非定型の摂食障害〜食物回避性情緒障害

他の医療機関で拒食症や過食症と診断された患者さんが摂食障害の対人関係療法を希望し三田こころの健康クリニックを受診されます。

そのような患者さんの中で、最近目立つのが、ダイエットの既往やダイエットに引き続く拒食期がないけれども、家庭環境の変化や受験、身体疾患などをきっかけに「食べない・食べられない・食べたくない」ため低体重になり「拒食症」ではないかと、対人関係療法を申し込まれる方たちです。

 

発症の仕方は「拒食症」と同じように「それまでのやり方が通用しなくなった(役割の変化)」がきっかけになっていることが多いのですが、よく聴いていくと、

「勉強や仕事が忙しくなったので、食べる時間がない」
「この食べ物だったら安心できるので、そればかり食べる」
「食べたいけれども、食べてキモチ悪くなるのがコワイ」
「過食の時は気にせず甘い物を食べています」

など、症状は『拒食症』や『過食嘔吐を伴う拒食症』にすごく似ています。

 

しかし摂食障害特有の「体重や体型への異常な認知」や、「体重や体型への病的な没頭」が明瞭でなく、多くのケースでは食以外の強迫症状や恐怖症(特定の食物+その他)があり、二次的に抑うつや不安を呈している事が多く「特定不能の摂食障害」や「他に分類できない摂食障害」としか診断できない人たちが増えてきた印象があります。

このような「やせ願望」や「肥満恐怖」を伴わなず「ボディーイメージの歪み」もない「拒食症」に似た食行動異常はDSM-5では『回避/制限性食物摂取障害』と診断されることになります。「回避/制限性食物摂取障害」と子どもの摂食の障害」参照)

 

もともとHiggs(ヒッグス)らが食物回避を主症状とし、抑うつや不安、強迫症状、あるいは恐怖症(特定の食物に対する恐怖など)を伴う小児例について「食物回避性情緒障害」として報告したのが最初とされています。

学童期に好発するといわれていましたが、思春期から青年期でも発症がみられることからDSM-5では摂食障害のカテゴリーに入れられたようです。

有病率などの調査は行われていないのですが、小児期発症の摂食困難例では拒食症の約50%についで多く(26〜29%)男女比は1:4で、女性に多いことが報告されています。

 

三田こころの健康クリニックを受診された患者さんのうち『回避/制限性食物摂取障害』と診断した全例が女性で、発症年齢は19〜32歳までさまざまでした。

特徴的だったのが、三田こころの健康クリニックで診断した全例に、さまざまな強迫観念や強迫行為があり、とくに、対称性や溜め込みに関する「強迫観念」や整理整頓、抜毛などの「強迫行為」がみられ、強迫観念に対しては軽度〜中等度の苦痛を伴うものの強迫行為に関しては苦痛が少なく(自我違和感に乏しい)むしろ積極的に強迫行為を行っているケースが多いようでした。
しかし残念なことにほとんどのケースで見落とされていました

 

またさまざまな恐怖症やパニック発作やさまざまな不安、あるいは二次的な抑うつ感(≠うつ病)を伴うことも多いため食物回避は主症状というよりも、強迫症状あるいは恐怖症などによる二次的な抑うつや不安あるいは身体への情緒反応と考えられています。
実際「食欲という動物的な欲求なんてなければいいのに」とおっしゃる患者さんも何人かいらっしゃいました。

治療は低体重や身体合併症への対処は拒食症と同じですが、強迫あるいは恐怖症に対する治療が必要で、薬物療法も重要な治療選択となりますよね。

 

院長