食行動日記でクセになった摂食障害行動パターンを知り治療に活かす

過食(むちゃ食い)や大食やダラダラ食い、過食嘔吐(食べ吐き)などの「乱れた食行動(摂食障害行動)」が「習慣になった」「クセになった」と感じられている人も多いと思います。

何かのきっかけで、たとえばダイエットに取り組んでいるのに、甘いお菓子を一口食べてしまった途端に「禁止していた食べ物を食べてしまった!」とネガティブな考えや後悔などの気持ちが生じ、反射的に「食べたい」「吐きたい」という衝動が生まれ、その瞬間から「食べ吐き(過食・嘔吐)」に向けての行動が開始されますよね。

 

この一連の対処行動(コーピング)が「自動操縦状態(意識化されていない)」ために、「習慣になった」「クセになった」と感じられるようです。Akoさんの「心の在り方」を参照してみてくださいね。)

 

心にある思考や気持ちに気づき、それを理解して、調節できるようになると、置かれた状況に対してどんなことができて、どんなことはできないかがわかるようになり、人生でより良い選択がしやすくなるでしょう。

摂食障害に関連した行動は、あなたの中で問題となっている思考や気持ちに突き動かされて起きていて、おそらくは、苦しい気持ちを麻痺させ、気持ちから目をそむけさせ、意識に上がってこないようにフィルターをかけ、または逆に気持ちに対処しようとする役割を果たしているのです。

コスティン、グラブ『摂食障害から回復するための8つの秘訣』星和書店

 

三田こころの健康クリニック新宿の〔専門外来〕では積極的に勧めてはいませんが、患者さんの中には『素敵な物語』を参照しながら「食行動日記(過食日記や食べ吐き日記)」をつけている人もいらっしゃいます。

日付、食べた時間、場所とともに、その時食べたもの、過食と感じたかどうか、どこで吐いたか、何があったか(考え・気持ち・行動)、について、リアルタイムにその都度記録していくと、どんなときに食事系の過食が多くて、どんなときには甘い物系や普段禁止している食べ物(高カロリー)系が多いかということが、だんだんと傾向が見えてきます。

この「食行動日記(過食日記や食べ吐き日記)」とともに、過食や過食嘔吐をする前と後の考えや気持ちをモニターしていくと、習慣的・自動的・衝動的、いわゆるクセになったと感じていた過食や過食嘔吐が、「自分の中にあるどんな考えや気持ちの解消行動につながっているのか?」がしだいにわかるようになってきます。

この「食行動日記」は、無意識に行っていた過食行動をモニタリングするので、最初は難しいと感じられるようです。(過食症の認知行動療法では、これに体型確認や体重測定のモニタリングを付加することもあります)

 

あまりにも長く摂食障害に苦しんでいると、特にこれといった嫌な出来事があるわけではなくとも、摂食障害行動が容易に起きやすい状態になります。繰り返しているだけで行動が習慣化して、ただ単に「できるから」とかいつもの癖でと言った感じで、気がつくと過食や嘔吐をするようになります。
摂食障害を通じてホメオスタシスを維持するようになった、と言えるかもしれません。

アルコール依存症に苦しむ人が朝起きたら何はともあれまずお酒を飲むのと似て、摂食障害でも、特に理由がある訳ではなく、ただ単に習慣から食べ物を制限して過食して嘔吐する、という状態にまで至る可能性があるのです。実際、その段階になると、摂食障害行動に従事していないとかえって落ち着かなくなるでしょう。

摂食障害があまりにも確固としたものになってくると、そうした行動がともかくその日一日をやり過ごすための対処法になります。その状態になると、摂食障害行動をしていなければ感じるはずの気持ちにも、ほとんど気づかなくなります。つまり、摂食障害行動をしていると自分の心の中にある気持ちに気づかなくなるのです。

このように、自分の気持ちを理解してしっかり感じ取るためには、摂食障害行動をやめることがただ大切なだけでなく、ぜひとも必要になるのです。
習慣化してしまった摂食障害行動をやめると、自分の思考と気持ちが必ずわかるようになるでしょう。

コスティン、グラブ『摂食障害から回復するための8つの秘訣』星和書店

 

何が過食衝動・嘔吐衝動の引き金になるのか』で「内的な引き金」やHALT(空腹感(Hungry)/多幸感(Happy)、怒り(Angry)/不安感(Anxiety)、孤独感(Lonely)、疲労感(Tired)について説明しましたよね。

