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「摂食障害行動はやめられる」7段階目を乗り越えて

[2021.06.14]

摂食障害から回復する7段階目「摂食障害行動は止められるけど、摂食障害思考が頭から離れない」では、「治療の段階がもう少し進んでくると、苦しい時期に差しかかった患者さんが、摂食障害がすっかり元に戻ってしまうのではないかと恐れるかもしれません」といわれる「苦しい時期」に差しかかることがあります。

これが摂食障害の再発・再燃といわれる「ぶり返し」です。

 

摂食障害からの回復の7段階目で取り組むこと』で、「完璧にできなくても「ライフ・ゴール(人生の価値や目的)」に向かって少しでも進んでいれば、「○○ができたら、もっとよくなる」「こんなやり方もできる」と自分自身も認めることができるようになり(自己承認)、自己重要感が高まってきます」と説明しました。

 

しかし摂食障害思考(エド)の策略は巧妙で、“「体重が減ると自分がとても好きになれるよ!」といったたぐいの内容”、つまり、目的論的な思考パターンを使って、「△△だから、○○ができてない」、「△△だから、~になる」といったダメ出し・メッセージを引き起こしてしまうのです。

 

こころの健康クリニックでの対人関係療法による摂食障害の治療では、「8段階目の「行動からも思考からも解放されているときが多いが、常にというわけではない」を目指しましょう!」と伝えていますよね。20回の期間限定の対人関係療法による治療で到達できるギリギリのところが8段階目なのです。

 

「熟考期」から摂食障害から回復するための治療に取り組むことができる「準備期」に到達できることが、治療を始める前の最初の試練だとすれば、この7段階目は治療の中での最大の難関です。

山登りで言うと、ダラダラした上り坂が続き、何度も何度も似たような風景が現れ、なかなか目指す場所にたどり着けないような感じです。

 

北里大学の宮岡先生が『精神科医が考える「いい精神科医」の選び方』というエッセイで、「長期間の精神療法やカウンセリングでも改善しないとき」として、診断は正しいかどうか?カウンセリングの副作用ではないか?を考えた上で、「治療に直接関係していない精神科医の意見をセカンドオピニオンとして聞いた方がよいだろう」と書かれています。

 

実際に「他の医療機関で対人関係療法を受けたけど、摂食障害が良くならなかった」という患者さんが、こころの健康クリニックを受診されることがあります。

話を聞いてみると、「治療者の言うとおりに親やパートナーとコミュニケーションを取って、親やパートナーは話を聴いてくれたり自分に合わせてくれるようになったけど、摂食障害症状はまったく変化しなかった」とおっしゃいます。

 

摂食障害に苦しんでいる人たちは、そうした形で回復のための言葉を実質的に丸ごとポケットに入れておくと、つらい状況になったときにいつでもすぐにアクセスできてとても役に立つと教えてくれました。

患者さんが、「衝動に駆られたら、それを認識して、うまくかわしていくように」といわれていたり、衝動を先延ばしにするために「過食衝動に駆られたら、実際に行動する前に十分間待つように」などと言われているときには、特にこうした道具を使うことが効果的かもしれません。

シェーファー、ルートレッジ『私はこうして摂食障害(拒食・過食)から回復した』星和書店

 

摂食障害から回復していくためには、「行動の仕方を変えていくこと」、つまり過食衝動が起きたとしても、心の枠組みを拡げて過食衝動を抱えておくだけのキャパシティや、過食衝動と向きあう心の使い方を学んでおく必要があります。

また、摂食障害の背景に自閉症スペクトラム障害(発達障害)の要素がある方は、「空腹感がわからない」などセルフモニター機能が鈍いことがあります。そのため、感情だけでなく情動(身体感覚で感じられること)に対する感受性を高めることに取り組む必要があります。

それによって「摂食障害行動はやめられる」という7段階目を乗り越えていくのです。

 

「人とのつながりを快適なものに修正しようとすること」「不安や心配事がうずまく日常を乗り越えようとすること」、これらが乱れた食行動に悩む女性たちが目指した方向でした。

 

ただ認知や環境に焦点づけているだけでは、親密な対人関係で独特な傷つきやすさを感じる患者は満足しない。

関係性に焦点づけるだけでは、メンタライゼーションの問題を悪化させるリスクを高め、変化をもたらす自己に関する内省と反映リフレクションの可能性をむしばむ。

ベイトマン&フォナギー『メンタライゼーション実践ガイド』岩崎学術出版社

 

従来の対人関係療法では「他者との関係を改善する」ことのみに重点が置かれ、「自分自身との関係を改善する」「行動の仕方を変えていく」こと、つまり「不安や心配事がうずまく日常を乗り越えようとする」スキルを身につける治療方略が十分ではないことを弱点として何度も指摘したことがあります。

 

つまり対人関係という関係性に焦点を当てることに終始してしまうと、「自己に関する内省と反映リフレクション」というメンタライゼーション(自分や他者の心的状態に思いを馳せること、行為をその人の心から理解すること)が機能せず、「変化をもたらすこと」ができなかったことが、従来の対人関係療法による過食症の治療効果が乏しかった一因と考えられるのです。

