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摂食障害からの回復;自己肯定感とセルフ・コンパッション(2020.10.12更新)

カナダのブリティッシュコロンビア州保健局のケルティ・メンタルヘルス・センターでは、摂食障害の再発を防ぐための家族を含むサポートシステムを開発したそうです。

 

家族を含むサポートシステムのプログラムでは、①摂食障害の悪影響を減らすこと、②摂食障害症状の引き金を特定すること、③個別の対処計画(コーピング・プラン)を作成すること、④定期的におやつや食事を食べること、などが含まれています。

これによってセルフ・コントロールを身につけ、パートナーや家族と良好な関係を築くことができるようになり、再発を防ぐことができるとされています。

 

家族を含むサポートシステムのプログラムは、『8つの秘訣』の「秘訣5 やはり食べ物の問題なのです」「秘訣6 自分の行動を変えるということ」で取り組んでいく内容そのままですよね。

そして、こころの健康クリニックで行っている対人関係療法のすすめ方と同じように、「自分自身との関係を改善」し「行動の仕方を変えていく」ことが、「他者との対人関係を改善していく」ことにつながっていることがよくわかると思います。

 

摂食障害からの回復の土台になる規則的な食事の確立』で説明したように、エド(摂食障害思考)と健康な部分を区別し、エドの支配から自由になる心の状態を確立していくためには、まず、身体の状態を安定させることが必要不可欠です。

 

以前は、牛乳やチーズのような「余計な」食品の使い道はありませんでした。余計な食品は、私が生きていくために必要なものではありませんでした。

私にとっては、生き延びていくことさえできれば、それで十分でした。

食べ物が美味しいかどうかなんて、問題ではなかったのです。栄養素も問題ではありませんでした。

生きてさえいければ、あとはどうでもよかったのです。

(中略)

身体にさまざまな栄養素を入れてあげると、前よりもよほど健康的な気分になります。

力が湧いてくるし、百倍しっかり考えられますし、ずっと幸せだと感じられるのです。

シェーファー、ルートレッジ『私はこうして摂食障害(拒食・過食)から回復した』星和書店

 

ジェニーさんが書いてくれていることの逆を考えてみてください。

摂食障害思考の支配を許したまま、身体に必要な栄養を摂取せず、それでも摂食障害から自由になりたいと思うことは、ジェニーさんも体験された「エドの悪い部分だけを切り離そうと頑張」っている状態ですよね。実現可能性を考えてみると、不可能だということがわかりますよね。

 

ジェニーさんは「回復への過程でのあまり楽しくない部分こそが、最終的に、あなたの人生を実に豊かで楽しいものにしてくれる」と、食べ物との向き合い方が摂食障害から回復するための一番の土台になると説明されています。

このことは、こころの健康クリニックの対人関係療法の中では「自分との関係を改善」し、「行動の仕方を変えていく」取り組みとして説明していますよね。

 

自分との関係を改善することは、摂食障害思考(エド)の自己批判を真に受けずに、自分自身の存在を大切にする「深い自己肯定感」が必要になります。

 

回復の道のりでいろいろと学んできましたが、「いいえ、嫌」という言葉を使えるようになったことが一番の収穫と言えるかもしれません。

回復への道をたどり続けるうちに、この簡単で、とても意味のある言葉を使う自信がついてきました。

「いいえ」と言ったからといって、別にそれで取り返しがつかないほど人間関係が損なわれるわけではないと学びました。仮にそうなったとしたら、その関係はもとからどこか無理があったのだ、ということもわかるようになりました。

今では、「いいえ、嫌」と言えることは、私の人生においてとても大切な一つの選択肢です。「いいえ、嫌」と言うときには、自分のことを大切にしているのだと感じられるようになりました。

シェーファー、ルートレッジ『私はこうして摂食障害(拒食・過食)から回復した』星和書店

 

