「気分変調性障害/持続性抑うつ障害」の最新事情

「抑うつ神経症」や「神経症性抑うつ」と呼ばれていた「気分変調性障害」は、DSM-5では「持続性抑うつ障害」となり、気分変調性障害と慢性大うつ病性障害が統合された形で、なんとなく周辺がぼやけた印象を受けます。

 

「気分変調性障害/持続性抑うつ障害」は成人の約3%にみられ、女性の方が男性より2倍有病率が高く、急性の大うつ病性障害よりも、「気分変調性障害/持続性うつ病障害」の方が症状は軽いものの人生に対する影響ははるかに大きく、とくに不安症群と物質使用障害を併存する危険性が高く、小児期の親の喪失(死別)や離婚なども発症要因になるといわれています。

 

発症が21歳未満か21歳以降かで分ける「早発性」と「晩発性」はそのままで、物質使用の有無や家庭内外のストレス因を考慮する必要があり、イジメ、離婚、失業、慢性的な経済的な重圧、認知症の配偶者の介護、慢性疾患への対処など、長く続くきわめて困難な人生の境遇に対応したものである場合は、「気分変調性障害/持続性抑うつ障害」と診断せず「ストレス反応」と診断します。

この「ストレス反応」とうつ病、精神病性障害、双極性障害および関連障害が「気分変調性障害/持続性抑うつ障害」の鑑別診断になります。
またDSM-IVのパーソナリティ障害のうち、B群(境界性・自己愛性・反社会性)および、C群(強迫性・回避性・依存性)と強く相関するとされ併存診断が可能になっています。

 

周囲の人たちとの折りあいの問題であるB群パーソナリティ障害や、自分自身との折りあいの問題であるC群パーソナリティ障害のテーマである「葛藤」の位置づけによりますが、「気分変調性障害/持続性抑うつ障害」を発症した結果の「葛藤」なのか、パーソナリティの問題が先行した「葛藤」なのかを注意深く判断する必要があります。

「葛藤」というテーマで対人関係療法による「気分変調性障害」の治療(IPT-D)をみると、取り組んでいく課題は適切な自己主張、怒りの表現、社会的なリスクに向き合うことになりますよね。

 

冒頭で書いたように「気分変調性障害/持続性抑うつ障害」は曖昧になった上、「気分変調性障害」を診断できる医療機関が少ないだけでなく、

なお、本書で述べてきた対人関係療法は、まだまだどこででも受けられる治療ではありません。
そんな限界を何とかするために、本書では、私が治療の中で実際に患者さんに申し上げることのほとんどを書いたつもりです。
水島広子・著『対人関係療法でなおす 気分変調性障害』創元社

ということですが、専門的な対人関係療法を行っている医療機関は全国でも数カ所しかないうえに、「気分変調性障害/持続性抑うつ障害」の治療ができる医療機関を探すのは至難の極みと思われます。

 

それに加えて対人関係療法の中でも気分変調性障害の治療(IPT-D)は難易度が高いのです。

慢性的な絶望とやる気喪失のために、そして正常気分の記憶がないことが多いために、気分変調性障害の患者の治療は難しくなりうる。
コーネル大学の気分変調性障害治療研究の治療者たちは、大うつ病エピソードの患者を治療するよりも気分変調性障害の患者を治療する方が、より自信を必要とするということで意見が一致している。
(中略)
IPT(対人関係療法)の技法を学んでいる途中の治療者にとっては、大うつ病の方が手をつけるのに容易な診断であろう。しかし、経験を積んだら、治療者は気分変調性障害を引き受けることを怖れるべきではない。

と専門家向けの『対人関係療法総合ガイド』に書いてあります。

つまり、三田こころの健康クリニックのように、気分変調性障害の診療も専門に行っていて、対人関係療法による治療が可能な医療機関のように、「気分変調性障害」の診断と治療の両方が可能な医療機関を探すことは、今後の人生が病気のために損なわれないようにするための必須のプロセスと言えますよね。

院長