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リワーク主治医と会社産業医の連携による復職への効果

[2021.07.14]

現在、こころの健康クリニック芝大門では、リワークを利用する際には、主治医の変更をお願いしています。

 

以前は主治医変更は必須条件にはしていませんでした。

ところが、いろんな不都合が出てきたのです。

 

こころの健康クリニック芝大門のリワークでは、毎月、職場復帰準備性の評価を行っていますよね。

あるとき、こういうことがありました。

 

主治医の先生には、毎月、職場復帰準備性評価の結果とともに、現在の状態についてお知らせしていたのですが、まだ復職可能レベルに達していない患者さんが復職を強く希望され、主治医の先生は復職可能の診断書を提出してしまわれたのです!

後に産業医の先生から問合せが来ました。リワークでの評価では、まだ職場復帰可能とは言えないとお伝えして、産業医の先生も納得されたようでした。

後に聞いたことですが、この患者さんは仮復職したものの勤務継続できず、退職されたということでした。

 

また、こういうこともありました。

「適応障害」の診断で5年ほど通院し、2年以上前に休職となり、傷病手当の支給期間も終わってしまっていた患者さんが受診されました。

休職から2年経っても復職できないため、会社の産業医の先生がこころの健康クリニック芝大門のリワークを勧めてくださったそうです。

主治医の先生は、「リワークに参加できる状態まで回復していない」との理由で、いい顔をされなかったそうですが、患者さんは「リワークの話を聞いてから考えさせて欲しい」と、こころの健康クリニック芝大門のリワーク外来を受診されたのでした。

 

この患者さんには、5年間2種類の抗うつ薬、2種類の抗不安薬、2種類の睡眠薬が最大量で処方されていました。

抑うつ状態はなく、睡眠覚醒リズムが整っているにも関わらず、些細なことで不安になったり焦りが出たりなど、処方薬による認知機能の低下が明らかでした。

リワークを初めて1ヶ月半ほど経過したところで主治医の先生に、抗うつ薬と抗不安薬の減薬をお願いし、漸減の仕方もお伝えしました。

 

ところが「復職前の変化の時期に薬を変更したり減薬したりすると、状態が悪くなったときに責任が持てない」「減薬の仕方は教えられなくても知っている!」と憤慨され、減薬に応じてくださいませんでした。(患者さんにお聞きしたところ、主治医の先生は減薬の仕方をご存じなかったようでした)

一方、リワークでさまざまな対処法を学んでいた患者さんは、アサーションをつかって粘り強く主治医と交渉してくださいました。(1ヶ月半のリワークプログラムでここまでの対処ができたといいうことは、こころの健康クリニック芝大門のリワークプログラムの効果の有用性の傍証といえると思います)

 

ついに主治医は折れてくださり、「そういうことならリワークで処方してもらうように」とおっしゃってくださったそうです。でも最後に、「うちではこれ以上診ない」と患者さんを見捨てる発言をされたそうです。

 

リワークでは毎日、患者さんの状態を観察しています。2週に1回あるいは1ヵ月に1回受診し、5分にも満たない主治医の先生とは、観察レベルがぜんぜん違うのです。

毎日の長時間の観察、これがリワークは「治療」であると言われる所以ですが、主治医の先生はご存じなかったのでしょう。

 

ちなみにこの患者さんは、まったく薬を服用していない状態まで回復し復職されました。先日、復職後1年のフォローアップに来院されました。これまでの1年間、再発もなく5年間の不調がウソのように、元気に働いていらっしゃいました。

 

このようにリワーク担当医である私と主治医の連携がうまくいかないことが多かったので、リワーク期間中は復職まで責任を持って治療していくため、転院、主治医の変更をお願いしているのです。

 

こころの健康クリニック芝大門には、産業医の先生からの紹介で外来を受診される方や、産業医の先生からリワークを勧められた方が多く通院されています。

こころの健康クリニック芝大門の周辺には大手の企業も多いので、通院という点ではお昼休みあるいは終業後に通院しやすいこと、リワークに通うことが通勤訓練も兼ねることができるなど、地理的なメリットも多いのです。