自分は何かを成し遂げたりする能力があると感じる「自己肯定感」、自分にはできることがあると感じる「自己有能感(いわゆる自信)」、他者のためにできることがあると感じる「自己有用感」、あるいは自分の価値を認識する「自尊心」と、「深い自己肯定感」はちょっと異なります。

自分の醜いところや嫌な感情も含め、そのまま認めることができる「自己受容」に伴って生じる肯定的感覚を「深い自己肯定感」と呼びます。
(それでいい、と開き直ることではなく、ただそうだ、と評価をせずにありのままに認めることです)

 

皮肉なことに、「いいえ」と言えるようになるには、まず先に「はい」と言えるようにならないといけません。回復の道を歩み続けることに、まず「はい」と言うのです。

「回復したい」と言ってみてください。

そうすると、いつの間にか「いいえ、嫌」と言えるようになっているでしょう。

シェーファー、ルートレッジ『私はこうして摂食障害(拒食・過食)から回復した』星和書店

 

摂食障害思考(エド)の暗示に乗らずに、「[はい]と言えるようになること」が、「深い自己肯定感」ですよね。

 

冒頭で「エドの支配から自由になる心の状態を確立していくためには、身体の状態を安定させることが必要不可欠」と書きました。

この時に必要になるのが摂食障害思考(エド)の暗示から抜け出すために必要なことが、身体感覚を感じて思考を真に受けないこと、『8つの秘訣』でいうと「秘訣4 気持ちを感じて、自分の考えに抵抗してみよう」です。

 

先ほど左足に意識を向けて、重くなるようにと暗示をかけたように、エドは、身体のいろいろな部分にあなたの意識を向けさせて、その部分を過剰に意識するように促すのです。

(中略)

最初にお示しした練習をしても、あなたの左足が実際に重くなったわけではないのと同じように、エドの暗示にかかっていても、あなたの身体が実際にそれだけ大きいわけではないのです。

(中略)

たとえ太ってきた、太っているとほんの少しの間、あるいは、人によっては、ある一定の期間、感じることがあるかもしれませんが、それでも、たとえ太ったと感じたとしても、それ以上に、回復することには意味があると言えるでしょう。

シェーファー、ルートレッジ『私はこうして摂食障害(拒食・過食)から回復した』星和書店

 

こころの健康クリニックでは、頭の中の考えと現実がイコール(等価)と思い込む状態を「心的等価モード」、あるいは「脳内劇場」と教えていますよね。

 

多くの人がいとも簡単に摂食障害思考の暗示にかかってしまうだけでなく、その暗示を現実だと真に受けてしまうのです。摂食障害からの回復の過程を歩き始めたばかりの多くの人が、この「心的等価モード」に陥っています。

 

たとえば、院長である私が「私はオーストラリア人かもしれない」と考えることと、実際にオーストラリア人であることは全く別の次元の話ですよね。私がオーストラリア人だと本気で信じているとすれば、私は「頭がオカシイ人」と見なされてしまいますよね。

 

自分の中の考えと現実を切り分け、そのような考えを持つ自分さえも「ただそうだ」と肯定的に受け入れることが、先に説明した「深い自己肯定感」です。

 

自分への思いやりは私が全部持っていきます。正直さと誠実さももっていきます。

(中略)

自分をこれからは大切にしていこうと思いますし、そうする力も備わっています。

幸せや愛情、自由でいられる感覚ももらっていこうと思います。

何よりも、私は自分の人生と未来を私自身で引き受けて、この結婚から歩き去ろうと思っています。

シェーファー、ルートレッジ『私はこうして摂食障害(拒食・過食)から回復した』星和書店

 

ジェニーさんが高らかに謳っているように、摂食障害から回復するために必要なことは「深い自己肯定感」と「セルフ・コンパッション(自分への思いやり)」なのです。

 

院長

日本摂食障害協会の『摂食障害 理解と回復のために』を元に作られた記事が、NHKオンライン「ハートネット」ポータルサイトに公開されています。

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(2)摂食障害のある人に家族ができること

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