過食症(食べ吐き)と過食性障害(むちゃ食い)の特徴と課題

夜更かしして「どか食い」すると、朝起きるのが遅くなるだけでなく、胃もたれしているために朝食と昼食を抜き、そのせいで夜に「どか食い」が起きるサイクルを繰り返してしまいます。これも飢餓大食の一種ですよね。

さらに、日没後は食欲を増やすグレリンというホルモンやBMAL-1という時計遺伝子(代謝を落とし脂肪合成が増える)のスイッチが入ってしまいますから、ますますエネルギー摂取量(食事量)が増えてしまうのです。

 

じゃあ早く寝ようとベッドに入っても眠れずに悶々として、そのイライラが過食のスイッチになってしまうことも体験された方は多いのではないでしょうか?

心療内科や精神科のメンタルクリニックを受診すると、生活指導が行われることはなく、間違いなく睡眠剤(場合によっては抗うつ薬も!)が処方されます。
ところが、生活リズム(睡眠覚醒リズム)を整えることなく睡眠剤を使ってしまうと、いわゆる「寝ぼけ過食(睡眠時随伴症候群)」が起きやすくなってしまうのです。

 

ダイエットは当然空腹につながり、それに食べること、罪悪感、過食、代償行為、安堵感が続き、その後、このサイクルが再び始まるのです。
加えて、これらの行為全体に伴う身体的な「気分のよさ」が存在します。
この悪循環が、他のあらゆる問題から自分の関心を逸らしてくれるというわけです。

ホール&コーン『過食症:食べても食べても食べたくて』星和書店

 

心の安定は、生物学的な安定の上に成り立つものです。
睡眠-覚醒リズムを整えることや、飢餓状態をつくらないために決まった時間に食事をとること(低体重の場合には2回の間食を追加)など、生物学的な身体の安定をまず図る必要があります。

 

冒頭に述べた夜間食行動異常症候群や、睡眠時随伴症候群など、生活リズムに起因する食行動障害は、まずその改善に取り組む必要があります。
たとえば、睡眠覚醒リズムを調節するメラトニンというホルモンは、覚醒(網膜の光刺激)後16時間前後で増加してきます。つまり、夜に早く寝ようと思ったら、その16時間前に起きる必要があるのです。

 

多くの患者さんが、自分の中には二人の人間がいるようだ、と言います。
一人は過食症と縁を切って健康になりたいと願っているのに、もう一人が絶えず妨害するのです。
嘘をついたり、隠れてこそこそと行動したりすることは、摂食障害の人たちによく見られる特徴です。
特に切羽詰まった過食衝動があるときには、他の人のものであると知りながら、盗んで食べたり、ごみ箱をあさったりすることもある、と多くの人が言っています。

(中略)

多くの人たちが過食衝動のことを、何か強烈な感情から逃げてしまいたい、あるいは、何らかの感情を麻痺させてしまいたいという無意識の願望に駆り立てられていて、「完全に止めることは不可能」と表現しています。

ホール&コーン『過食症:食べても食べても食べたくて』星和書店

 

過食衝動が起きたときには、『8つの秘訣』でも対人関係療法でも、【衝動の波に乗る(一時停止ボタンを押す)】練習をしますよね。

その取り組みの中で、「状況判断することなくすぐに行動に移してしまう」「少ない報酬であっても少しでも早く得ようとする」パターンが起きていることを自覚する「考え・感情・情動のコントロールについての気づき」を促し、行動の仕方を改善していきますよね。

 

衝動の波に乗る」ときは、まず「過食(食べたい)衝動」と名づけているものは、身体のどんな感覚なのか、を感じてみます。
素敵な物語』では、「体の飢えと心の飢えを識別する能力」と説明されていますよね(p.228)
(『素敵な物語』には「喉の渇き」や「お腹が空いた」など身体感覚を感じてみる練習も載っていますので参照してみてください(p.231〜233)

身体感覚を感じた後、つまり「ハート型のバスット」と「ひょうたん型の容器」のどちらが空っぽだと感じているのか、まずしっかりと感じてみることです。そして、「身体的なお腹の空腹」と「精神的な心の空虚感」の区別がついたら、24時間以内の出来事を振り返り、そのときに何があったのか、どう感じたのかをたどって、健康な部分と摂食障害の部分の対話(あるいは自動思考との対話)をはじめてみるのです。

 

過食の引き金になるものはたくさんあります。
体重計の示す受け入れがたい数値、普段は「禁止している」何かを食べたとき、「許可している」よりも一口多く食べてしまったとき、外傷体験(トラウマ)となるような出来事に遭遇したとき、あるいは食べ物について考えてしまうという、一見害のなさそうなことでさえ引き金になることがあるのです。

ホール&コーン『過食症:食べても食べても食べたくて』星和書店

 

治療に取り組み始めた最初の頃は、イヤだと感じた出来事、ストレスと感じられた出来事が目白押しですが、しだいに「今日は平穏な一日だったのに、過食してしまったのはなぜだろう?」と考えるようになってきます。
多くの場合、過食衝動の引き金になるのは、本当にささいなことが多いようです。
(『何が過食衝動・嘔吐衝動の引き金になるのか』参照)

 

過食症の人々の大半が過食症であることを恥じていて、その事実を隠しています。
ときには大変な努力をしてでも、他の人たちと一緒にいるときには普通に食べているふりをして、体裁を保つのです。

(中略)

過食嘔吐衝動のあるとき、あるいは、その行動の最中には、嫌悪感、無価値感、絶望感、無力感などを経験することが多い一方で、過食嘔吐後には、満足感、羞恥心、安心感、自己嫌悪、気分のよさ、めまい、疲労、自分への約束などの入り混じったものが感じられるかもしれません。
この一連の行動のどこかで、今度こそこれで最後にしよう!という意志を固めることもしばしばあるでしょう。

ホール&コーン『過食症:食べても食べても食べたくて』星和書店

 

対人関係療法の初期のマニュアルでは、「他人と率直な関わりができない、自分の「良い面」しか見せることができない、という患者の特徴が、過食のきっかけとなるネガティブな気持ちとつながることが多い」とされていました。

このような「対人過敏性(対人関係構築困難)」は、根底にある「自分自身との関係」の結果ですよね。

心の安定は身体の安定の上に成り立ちますから、まず取り組むべき課題は栄養状態や生活リズムの改善を含めて「自分自身と向き合うこと」ということにまりますよね。

 

院長