「適応障害」の診断で再休職してしまった。

 

こうなると、ストレッサー(ストレス因)としての環境要因の関与が大きい「適応障害」とは考えにくく、元々の性格やパーソナリティ、あるいは能力や素行など、その人自身の「個体要因」が問題ではないかと考えられるわけです。

 

先のケースでは、本人の能力と仕事内容のミスマッチ(不適応)と考えられますから、環境調整としては、本人適性を踏まえた職務内容となるように調整する必要があるでしょう。現職での環境調整で改善しない場合は、より本人の事情に適した職場への異動も考慮する必要があるかもしれません。

 

一方、2番目のケースでは、そもそもの社会不適応と考えられるわけですから、異動ではなく仕事の内容を覚えることなどの労務管理指導が必要になります。

 

休職を指示する診断書で「うつ病」や「うつ状態」と書かれていたとしても、あるいは、抗うつ薬が処方されていたとしても、「適応障害」の治療としては不適切です。

それでは改善しないため、主治医も「うつ病」ではないかと思い始め、抗うつ薬の量が増え、休職期間が長くなり、治りにくくなってしまいます。

 

職場でのメンタル不調、とくに「適応障害」の治療の基本方針は、職場や産業医などの保健スタッフと連携して、職場環境を調整していくことです。

そのためには、短時間診療で薬を処方する医療機関ではなく、産業医としての視点をもち、その人の回復にとっては何が必要なのかをちゃんと一緒に考えて、職場とも連携してくれる医療機関を選ぶ必要があるということですよね。

 

院長

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