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過食嘔吐症候群

[2013.06.10]

摂食障害と診断するには単に診断基準の症状を満たすだけでなく、その背景に「肥満恐怖」「やせ願望」という摂食障害に特有の精神病理を認めることが必須になります。
(症状だけで安易に摂食障害と診断されてしまうのは間違いです)

しかしながら、最近では習慣性嘔吐(むちゃ食い衝動を欠く)を摂食障害?と勘違いし、対人関係療法による摂食障害の治療を希望される方が増えています。

 

そもそも。
DSMでは摂食障害を「拒食症」「過食症」「むちゃ食い障害」の3つの病型に分類します。

「拒食症」は「制限型」と「むちゃ食い/排出型」に分けられ
「過食症」は体重増加を防ぐため自己誘発嘔吐、下剤などの乱用など代償行為をともなう「排出型」と、自己誘発嘔吐や下剤などの使用を定期的には行わないけれども、断食や過度の運動などはある「非排出型」という亜分類がなくなりました。

現在は体重によって、「拒食症」や「過食症」という分類をしますが、上記で見てみると、「拒食症・むちゃ食い/排出型(AN-BP)」と「過食症・排出型(BN-P)」は、低体重の有無しか差がなく、両者には相互に移行するケースもあることから、これらを「過食嘔吐症候群」とひとまとめにしました。

 

また「過食症・非排出型(BN-NP)」と「むちゃ食い性障害(BED)」は、「肥満恐怖」の有無でしか区別が出来ないため、これらを「むちゃ食い症候群」とまとめてみました。

拒食症・制限型(AN-R)
過食嘔吐症候群(拒食症・むちゃ食い/排出型 & 過食症・排出型)
むちゃ食い症候群(過食症・非排出型 & むちゃ食い性障害)

「過食症・排出型(BN-P)」では、体重が正常範囲に近いため、生物学的基盤から生じる過食衝動は
「拒食症・むちゃ食い/排出型(AN-BP)」ほど強くはありませんが、「(体重増加を防ぐための)代償行為」があり、これは「Purge(浄化)」と呼ばれます。

代償行為(Purge)」は、むちゃ食い後の自己誘発嘔吐だけでなく、断食や過度の運動、浣腸や下剤、その他の薬物を使ってなんとしても体重増加を防ぐために繰り返される行為で、体重増加を防ぐために自己誘発性嘔吐、下剤や浣腸剤、利尿剤の誤用、あるいは激しい運動などを繰り返し行う、という項目は残され、それも最低1週間に1回以上、3ヶ月間続くとされました。(DSM-IV-TRでは1週間に2回以上)

むちゃ食いをしてしまったという「やせ願望」の挫折に伴う後悔や、不全感、敗北感、屈辱感が強く、
むちゃ食いやこれらの感情に対する「浄化(purge)」が生物学的飢餓を引き起こし次の過食につながり、同時に「肥満恐怖(体重や体型の影響を受けた自己評価)」につながります。

 

冒頭に書いたむちゃ食い(過食)衝動を欠く習慣性嘔吐は、「排出型の過食症(BN-P)」と鑑別が難しいケースが多いようです。
食べた後に吐けば太らないというダイエット目的の行為から始まるため、「やせたい」や「太るのがイヤ」という感情があるのは確かですが、摂食障害と言えるほどの「やせ願望(よい自分という理想追求)」や「(自己評価が体重や体型の影響を強く受けている)肥満恐怖」は不明確です。

また「過食症・排出型(BN-P)」のように、「食べもののことばかり考えてしまう」という食へのとらわれや絶食や過度の運動などの繰り返される代償行為は見られず、自己誘発嘔吐も体重増加を恐れて過食を帳消しにするという「purge(浄化)」の文脈には当てはまらず、次第に「吐くこと」そのものが目的となり、吐くために通常の食事以上の食べものを食べたり、少量食べた後にも嘔吐したりするようになり、摂食障害に似た症状を呈するようになってきます。

 

対人関係療法による摂食障害の治療6~過食症の周辺(依存性)』で触れた、むしろ「嗜癖(アディクション)としての嘔吐」「嘔吐衝動」が精神病理の中核にあるようです。

このタイプは他にも衝動的な行動を伴うことが多く、3つ以上の行動行為(リストカット、過量服薬、浪費、性的逸脱、万引きなど)を伴う場合は、「多衝動型過食症」と呼ばれており通常の摂食障害に対する精神療法では治療が困難です。
対人関係療法による摂食障害の治療7~多衝動型過食症 』参照

 

「過食症・排出型(BN-P)」は慢性的な抑うつ状態を呈していることが多く、抑うつ気分が強まると過食・嘔吐も増悪し、気分が軽快すると過食・嘔吐も軽減するなど、気分の波に伴って過食・嘔吐の変化が見られるのに対し、「習慣性嘔吐」の場合は、気分との関連が見られずまるでスイッチが入るように衝動が起こるのことが鑑別になりそうですよね。

院長

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