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不安障害

不安と恐怖

一般的に「不安」は、内的あるいは外的な危険を予期することによって引き起こされる憂慮の感情とされ、一方、「恐怖」は、意識して実際の危険を認識することによって引き起こされる不安と理解されています。

これらの不安や恐怖は、カフェインやコカインなどの中枢神経刺激薬、アルコールや大麻などの中枢神経抑制薬、心血管疾患や呼吸器疾患、甲状腺疾患や片頭痛などでも引き起こされることが知られています。

進化論で有名なダーウィンは「不安は、おそらく危険信号への反応として発生したものが、危険を回避するという一連の反応傾向を形成するに至ったもの」としています。したがって、病的な不安を主症状とする不安障害は、進化にもとづくさまざまな生命維持の誤警報と解釈することができると考えられています。

 

さまざまな不安障害

アメリカ精神医学会の精神障害の診断と統計マニュアル第5版(DSM-5)では、「分離不安症」「選択的緘黙」「限局性恐怖症」「社交不安症」「パニック症」「広場恐怖症」「全般不安症」が不安障害群としてあげられています。

「分離不安症」は、愛着対象からの分離に関する過剰な不安であり、乳児期だけでなく、青年期や成人期でもありふれた不安障害の1つであることが知られています。

「選択的緘黙」は、状況依存的な言語的コミュニケーションの障害(他の状況では話せるにもかかわらず話すことが期待される特定の状況では一貫して話せない)で、吃音などのコミュニケーション症や、自閉スペクトラム症、統合失調症、その他の精神病性障害の経過中に起こる場合は除外されます。

「限局性恐怖症」は、特定の対象または状況(飛行すること、高所、動物、注射されること、血を見ること、など)への顕著な怖れと不安と定義され、実際の危険性や社会文化的状況に釣り合わないもの、とされています。

 

社交不安症」は社交恐怖ともいわれ、従来からわが国の「対人恐怖」との違いが議論されてきました。他者の注視をあびる可能性のある場面(パフォーマンス)に対する著しい恐怖または不安とされ、それが他者の気分を害するのではないかと恐れる病態です。

自己臭恐怖や自己視線恐怖などの確信型「対人恐怖」は、関係妄想を帯びているもの(重症対人恐怖症)や、前統合失調症状態あるいは統合失調症回復期にみられる妄想性障害や、醜形恐怖に分類されます。

 

パニック症」は、繰り返される予期しない13の特徴的な症状からなるパニック発作があることと、パニック発作により変化した不適応行動があることが特徴です。しかし、パニック発作は「パニック症」に特異的な症状ではなく、精神病にもみられることがわかっています。

「広場恐怖症」は、恐怖もしくは不安の対象が、公共の交通機関、広い場所、囲まれた場所、列や群衆の中、家の外で1人でいること、の5つの具体的状況のうち2つ以上あることから診断されます。

 

全般不安症」は、日常的な多くのことがらに対する可能な不安と心配が持続する障害です。浮動性不安と不安に満ちた予期あるいは憂慮が特徴で、否定的なライフイベントがきっかけではなく、日常における否定的でコントロール不能と感じた出来事の蓄積により発症すると考えられています。

 

不安障害の共通点

恐怖や不安を回避したり逃避しようとする傾向が、不安関連の障害と診断されたほぼすべての人に共通することから、否定的感情の回避とそれに伴う非適応的な方略によって感情体験をコントロールしたり抑制したりすることが、不安障害を増強する中核的な病理学的プロセスであることが研究によって実証されています。

 

人は心配をする際、自分自身と話をし、イメージよりももっと抽象的な言語的な思考を使います。

抽象的な言語的思考によって、短期的には嫌悪的なイメージや強烈な否定的感情を避けることができますが、長期的にはこの方略は役に立つことはなく、不安による自動操縦状態に陥ってしまいます。

 

不安障害の治療方針

人間が不安を感じたり、身体感覚を経験したりすることには、何も障害となる要素はありません。

否定的な思考や不安な感情には有害性や障害としての要素はなく、たんなる思考や感情であって、それ以上でもそれ以下でもないのです。否定的な思考や不安な感情は人に害を与えたり、人を殺したりすることもないのです。
困難な感情的な痛みを苦悩へと変えるのは、そのような痛みに対する体験の回避であり、「苦悩=痛みx回避」なのです。

 

不安障害の治療では、体験の構造や内容を変えるのではなく、感情的・心理的体験に対する反応の仕方を変えて、否定的な思考や不安な感情との付き合い方を学び、生きづらさを減らしていきます。

また、自ら選択した価値に沿って生きる心理的・行動的な余地を作り出しながら、そういったことを体験するための心の余裕も作り出せるよう試みます。

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