 

自分を振り返る能力や他者とつながる能力というものは、もともと不利な状況を乗り越えるために存在しているものですから、あらためてこの能力を使いましょう。

自分自身を新しい目で見ることを学びましょう、他者や世界に対する柔軟なものの見方ができるように進化しましょう。何が起こっていたのかを“理解”することができれば、変わりはじめることができるのです。

ゴンザレス『複雑性トラウマ・愛着・解離がわかる本』日本評論社

 

自分自身をふり返る能力(セルフモニタリング)と他者とつながる能力を使って、「新しいものの見方」「柔軟なものの見方」を身につけていくこと、これらが「自分自身との関係を改善する」「行動の仕方を変えていく」ことなのです。

 

そもそも「親やパートナーは話を聴いてくれたり、自分に合わせてくれるようになった」、つまり相手が自分に合わせてくれるようになっても自分が変わっていないわけですから、「新しいものの見方」「柔軟なものの見方」が育たなかったのです。

 

彼女(註:サンディエゴ大学のジーン・トウェンギー心理学教授)は、『オレオレ時代:なぜ今日のアメリカ人の若者は、以前にもまして自信に満ちており、自己主張が強く、権利があると思っているのか:でも、前よりもみじめ』という本の中で、自己愛が膨らみ続けていることについて記述している。

トウェンギー教授は、若者たちが、自分たちのiPadと同じように、世界はプログラムできるはずだと期待しているせいで、他人の見方に対する寛容さや、感情やニーズに対する共感、他人との本物の人間関係を築いたり維持したりする能力が発達していないことを示唆している。

これらは、本来であれば避けられない対立や突発的な衝動の高まりにももちこたえることを可能にしてくれるはずのものである。

ヤプコ『鬱は伝染る。』北大路書房

 

相手が自分の言うとおりに自分に合わせてくれたとしても、「他人の見方に対する寛容さや、感情やニーズに対する共感」という「本物の人間関係を築いたり維持したりする能力」、あるいはスキルを高める治療になっていなかったということなのでしょう。

 

回復への道を進んでいくときに一番むずかしいのは、周りの人たちからの助けを、あなたがきちんと受け入れられるようになることかもしれません。

また、回復へ向けて、何らかのお楽しみも忘れないようにしましょう。

自分のことをもっと深く知って、新しい何かに挑戦し、周りの人たちに心を開いてください。

シェーファー、ルートレッジ『私はこうして摂食障害(拒食・過食)から回復した』星和書店

 

「自分のことをもっと深く知って、新しい何かに挑戦し、周りの人たちに心を開」くこと、つまり「自分自身との関係を改善すること」「行動の仕方を変えていくこと」への治療焦点がなく、「本来であれば避けられない対立」を乗り越えるだけのスキルも、過食衝動という「突発的な衝動の高まり」にも対処できずに終わってしまいますよね。

 

摂食障害の治療を受けている皆さんは、『私はこうして摂食障害(拒食・過食)から回復した』で実際に回復したジェニーさんの話を参考にして、『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』で摂食障害思考(エド)によって引き起こされる心の動きを理解しながら、『摂食障害から回復するための8つの秘訣』で摂食障害行動を引き起こす思考とのつきあい方、感情や身体感覚との向き合い方、そして行動を変えることに取り組んでみてくださいね。

 

院長

 

以下、日本摂食障害協会からの案内です。

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【ご家族限定】ピアサポーター育成研修会の参加者募集

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当協会理事長の鈴木眞理先生が代表者を務める研究班で、
現在困っているご家族を支援する先輩家族(ピアサポーター)を
養成するための研修プログラムの開発を進めています。

 

今回は、2020年度に実施した調査の結果をもとに作成した研修テキストと
プログラムを用いた研修会をオンラインで開催いたします。
そして、研修会の前後にアンケート調査を実施することで、
研修テキストとプログラムを、より使用しやすいものにするための改訂を行います。

 

ピアサポーター育成研修会及び研修会前後のアンケート調査に
ご参加いただける方は、下記URLより、研修会の日程など詳細をご確認の上、
お申込みください。

URL:https://select-type.com/ev/?ev=o3J4QpwUyMI

 

<研究の内容>

研究の名称:摂食障害を抱える家族のピアサポート研修プログラムの開発
(日本医療開発機構採択研究)
研究代表者:跡見学園女子大学心理学部 特任教授 鈴木眞理

対象現在、摂食障害患者を支えるご家族あるいは摂食障害患者を支えた
経験があるご家族(両親、きょうだい、配偶者・パートナーなど)で、
ピアサポーター育成研修会に参加を希望する方

定員:先着90名

募集期間:2021年6月15日~2021年6月30日です。(予定数に達したら、
早期に募集を終了することもございます。予めご了承ください。)

*研修会はZoomというビデオ会議ソフトを使用して開催します。
インターネット環境があれば、パソコン・スマートフォン等を用いてどこからでも
ご参加いただけます。

今回のアンケートは、基本的にピアサポーター育成研修会への参加をご希望の方を
対象としています。アンケート調査のみへのご協力は募集しておりません。

 

ご協力賜りますようお願い申し上げます。

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