非定型の摂食障害〜制限摂食

摂食障害は思春期に発症することが多いのですが、発症以前の状態を把握しなければ、正確な診断ができないだけでなく。不適切な治療につながりやすいのが「制限摂食」といわれる状態です。

 

制限摂食」は、栄養的には食物の内容の問題はなく、年齢相応よりも摂食量が少なく、身長と体重はやや低い「食が細く華奢」な状態なのですが、往々にして「拒食症」と誤診されています。

もともと食事や食物に対してあまり興味が無く、食べる喜びも示さないことが多く、積極的に食物を避けたり、体重を減らそうとすることはないため「制限型の拒食症(神経性やせ症)」とは全く異なる病態です。

また、日中には摂食量が少なく、夜だけ(主観的に)大食するので、「夜間摂食症候群(夜食症候群)」のように見えることもあります。

 

しかし体力的に余裕がないために、風邪や胃腸炎などに罹患した時や、思春期になってエネルギー需要が増えた時期に急激にやせが進行することがあり、場合によっては身体症状で入院が必要になったりします。

青年期から成人期に発症する場合は、仕事が忙しく食事をする暇がなかったりして体重が減り、「何をどのくらい食べていいのかわからない」という混乱で「拒食症」を疑われ受診につながることが多いようです。

 

もともと食が細いだけなので、入院によって、身体の活動量が減ることと本人も早く退院したいために頑張って食べるので。比較的短期間に体重の回復が得られます。
拒食症が入院治療で治ったといわれるケースは、この「制限摂食」であることも多いようです。

しかし退院した後にも、周囲の心配が持続し、「もっと食べなさい」と食べることを強要することで、ますます食べられなくなり、受診されることがあります。

 

問題は、患者さん本人は本人のペースで食べているのに、身体の不調が起きてしまったことによって、明らかに食べる量が少ないという周囲の心配が惹起され、「食が細い」という元々の患者さんのペースが無視されて、それにより患者さんが苦痛を感じている、ということですよね。

対人関係療法でいう「役割期待の不一致」の状態ですが、もともと食の細い人であったこと、食べられなくなったわけではないこと、「体重や体型への病的な没頭」や「ボディーイメージの認知の歪み」はないことからそもそも拒食症ではなく、摂食量の問題で、対人関係療法などの心理的介入が必要な精神疾患ではないこと、活動量と摂食量のアンバランスという身体的な問題であること、成長に伴い摂食量も増えてくることが知られていること、などを本人とご両親に説明します。

 

その中で両親には「そこはかとない安心感を向けてあげて下さい」と周囲の不安を患者さんにぶつけないようアドバイスし、患者さん本人には必要なエネルギー量を計算し、このくらい食べておけば大丈夫と身体に対する自覚を促し、自分のペースで回復するようにということで治療を終わることがほとんどです。

11月14日にエントリー予定の『「拒食症(神経性やせ症)」をめぐる問題』でまとめたように、「制限型の拒食症(神経性やせ症)」に似た病態には

強迫や抑うつ、不安を伴う「食物回避性情緒障害
食べるものへのこだわりが強い「選択的摂食
嘔吐恐怖や飲み込み恐怖がある「機能的嚥下障害と他の恐怖状態
年齢相応より摂食量が少ない「制限摂食

などがあり、治療を考える場合は、

元々、どういう人だったのか
そのようなきっかけで食べられなくなったのか
それはどのタイプの「拒食症(神経性やせ症)」なのか
どういう治療アプローチが適しているのか

などを考えていく必要があるということですよね。

 

「拒食症(神経性やせ症)」と診断されている方だけでなく「過食症」と思われていらっしゃる方も、
なかなか治らないと悩んだときには、上記のタイプを考えてみる必要がありますので、摂食障害の治療を専門にしている三田こころの健康クリニックに相談してみて下さいね。

院長