2つの「むちゃ食い障害(過食性障害)」

「過食/むちゃ食い」は、「binge eating」といわれます。
「binge」とはどんちゃん騒ぎの意味で、

①2時間以内などの他と区別できる時間帯に、ほとんどの人が同じ時間に食べるよりも明らかに多い量の食物を食べる。
②過食/むちゃ食いの最中に、食べることを制御できない感覚を伴う(過食のコントロールをあきらめている)。

という「過食/むちゃ食い」の定義にも反映されていますよね。

DSM-5では嘔吐を伴う過食症を「過食症」と呼び、「嘔吐を伴わない過食症」と「むちゃ食い障害」を「過食性障害」と呼びます。

 

もともと、Russel(ラッセル)が「神経性やせ症(拒食症)」に反動として過食が生じた病態と考え、肥満を防ぐための代償行動を伴わないタイプ、つまり、「やせ願望」を中核とした狭義の摂食障害のうち、体重が減少せず、主症状が「過食(binge eating)」である病態を「嘔吐を伴わない過食症」と呼んでいました。

 

これとは別に肥満研究の中で指摘された過食があり、Stunkard(スタンカード)が、肥満における過食は拒食の反動としての過食とは異なり、病的なやせ願望や代償行為もみられないと報告し、このタイプの肥満では、対人関係、自己評価の低さ、ストレスマネージメントの問題と関連しており、自己効力感が低く、非現実的な食事療法を取り入れる傾向が指摘されたのでした。

このタイプでは、「嘔吐を伴わない過食症」と違い、食事制限がみられず、過食以外でも「だらだらと食べすぎる(overeating)」が指摘されています。
夜の覚醒時間内に食べすぎる「夜間摂食症候群」はスタンカードが報告したタイプに似ていますよね。

 

しかしながら、DSM-5の過食性障害の過食エピソードは

①通常よりずっと早く食べる。
②苦しいくらいに満腹になるまで食べる。
③身体的に空腹を感じていないときに大量の食物を食べる。
④自分がどんなに多く食べているか恥ずかしく感じるため一人で食べる。
⑤後になって、自己嫌悪、抑うつ気分、または強い罪責感を感じる。

という基準のうち、3つ以上を満たす状態で「だらだらと食べすぎる(overeating)」は、過食エピソードとして回数を数えることは困難とされています。

DSM-IV-TRの「週2回以上、6ヶ月以上」という基準がDSM-5では「週1回以上、3ヶ月以上」と頻度が下げられ、さらに「他の特定される食行動障害または摂食障害」として「(頻度が低い、および/または、期間が短い)過食性障害」が設けられ、さらに診断頻度が上がると同時に曖昧な診断も増えるのではないかと考えられます。

 

また「過食性障害」は「過食症(嘔吐を伴う過食症)」と比べて、「強迫性障害」を含む「不安障害」や「気分障害」などの合併症が多いことがが指摘されています。
(『「むちゃ食い障害」のサブタイプ(亜型)』参照)

このように「嘔吐を伴わない過食症」と「むちゃ食い障害」は、症状レベルではほとんど区別はできないのですが、クロニンジャーの「新規追求」は、「むちゃ食い障害」は「嘔吐を伴わない過食症」よりも低いのです。

 

「むちゃ食い障害」では、何もすることがない(余暇刺激)に対する「気分不耐」があり、「だらだら食い(overeating)」が起きますから、通常の対人関係療法による治療で焦点を当てていく「重要な他者」との関係を扱うことに加えて、第2層や第3層の人たちとの関係、つまり社会的な対人関係スキルを伸ばすと同時に、「自分の人生は自分が主人公」という「主体性」を確立する必要がある、ということですよね。

院長