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職場復帰可能の診断書は何を根拠にしているのか(2021.05.10更新)

職場のメンタルヘルス対応マニュアル』という本に、「産業医資格をもつ医師のうち精神・心療内科を専門とする医師は5.2%。産業医学を専門とする医師は1.1%でした。また、産業医資格を持つ医師のうち、産業医活動に現時点で携わっている意志は62%でした。つまり、「産業医資格を持つ医師は多いものの、産業医活動にかける時間はそれほど多くない。メンタルヘルス問題への対応を期待しても、精神科や心療内科を専門とする医師は少ない」のです」というフレーズがありました。

 

先日、こころの健康クリニック芝大門のリワークを卒業して復職された方からお聞きした話ですが、「休職中の情報についてずいぶん詳しい診療情報提供書をいただいていたようですね。この職場復帰準備性評価シートというのは、クリニックでオリジナルで作られたものなのですか?」と、大学病院から来た若い精神科産業医から言われたということです。

 

この若い精神科産業医の先生は、産業医の資格はお持ちなのですが、復職支援としてのリワークでどのようなプログラムを行っているのか、そして、うつ病リワーク協会の職場復帰可能性評価は何を基準に判定するのかを、ご存じなかったみたいです。

 

前出の本には、このようなことが書いてありました。

 

メンタルヘルス不調者をとりまく当事者から時々耳にする声を集めてみました。

産業医の立場から。

○本業の診療所が忙しく、産業医に時間をかけるのが難しい。

○産業医をしているがメンタルヘルス不調は正直なところ得意ではない。

○面談内容には守秘義務があるので、その結果を人事担当者に伝えづらい。

森本・向井『職場のメンタルヘルス対応マニュアル』中央経済社

 

また、産業医の資格はお持ちの精神科や心療内科がご専門の産業医の先生でも、職場復帰支援やリワークに携わったことのない薬を出すだけの先生方は、患者さんをどのように復職させたら良いのかご存じないことも多いようです。

 

主治医の立場から。

○初回の診察のときはじっくり話を聞く時間がとれるけど、それ以降も同じ時間をかけると経営が成り立たない。

○病気と治療のことは専門だが、仕事のことまで言われるとよくわからないところがある。

○本人が「仕事できそうです」といって、体調も整ってきていたら、「復職可能」の診断書を出す。

○会社の対人関係のストレスが原因だったら、主治医はなかなか立ち入れない。

○再発を防止するためには、負荷をかけない方向を推奨するしかない。

森本・向井『職場のメンタルヘルス対応マニュアル』中央経済社

 

3番目に挙げてある意見は実際よく体験することです。

休職者が体調が整ってきて主治医の先生から「復職可能」の診断書が提出されても、会社の産業医が復職レベルに達していないと判断し、リワークでのトレーニングを指示されてこころの健康クリニック芝大門のリワーク外来を受診される方も、かなりの数いらっしゃいます。

 

前出の本では、「主治医は産業医等とは異なり、会社の業務やリワークプログラムの実施状況を十分に理解しているとは限りません。「復職は可能です」との診断内容があったとしても、重大な前提事実を認識していない場合は、その信用性に疑問符がつくことになります」と辛辣な意見が述べてあります。

 

復職の可否を判断するにあたり、主治医や産業医の判断が重要になってきますが、労働者・主治医が復職可能と判断しているのに対し、会社・産業医が復職不可と判断して争いになる事例が見受けられます」と、復職をめぐる裁判の例が挙げてありましたので、引用してみます。

 

たとえば、東京電力パワーグリッド事件では、患者である従業員のリワークプログラムの出席状況が50%を割ったり、連絡がとれなくなるなどしており、就労可能であるか危ぶまれる状況であったにもかかわらず、主治医はリワークプログラムの評価シート等を認識しておらず、前提事実の認識欠如があり信用性に疑問があると指摘しています。

また、日本通運事件では、患者である従業員が会社に対して多数の名誉毀損行為を行っており、会社と従業員の信頼関係が深刻に悪化していたにもかかわらず、主治医はそれを知らず復職可能であると判断しており、主治医診断の信頼性に疑問符がついています。

コンチネンタル・オートモーティブ事件においても、「主治医の平成26年10月27日から通常勤務に問題がない旨の診断書は債務者(筆者注:会社)から債権者(筆者注:従業員)に対し、休職期間満了の通知が届き、『焦って目が覚めたと言ってきて、会社に戻り、頑張ろうと思う』との話があったため、希望どおりに書いたというものである。これは、医学的に軽快したということが理由になっているのではなく、債権者の強い意向によることが理由と考えざるを得ない」と判断し、主治医診断書の信用性に疑問を呈しています。

森本・向井『職場のメンタルヘルス対応マニュアル』中央経済社

 

このような裁判判例と似たような復職可能の診断書とリワークの問題点について、『「うつ病」と間違われやすい「適応障害」の仮想ケース』『「うつ病」と間違われやすい「適応障害」とリワーク』『「うつ病」と間違われやすい「適応障害」と復職』などで問題点を指摘したことがありますね。

 

皆さんが通院中の精神科や心療内科のクリニックではいかがでしょうか。とくに休職中の方は、職場復帰に向けての準備の仕方を主治医の先生から指導してもらっていますか?

 

院長

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