過食(むちゃ食い)や大食、ダラダラ食い、自己誘発嘔吐(食べ吐き)をしているその瞬間は、ほんのつかの間のスッキリした感じを持つかもしれませんが、その後、ぐったりして虚しい気持ちになってしまいますよね。
バカバカしい、もうこんなことは止めたいと思うのに、その時は食べ吐きしないではいられないような気持ちになってしまいますよね。

つまり、食べることや吐くことが機能的で有効な対処(コーピング)になっておらず、逆にむちゃ食いや食べ吐きがストレッサーになっていて、その乱れた食行動を何とか止めようと足掻くこと(ストレス反応)によって、「習慣になった」「クセになった」と感じてしまう「悪循環」が起きているようです。

 

私たちのクライエントさんたちのように、みなさんも、衝動に駆られると、以下のような方法のどれか、あるいはいくつかを組み合わせた方法で対処しているはずです。

————食べ物を制限して強い意志で自分をコントロールできているかのように思い込む。

過食をして、嫌な気持ちから気をそらすか、気持ちを麻痺させるか、自分を慰める。

嘔吐して、気持ちを体外に排出するか、安心を得るか、不安を和らげる。

私たちの内面で起きるこうした一連の反応は、「思考 — 気持ち— 衝動 — 行動」という連鎖反応なのです。

コスティン、グラブ『摂食障害から回復するための8つの秘訣』星和書店

 

前出の引用で「習慣化してしまった摂食障害行動をやめる」という言葉が出てきました。

これは、意志をしっかり持って過食(むちゃ食い)しないようにガマンするということではない、ので注意してくださいね。

「習慣化してしまった行動をやめる」ということは、「衝動があってもこれまでと同じようにすぐに反応せずに、自分の心の中の動きのセルフモニタリング(自己観察)を続けてみる」ということです。これが「衝動の波に乗る」ということですよね。
Akoさんの「欲求の正体」を参照してみてくださいね。)

食べたいのか食べたくないのか、過食したいのか嘔吐したいのかにかかわらず、衝動というものはなかなかコントロールできるものではありません。しかし、ひとまずすぐさま反応しないでいられると、衝動からは多くを学ぶことができます。

衝動があっても反応しないでいる状態を「衝動の波に乗る」と呼ぶ場合がありますが、これは基本的に、反応する前にしばらく気持ちをありのままに感じつつ、何もしないで時間を稼ぐということです。

苦しい経験に上手に対処するには、嫌な気持ちの背景に何があるのかということに気づくための時間がいくらか必要ですし、気持ちを煽り立てて苦しさをますます強くしている思考を見つけ出して切り離すためにも時間が必要です。

コスティン、グラブ『摂食障害から回復するための8つの秘訣』星和書店

 

患者さんの中には、三田こころの健康クリニック新宿の〔専門外来〕を受診する前に記入していただく問診票を書くことがすごく苦痛に感じられる方もいらっしゃると思います。

問診票を記入することは、これまでむちゃ食いや食べ吐きで見ないように、なかったことにしていた自分の心と向き合うプロセスですよね。

しかし、「過食や過食嘔吐がはじまったきっかけを思い出せない」人や、自分自身をふり返ることが苦手な人、あるいは自分の心を見る習慣のなかった人にとっては、問診票を記入すること=自分と向き合うことが苦しくなり、書けない人も多いんですよ。まさに「自分を振り返ること」が過食症から回復する課題であるとわかったわけですよね。
また、そのような人たちは強迫スペクトラム障害(強迫-衝動スペクトラム)を合併していることも多いため、治療を開始してもセルフモニタリングが苦しくなってしまい、行動変容を起こせない人もいらっしゃるのです。

 

対人関係療法による治療の効果は、変化への動機の段階と関連するという研究成果がでています。
梅こんぶさんの「対人関係療法の問診票が届いた!」やAkoさんの「初診の日」を読んでいただくと、過食や過食嘔吐から回復する準備ができていて、そして実際に回復された人たちは、問診票に対しても意欲的に取り組むこと(自分を振り返ること)ができていらっしゃいますよね。

 

クセになった習慣化した食べ吐きから回復するための最初の一歩として、衝動を生み出している気持ちや、その背景にある思考に気づき、セルフモニタリング(自己観察)を続けられるようになるために、『素敵な物語』にある「食行動日記」をつけてみることも役に立つかもしれませんね。

 

院長