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摂食障害(エド)とのカサンドラ症候群から抜け出す(2021.01.05更新)

こころの健康クリニック芝大門宛のたくさんの年賀状、ありがとうございました。この場を借りまして、皆さまへの新年のご挨拶とさせていただきます。

 

新型コロナウイルスの感染拡大の中、年末年始は皆さま、どのようにお過ごしになったでしょうか。

 

今週1月7日には1都3県(東京・神奈川・埼玉・千葉)に、再び緊急事態宣言が発出されようとしています。

日本摂食障害協会の調査で、昨年の緊急事態宣言からの自粛生活で、過食症の症状が悪化した人が多いことがニュースになっていますよね。
(〘「過食が増えた」7割超 摂食障害悪化懸念 外出自粛など影響〙〘摂食障害、コロナ禍で悪化 「生活変化や孤独感が影響」〙〘コロナ禍で悪化する過食症〙)

 

今年こそ摂食障害から回復しようと決心された方もいらっしゃることと思います。ジェニーさんが「こうして振り返ってみると、回復するということは、それまでの規定の枠組みから外へ飛び出して、柔軟に考えてみるということかもしれません」と書かれているように、このような変化の時だからこそ、今の摂食障害の現状に変化を起こすタイミングでもあるのです。

摂食障害からの回復は、自分の心とどう向きあって、どのように付き合っていけばいいのか、「治療を受けようと思うときにはいろいろな障害が立ちはだかるものですが、決してそれらに回復の邪魔をさせない」ようにしながら、自分自身の心の扱い方を学んでいくプロセスなのです。

 

摂食障害から回復するための8つの秘訣』の著者の一人であるキャロリン・コンスティンさんは、『私はこうして摂食障害(拒食・過食)から回復した』(原題:Life Without Ed)の書評で、「彼女のベストセラーであるLife Without Edでジェニーさんは、摂食障害を状態ではなく対人関係として扱うことを学び、摂食障害(エド)と別れることができました」と書かれています。

 

ジェニーさんが摂食障害思考(エド)との関係を対人関係として扱うようになったのは、心理士のトム・ルートレッジさんとの最初の面接で行った「エンプティ・チェア」というやり方で健康な部分と病気の部分(エド)を区別できるようになったからですよね。(『摂食障害(エド)との自己内対話』参照)

 

摂食障害は食べ物の問題ではなく、自分自身との折り合いの問題です。自分自身の心の中にある健康な部分と病気の部分(エド)が闘っている状態なのです。

摂食障害から回復するための最初の一歩が、自分の心の中で起きている闘いに気づき、健康な部分と摂食障害思考(エド)を区別することです。

自分自身とエドを区別することができないと、食べ方というルール支配行動によって食べ物との問題が浮上し、それが人間関係を遠ざけることにつながってしまいますよね。

 

「十年後にも、エドはまだ私の所にやってくるでしょうか」と初版で書きました。

あれから十年が経ち、私は自信をもって「いいえ」とお答えできます。

こうなるまでに、エドを変える必要はありませんでした。私はただ、エドに対する自分の反応を変え続けただけです。

最終的には、エドのひっきりなしの冷やかしやコメントに一切反応しないようになりました。

シェーファー、ルートレッジ『私はこうして摂食障害(拒食・過食)から回復した』星和書店

 

10年前のジェニーさんは、エドを敵(ヨソモノ自己)とみなし、闘いを挑んでいました。

しかしエドを遠ざけようとすればするほど、カリギュラ効果(シロクマ抑制効果)によって、エドの支配はますます強力になり、ジェニーさんはどんどん弱っていきましたよね。

 

エドとの闘いに疲れ果てたジェニーさんは、サポートチームの専門家たちに泣きつきました。

 

いつになったらエドは私を支配しようとしなくなるのでしょうか。いつになったら私のそばからいなくなって、放っておいてくれるようになるのでしょう。

これは、私がサポートチームの専門家たちに投げかけていた質問です。

みんな、「ひょっとしたら、エドはいなくならないかもしれない」と答えました。実際に私の目を見て、エドは私の人生を支配しようとするのを絶対にやめないかもしれない、と言うのです。

