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摂食障害から回復する夢をあきらめないこと(2020.10.19更新)

学校が始まるとき、新しい仕事を始めたとき、妊娠や出産、親になるなど、変化の時期に摂食障害の再燃や再発が起きやすいことが知られています。

数ヵ月あるいは数年もの間、止まっていた摂食障害行動が戻ってくることがあります。

 

これを再燃と呼ぶか、再発と呼ぶかはむずかしいところですが、[摂食障害から回復する10の段階]で考えると、「7. 摂食障害行動はやめられるけど、摂食障害思考が頭から離れない」「8. 行動からも思考からも解放されているときが多いが、常にというわけではない」段階と考えると、完全に治っていなかった症状が悪化した「再燃(ぶり返し)」と考えた方が良さそうです。

 

私は自分の人生と未来を私自身で引き受けて、この結婚から歩き去ろうと思っています」とジェニーさんが書いているように、こころの健康クリニックで行っている過食症の対人関係療法の導入の際に「自分の選択に自覚と責任を持つ」ことを教えていますよね。

つまり、自覚的にそして主体的に自分の行動を選択し、その結果を引き受けるということです。

 

私は摂食障害を擬人化して「エド」という比喩を使った大きな理由の一つは、自分の回復への歩みに対して、このようにして責任をもちたかったからです」とジェニーさんも述べていますよね

「自分の選択に自覚と責任を持つ」ときに必要なことは、誰しも感じる変化に伴う一時的な苦痛を避けようとして永続的な苦悩に変えないこと、つまり、「心の枠組みを広げる」取り組みなのです。

 

しかし、多くの人が「自分は回復できない」という考えを信じこんでしまいます。

回復の途中にあったジェニーさんも、ご多分に漏れず、そうだったみたいですね。

 

摂食障害から回復できないのは世界の中で自分だけだ、と感じることはあるでしょうか。

私は、他のみんなが回復できても自分だけはできないと考えていた時期がありました。

自分は特別なケースで、外の人はともかく、自分だけは決してエドから離れられないのだ、と思っていました。だって、こんなに長い間一緒に暮らしてきてしまったからです。

覚えているかぎり、エドはずっと私の考えや行動を支配してきました。今さら何かが変わるなんて、とても思えませんでした。

シェーファー、ルートレッジ『私はこうして摂食障害(拒食・過食)から回復した』星和書店

 

「他のみんなが回復できても自分だけはできない」という考えを持つことによって、何を避けようとしているのでしょうか?

実はこの問いかけは、《衝動の波に乗る》の3つ目にもありますよね。

 

ところが、「回復できない」と考えていたのは、ジェニーさんだけではなかったようです。

アレキシサイミアと回避を支える理由づけの文脈』で、「アレキシサイミア傾向を持つ人の特徴は、多い順に[回避性[自己愛性][強迫性]などの気質傾向が特徴的と書いたことがあります。「否定的な部分で自分が特別な存在」という感じ方は、回避性と過敏型自己愛性の特徴なのです。

 

セラピーに参加していたみんなが、どんどん同じことを言いはじめました。みんなが、自分こそは回復できないただ一人の人間だと、それぞれ考えていました。

なんだか変だと思いませんか?

みんなが、自分だけは回復できないという否定的な部分では、自分は特別な存在だと思っていたのです。しかし、何か肯定的な部分で自分が特別な存在だと思っている人は一人もいませんでした。

シェーファー、ルートレッジ『私はこうして摂食障害(拒食・過食)から回復した』星和書店

 

実際に行動できない、あるいは、回復に向けて進んでいけない理由、障害となっているものは何でしょうか」「どうしたら、その障害を克服できるでしょうか」と『8つの秘訣』の《準備期》の質問にあります。

 

あなたが挑戦してみようと思うときに、どのような障害が予想されるでしょうか?あるいは、前進しようとするとき、どんな障害にぶち当たりそうでしょうか?」「それらの障害を克服するにはどうしたらよいでしょうか?(『8つの秘訣ワークブック』)を考える上で、『「できない」と「しない」:行動主体の取り戻し方』も参照してみてくださいね。

 

何を避けようとしているのか?」「本当に必要なものは何か?

《衝動の波に乗る》のこの2つの問いかけは、実は、「摂食障害を手放すことによって、あなたは何を失うように感じているのでしょうか」「摂食障害を手放そうとするときに感じる恐れや他の感情はどのようなものでしょうか」、「回復するために、今、どのような小さな変化を起こせるでしょうか」「どのようなところで支援を受けられるでしょうか」という《実行期》の質問でもあるのです。

 

何年か前の私には、今経験しているような穏やかな気持ちでいられるようになるなんてことは考えられませんでした。

回復をあきらめたいと思ったことが何度もありました。希望を失っていました。

でも、私は決して投げ出さなかったのです。

ときには、状況が好転しはじめる前に、もっと悪化することもありました。

そこから持ち直して良い方向に行ったとしても、また逆戻りすることもありました。

それでも、とうとう、昨日よりも今日の方が少しまし、というふうに変わってきたのです。

シェーファー、ルートレッジ『私はこうして摂食障害(拒食・過食)から回復した』星和書店

 

摂食障害症状のぶり返しと前に進み続けること』でも書いたように、摂食障害からの回復は決して一直線ではありません。行きつ戻りつしながら、少しずつ前進していきます。

みなさんもジェニーさんのように「決して投げ出さない」でください。

この時に役に立つのが《維持期》の質問ですので、参考にしてみてくださいね。

 

サポートチームのメンバー同士が「穏やかな静けさ」という言葉を使うのをよく耳にしてきました。私はいつも、「穏やかな静けさなんて、本当にあるのかしら」と考えていました。

(中略)

では、穏やかな静けさとは何でしょう。(中略)バーベキューを心から楽しめることや、自分の部屋に一人でいても大丈夫と感じられる、それは穏やかな静けさです。

近所を散歩できる体力があること、「いいえ、嫌」と言えること、集中することができるようになること、夢を追い続ける情熱があること、人生を楽しむために多くの時間を費やせること、そんなことが穏やかな静けさと言えるでしょう。

それは、「私」そのものと言えるでしょう。

シェーファー、ルートレッジ『私はこうして摂食障害(拒食・過食)から回復した』星和書店

 

ジェニーさんが体験した「穏やかな気持ち」や「穏やかな静けさ」は、心の枠組みが拡がり、自分自身に正直になり、「深い自己肯定感」と「セルフ・コンパッション(自分への思いやり)」を自分自身に向けることができた状態のようですよね。

 

院長

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