過食症や過食性障害からの回復の道のり2
過食や過食嘔吐からの回復には
○ 自己受容
○ 人生に価値や目的をもつ
○ 価値や目的に沿った行動ができる
という「自己志向性」を高めること(自己の次元の成長)と
○ 他者受容
○ 共感・協力
という「協調性」を高めること(社会の次元の成長)の2つが必要不可欠です。
同時にこの2つは、不安定型愛着(いわゆる「愛着障害」)を獲得安定型の愛着に修正していくときも必要なプロセスになります。
「なりたい自分像」を明確にして、「変化の動機づけと原動力(秘訣1)」を使って、目的と価値にそった行動ができるようになるために、「自分との関係を改善(調和)すること(秘訣2=自己受容)」が過食症や過食性障害からの回復の最初のステップになります。
そのために行動の仕方を改善する必要があります。
『摂食障害から回復するための8つの秘訣』では、まず自分をふり返り(内省)、心の状態の変化に対する気づきを育んでいきます。
「秘訣3 食べ物の問題ではありません」でグエンさんが書いているように
批判的な声を意識的に無視できるようになるためには、そのための方法をきちんと学習する必要がありました。
(中略)
批判的な声は、古傷から来ていて、それまで何度も繰り返しているうちに心にすっかり染みついてしまった自分へのマイナスのメッセージでした。
役立つものではなく、私の中の賢い部分からの教えでもなく、全体を客観的に見た冷静な考えでもなかったのです。
ただ単に心の中にいる批評家で、私を不安にし続けることが目的でした。
『摂食障害から回復するための8つの秘訣』星和書店
ということです。
「批判的な声を無視する方法」として三田こころの健康クリニックでは、バイロン・ケイティの4つの質問を勧めています。
『過食症や気分変調症で「自分との関係」を改善する』を参照してみていただくとわかるように、4つの質問を使う際に言葉へのとらわれ(自己呪縛)から抜け出す必要があります。
「秘訣4 気持ちを感じて、自分の考えに抵抗してみよう」もそうですが、この時にどういう心の状態で取り組めばいいかということを三田こころの健康クリニックでは説明していますよね。
簡単にいうと、出来事を内側から体験する心の状態と、体験の外側で観察することの2つが同時にできるようになることなのです。
これがマインドフル・アウェアネスと呼ばれる状態で、マインドフルネスは瞑想することでも呼吸を意識することでもなく、自動操縦状態(とらわれ)から自由になる状態なのです。
治療者と一緒に、何が起きているのだろう?と「好奇心(curiosity)」を持って、「大切なものとして(love)」、「感じたり観察してみることで(acceptance)」、「新鮮な驚きを持って(openness)」、いま・この瞬間の体験を感じられるようになり、病気の症状は取り除かなければならないものではなく、触れていられるものとして、「自己受容」の仕方が変化してくるのです。
動揺する状況を心にとめるようにし、そのときに起こっているものや気持ちに注目してみてください。
そのときに起こっているものに、です。
これがうまくできるようになると、自分の悩みを隠すために食べ物を利用しなくてすむようになってくるでしょう。
ウィルフリィ『グループ対人関係療法』創元社
これがマインドフル・アウェアネスの状態です。
ルールに支配された行動を変える(「秘訣5 やはり食べ物の問題なのです」)、自己効力感を高めるスキルを身につける(「秘訣 6自分の行動を変えるということ」)、など、過食に対する葛藤・抵抗(闘争&回避)を減らすプロセスに取り組むことで自己受容が高まってきて、自分と考え方が違う他者も認められるようになってきます(「秘訣7 摂食障害にではなく人々に助けを求めよう」)。
相手がどんな人であったとしても、存在として受け容れられるようになってくると、相手に共感できたり(ミラーニューロン・社会脳の発達)、思いやりをもって接することができるようになったり、協力したりすることができるようになります(協調性の高まり)。
このような「自己概念あるいは関係のなかにおける役割についての気づき」は、「コンパッション(思いやりと優しさ)」から生まれてくるもので、その土台は「自己受容(セルフ・コンパッション)」にあるのですよね。
院長