神経性やせ症治療の「はじめ」に必要なことについて(Ver1.0)
当院は摂食症(摂食障害)の治療に特に力を入れてきているのですが、その中でも体重が低い神経性やせ症の治療は、本当に難しさを感じることが多いです。
その難しさは、「やせたい・太りたくない」患者さんと、「やせさせるわけにはいかない」医師の治療目標がすれ違ってしまうことにあると思っています。
極端に言えば、初診のときは、お互いに180°違う方向をみているといっても過言ではありません。
患者さんは、単に「やせたい」のではなく、「やせたがらざるを得ない」ので、症状なわけですから全く仕方がないことです。
医師としても、やせたい気持ちは医学的に理解可能ですから寄り添いたいのですが、しかし実際にやせるのはOKできないという難しい立場にいます。
そんなときは、とにかく何か、患者さんが「やせたい・太りたくない」以外に、患者さんが困っていることを一緒に探していく必要があります。
やせ・低栄養状態から来る患者さんの身体症状については、代表例としては、
「寒がりになった」
「階段で息が上がる」
「肝臓の数値に異常がでる」
などです。本当に全身にたくさんの症状がでるため、ここでたくさん羅列しても話がそれてしまうので、受診時に聞いて頂ければと思います。(いつか別記事にしたいと思います)。
ただ、この身体の症状の困りごとについては、結局のところ体重を増やさないと改善を自覚できないのですが、じゃあそれだけで体重を増やす、ということを納得してくれる患者さんはなかなかいないため、行き詰まってしまうことが多いです。
ここで、患者さんが最初は自覚しにくい、低栄養による精神的な症状に目を向けてもらえるようにサポートするのが治療者の仕事だと考えます。
「不安になったり、イライラしやすくなった」
「長い映画や友達との会話に集中できない」
「勉強しても記憶ができない」
「なんとなくやる気がでなくなってきた」
このようなことを感じることはないでしょうか?
これらは一回自分が困っていることに気づいてもらえると、治療の目標にしてもらいやすいと感じています。
身体の症状よりもすぐに改善してくる方が多い印象です。
過食・むちゃ食いの症状については、患者さんの体重が適正な範囲内にあれば治療目標にしやすく、患者さんと医師は同じ方向を向いて治療をはじめやすいです。
しかし、体重が低い場合には、低栄養、食事制限による過食衝動が非常に強いため、症状を我慢で止めることが基本的には困難です。
何かのきっかけで過食・むちゃ食いがなくなってしまうこともごく稀にあるのですが、食事制限だけの「神経性やせ症摂食制限型」に診断名が変わるだけになってしまいます。
ですから、医師側からは治療の目標にはできないというのが実情です。
とにかく、最初は必死にこの治療の共通目標をたてられるように、患者さんとお話していくことが重要だと思っています。
「このままではいけないかも」と何となく思えたときには、何か困りごとがあるはずです。
是非、ご相談ください。
院長