 

そう言われても、納得できるはずがありませんでした。

「エドが一生つきまとい続けるのなら、私は何のために、これだけ回復への努力をしているのかしら」と私は問いかけました。「どのみち最後にエドが勝つのなら、どうして戦わないといけないの?」と尋ねました。

シェーファー、ルートレッジ『私はこうして摂食障害(拒食・過食)から回復した』星和書店

 

当時のジェニーさんは、「エドの言葉に逆らって、言いなりにさえならなければ」「それでも自分を守ると決めれば」と、まだ対決姿勢を崩していませんでした。

 

10年後のジェニーさんは、「エドに対する自分の反応を変え続け(中略)エドのひっきりなしの冷やかしやコメントに一切反応しない」と、エド(摂食障害思考)を真に受けずに、ただそのままにしておくやり方を身につけました。

このやり方は『セルフケアの道具箱』にある「呪いのことば」との向き合い方と同じですよね。自分自身の心との付き合い方を変えていくのです。

 

エド(摂食障害)と同じような人が現実に皆さんの周りにいると考えてみてください。

「やせ」という弱点をついて脅しをかけてくる相手(エド)の言いなりになることは、虐待を受けて支配されていることと、基本的には同じ状況だと理解できますよね。

最初はジェニーさんと同じように、「そんな言い方されるとすごく傷つくから、そんなこと言わないで!」と相手の行動を変えようとしますよね。

 

たとえば、「いわゆるカサンドラ症候群」だと思っている人も、相手を変えようと躍起になってしまいますよね。

相手にアスペルガー症候群などの自閉症スペクトラム(AS)の要素があるなら、自分の中にもそのような相手と惹かれ合う同じような要素(自分では認めたくないヨソモノ自己:ASの要素)があることに気づくことから始める必要があります。

 

妻が夫の「発達障害」を疑い、初診予約も妻が行うというパターンがある。(中略)ここで、当方が留意するのは、診断結果がそのまま離婚を進めるようなことにならぬように、夫婦間の理解を深める一助となるように心を配ることである。
(中略)
こうしたケースでは、妻もサブタイプの異なる自閉症スペクトラム(障害)が疑われることもしばしばであるが、当の夫がそれを指摘したり口にしたりすることはほとんどない。(中略)世に取り沙汰される「カサンドラ症候群」についてはその功罪を問いたくなることもある。

齋藤, 齋藤,: 成人発達障害者を理解するために—10分間の診療でできること、できないこと−−. pp.124-140. in 『日常診療における成人発達障害者の支援;10分間で何ができるか』星和書店

 

エド(摂食障害)による虐待も、巻き込み強迫による「いわゆるカサンドラ症候群」でも、必要なことは自分と相手の領域や境界線を明確にしながら、『相手は変えられない ならば自分が変わればいい』のスタンスで、「自分自身との関係」と「行動の仕方」を変えていくことです。

それによって「相手との関係性のあり方」を変えていくことが大切なのです。

 

そのように説明すると、多くの人がジェニーさんと同じように「いつまで我慢しなければいけないんですか?!」と、ちょっとムッとしたようにおっしゃいます。

 

少し立ち止まって冷静によく考えてみましょう。「自分は変わらない」「我慢しなければならないのならば、相手が変わるべきだ」、そんな風な考えが浮かんでいませんか?

摂食障害に当てはめると、摂食障害思考に対して「過食衝動さえなくなれば」「過食さえ我慢すれば、摂食障害は良くなる」という考え方と同じになっていますよね。

 

摂食障害(エド)やASの相手との関係の中で「我慢する」という行動を変えるためには、ジェニーさんが行ったように、自分の中にある「ヨソモノ自己」や「過食衝動」との関係を見直していくことが必要なのです。

そして「ライフゴール(どのような生き方をしたいか)」を見すえながら、「ヨソモノ自己」や「過食衝動」との関係性そのものに変化を起こしていく。これが新しい対人関係療法のすすめ方なのです。

 

院長

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