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クセになった過食や過食嘔吐とどう取り組むか

[2015.12.14]

拒食症・過食症を対人関係療法で治す』に

過食嘔吐は、そのうちに、気がつくと治っています。
(中略)
習慣としての過食は少々残りますが、だんだんと、「時間がもったいない」「疲れるからやめておこう」というふうに、過食という習慣から離れていくことができるのです。
拒食症・過食症を対人関係療法で治す』紀伊國屋書店

と書いてあります。

三田こころの健康クリニックでの治療経験からは、「そのうちに」「気がつくと」という漠然とした治り方ではなく『過食(むちゃ食い)や過食嘔吐の治療2』で書いたように、感じた気持ちの大きさに応じた過食しか起きなくなり、感情不耐が改善され(心の枠組みが広がって)過食をしなくなる、というハッキリとした治り方をされることがほとんどなのです。

 

対人関係療法では、

治療のプロセスが進むまでは、まだしばらくの間、過食に頼る必要があります。
(中略)
「過食が今の自分に必要なものだと認める」という気持ちに切り替えができると、過食は少し楽になります。
(中略)
しかし、治療のプロセスが進むまでは、もうしばらく過食の力を借りる必要があるのです。
拒食症・過食症を対人関係療法で治す』紀伊國屋書店

「治療のプロセスが進むまで」「しばらくの間」と期間限定で症状としての過食を容認しますが、対人関係療法による治療が進んでくると、出来事に対処するスキルも身についてきますので、「まぁなんとかなる」と心の枠組みも広がってきて、初期のような衝撃を感じるような出来事がだんだんと減ってきます。

 

それでも過食が起きてくることがあります。

あまりにも長く摂食障害に苦しんでいると、特にこれといった嫌な出来事があるわけではなくとも、摂食障害行動が容易に起きやすい状態になります。
繰り返しているだけで行動が習慣化して、ただ単に「できるから」とかいつもの癖でといった感じで、気がつくと過食や嘔吐をするようになります。
摂食障害を通じてホメオスタシスを維持するようになった、といえるかもしれません。
(中略)
実際、その段階になると、摂食障害行動に従事していないとかえって落ち着かなくなるでしょう。
摂食障害から回復するための8つの秘訣』星和書店

 

「気がつくと」するようになった過食や過食嘔吐、あるいは少々残る習慣としての過食や過食嘔吐を減らすには、対人関係療法で「自己志向的認知(自尊心)を高める」以外に、『自分で取り組む過食(むちゃ食い)や過食嘔吐の治し方』で書いたように

○ 食事摂取方法(栄養回復・生活リズム)
○ 感情受容と調節スキルを高める

に取り組んでいく必要があります。

 

その状態になると、摂食障害行動をしていなければ感じるはずの気持ちにも、ほとんど気づかなくなります。
つまり、摂食障害行動をしていると自分の心の中にある気持ちに気づかなくなるのです。
このように、自分の気持ちを理解してしっかり感じ取るためには、摂食障害行動をやめることがただ大切なだけでなく、ぜひとも必要になるのです。
摂食障害から回復するための8つの秘訣』星和書店

「感じるはずの気持ちをしっかり感じ取る」ために、過食や過食嘔吐を引き起こす衝動と向き合うことが必要です。

 

少々残る「習慣としての過食や過食嘔吐」を減らしていくためには、自分自身と向き合うプロセスが必要不可欠で、これが「感情受容と調節スキルを高める」ことなのです。

 

衝動と向き合う「感情耐性」と、過食をガマンする「行動抑制」は別の次元の話なのですが、対人関係療法では「過食を抑えつけない」ということで混同されてしまいがちです。

不快な思考や感情が起きたときすぐに気分解消行動に走るのではなく、何が起きたのか?そのときにどう感じたのか?を振り返り、

・過食をすることで現実の何が変わるだろうか?
・過食や過食嘔吐が、「本当の問題」の解決にうまく機能しているか?
・過食や過食嘔吐をすることで、何を犠牲にしているのだろうか?
・摂食障害症状をやめると、どんな不都合が起きるだろうか?

などを自分の心と対話するプロセスが必要です。

そのために三田こころの健康クリニックで指導しているようなマインドフルネスで自分の内面を見つめてみたり、『8つの秘訣』のワークに取り組んでみることが必要になるのですよね。

院長

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