変化の時期の乗り越え方〜気分変調性障害(慢性うつ病)

3月から4月にかけて、進級や進学、あるいは入学や社会人としての就職など、環境の変化にともなっ「自分自身の社会的役割が変わる」ことが多くなります。

対人関係療法ではこれを「役割の変化」と呼びます。
上記の変化に加え、転居や転校、異動や転職や引退、結婚や離婚などの社会的な変化だけでなく、大人の身体になる思春期や、妊娠や出産、病気やケガなど生物学的な変化もあります

 

対人関係療法の適応になる疾患のうち「気分変調性障害(慢性うつ病)」での「役割の変化」の時期の対処法についてみていきましょう。

 

病気の人にとってはどんな変化もストレスになりますが、「気分変調性障害(慢性うつ病)」の人は
「…ねばならない(べき思考≒完璧主義)」によって、過剰な役割を自分に課してしまい(過剰適応)
頭の中の現実(脳内劇場)に圧倒されて現実以上に負担が増えてしまう
のです。
(『気分変調性障害(慢性うつ病)の愛着スタイルと気質』参照)

そのため、変化の時期には「気分変調性障害(慢性うつ病)」の人は大うつ病を併発して「二重うつ病」になったりします。

 

思春期に「気分変調性障害(慢性うつ病)」を発症していなくても社会人になるという変化の時期に大うつ病を発症し、それが治りきらずに慢性化する「気分変調性障害・晩発型」に移行する場合があります。

また「軽症感情病性気分変調症(無力型気分変調症)」では、変化の時期に大うつ病の診断を満たさない程度の「適応不全(適応障害)」を起こしやすいことが知られています。
(変化を避けるための「引きこもり」になることもあります)

 

さて、「役割の変化」のときに必要なのは、

・何が起きたのか
・それについてどう感じたのか
・本当はどうなって欲しかったのか
・そのためにはどうしたらいいか

という「状況の位置づけ(役割を現実的なものにする)」と「感情を指標にする」ということが道標になりますよね。

「感情を指標にする」ということは、「自分はダメだ」とか「出来そうに思えない」「他の人はやっているのだから、自分もそうしなければならない」という「症状」や、「考え(べき思考)」ではなく、不安は不安として感じる(認める)ということですよね。

この変化に対する不安を「べき思考」で抑圧すると、自己否定感(自分への原因帰属)が強くなり、能動的な変化を起こすために必要な自己肯定感を保てなくなります。

 

変化の時期には身近な人に気持ちを話して肯定してもらうというプロセスが必要になりますが、自己否定感(自責感)が強いと気持ちを感じるどころか、症状でコミュニケーションすることでますます現実から離れてしまうこともよくありますし、「気分変調性障害(慢性うつ病)」の人は認知—情動知覚が「前操作期」まで退行するため、「それが別の人の気持ちだったら?」という他者の視点で自分を客観視するということも難しくなります。(『気分変調性障害(慢性うつ病性障害)と心の発達』参照)

 

水島広子先生の本から引用します。

くれぐれも、「ほかの人は難なく乗り越えているのだから、自分もそうしなければならない」などと思わないようにしてください。どんな人にとっても変化は大変なものです。気分変調性障害の症状が、それを見えにくくしてしまっているだけなのです。
また、気分変調性障害の症状があると、役割の変化に適応するのはますます大変なものになるということも忘れないでいただきたいと思います。
そして、変化に適応するときのポイントは、自分の弱さを認めて優しくするということだ、ということもよく覚えておいていただきたいと思います。
水島広子・著『対人関係療法でなおす 気分変調性障害』創元社

水島先生のメッセージを指標に、変化の荒波を乗り越えて下さいね。

そして、苦しくなったときには、それが治療すべき病気の症状であることを認め、『対人関係療法でなおす うつ病』や『対人関係療法でなおす 気分変調性障害』を参考に、信頼出来る治療者とともに人生を取り戻すプロセスを歩んでいただきたいと願っています。

院長