 

それだけでなく、こころの健康クリニック芝大門では、毎月かならず産業医の先生と連携を行っているのが大きな特徴です。

 

『主治医と産業医の連携に関する有効な手法の提案に関する研究』(労災疾病臨床研究事業費補助金 平成27年度 総括・分担研究報告書)によると、主治医が産業医と連携しなかった場合、「疾病の重篤化が3割、就業への悪影響(休職の長期化など)が3割」など、従業員への不利益(デメリット)が生じることが明らかにされているのです。

 

なんらかの理由で主治医と連携しなかったあるいは連携できなかった場合に労働者へ生じた不利益 (非連携による不利益)を集計すると、非連携の24事例のうち、疾病の重篤化や就業への悪影響が生じた事例はともに約3割ずつみとめた。多くは精神疾患が占め、非連携により休職の長期化などの結果となった

主治医と産業医の連携に関する有効な手法の提案に関する研究

 

多くの医療機関は、産業医の先生との連携を行っていらっしゃいません。

私自身、産業医として社員さんと面談した際には、主治医の先生へのメッセージを伝えているのですが、応じてくださった主治医の先生は皆無でした。

 

産業医の立場から考えても、休職中の方に産業医面談を促しても応じられないケースでは、休職が長期化し、休職期間満了で退職となることが多いようです。

また、休職中の産業医面談を行っていても、傷病手当の受給期間が満了する1年半以上の長期休職になることも稀ではありません。

 

反対に、主治医と産業医の連携により、約9割が就業面での効果、約6割が治療面での効果をみとめたとされています。

 

連携(医療情報共有)による成功(就業継続もしくは治療への寄与)事例のうち、約9割が就業面での効果、約6割が治療面での効果をみとめた。

就業面の効果としてはその大半が、業務内容調整もしくは業務時間調整の実現を占め、特に職場復帰(3次予防)での効果であった。

また治療面の効果としては、早期治療介入(重症化予防)の実現や産業医からの情報の診断・治療への活用といった2次予防の観点での効果が多かった。

主治医と産業医の連携に関する有効な手法の提案に関する研究

 

リワーク主治医が患者さんの状態を産業医の先生に毎月お伝えすることで、企業(会社)側は患者さん(社員さん)の回復状況を把握することができます。

 

患者さん(社員さん)の復職時の産業医面談で、毎月の職場復帰準備性やリワークでの様子のレポートについて産業医の先生から感謝されることが多く、そのことも患者さん(社員さん)の職場復帰の自信につながっているようです。

1ヵ月で復職されたある会社の社員さんが、復職時の面談でこころの健康クリニック芝大門のリワークの内容を話されたところ、上司から自分も受けたいと言われた、という話も耳にしています

 

復職するときの患者さん(社員さん)は、浦島太郎になったような気持ちで恐る恐る会社に足を踏み入れられます。

一方、毎月の状況が把握できていた会社では、タイム・ギャップを感じさせることなく、当たり前のようにいたって普通に受け入れてくださるのです。

患者さん(社員さん)は「何と言われるか緊張しすぎていたから、拍子抜けした」とおっしゃるのです。

 

このようなリワーク主治医と産業医の連携もまた、こころの健康クリニック芝大門で行っている半日のリワーク1〜4ヵ月の短期集中型のプログラムで、終日4〜6ヵ月の長時間のリワークに匹敵するだけの復職率と再休職防止を実現できている理由の1つでもあるのです。

 

こころの健康クリニック芝大門では、院長である私は、毎週月曜日に産業医としての実務を行っています。

こころの健康クリニック芝大門は他のメンタルクリニックとは異なり、働く人たちの側に立ちつつ、産業医としての視点を持った臨床医として、患者さんの治療やリワークでの復職支援に役立てることができているといえるでしょう。

 

院長

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