過食症状の意味と目的を理解する

過度の運動で消費エネルギー量が増大したり、食事制限や断食などで摂取エネルギーを制限したりして、身体を維持する必要なエネルギーが足りなくなると(飢餓状態)、食欲中枢のスイッチが入り、生命の危機状態を回避するために食べても食べても満足できない状態になってしまいます(飢餓大食)

これは誰が考えてもわかる身体の摂理ですよね。

 

「過食(むちゃ食い)」や「過食嘔吐(食べ吐き)」の意味や目的は、生物学的・心理学的に分けて考える必要があります。

ここでは、通常の食事は摂取できている生物学的に安定した状態での心理学的問題について、過食症状の意味と目的を考えていましょう。

 

過食症は私にとって、友人、恋人、隠れ家、内なる声であり、生きる意味を感じる方法でした。

関係が冷め切っていた家族との関係に目をつぶるため、また、恐ろしく、不確かで、どうしてよいのかわからないこの社会に対処するための、一つの方法だったのです。

けれども、何気ないダイエットとして始まったものが過食嘔吐という怪物と化し、私の全人生を呑み込んでしまうほどの脅威となったのです。

ホール&コーン『過食症:食べても食べても食べたくて』星和書店

 

過食(むちゃ食い)は、満たされなさ(無価値感)をなだめ、淋しさ(孤立感)を麻痺させるなど、感情調節に関わっています。

本当は「ハート型のバスケット」の空虚感を癒す「精神的な糧」が必要なのに、「ひょうたん型の容器」を「食べ物」で満たそうとすることが、「食べても食べても食べたくて」という「過食症状(むちゃ食い)」につながっていますよね。

 

私の回復は一晩で起こったのではありません。
過食のたびにその意味と目的について考えながら、過食がだんだんと落ち着くまでには一年以上かかりました。

その間、一歩一歩進むことによって、私は怖がらずに食べることを学びました。
継続的に、自分が「安全」とした食べ物以外にも手を伸ばし、何でも食べられるのだと学び、しかも自分の身体の欲求に対して正直に食べられるようになりました。

ホール&コーン『過食症:食べても食べても食べたくて』星和書店

 

自己誘発嘔吐などの非機能的な代償行為は、慢性的な飢餓状態を引き起こします。

著者のリンジーさんは、「私は、嘔吐はしないと心に決めて、過食を計画し、一日中その計画通り、過食をしたのです」とおっしゃっているように、過食嘔吐(食べ吐き)から回復したいと思ったら、過食(むちゃ食い)をなかったことにする・ちゃらにする自己誘発嘔吐(吐き戻し)からとり組む必要があるのです。(Akoさんの「摂食障害が教えてくれること」も参照してみてくださいね)

 

私は積極的にできるかぎりの努力をして、驚くべき変化を経験しました。
過食症の思考と行動がおさまってくると、それが長年、私にとってどのように役立っていたのかを理解できるようになりました。それは他の方法を知らなかったために、生き延びるための道具として私には必要だったのです。

(中略)

この回復の過程で、自分の身体との関係が表面化し、私は新たに身体を大切に思う気持ちと愛情をもって自分の身体に接することができるようになりました。
どうせ私なんか、とか、ひとりぼっちだという感覚や思い込みは、安らぎ、つながり、ありのままを受け入れる感覚へと変わっていきました。

ホール&コーン『過食症:食べても食べても食べたくて』星和書店

 

対人関係療法による過食症の治療でも、食べ物や体重への関心を、その根底にある自分自身との関係の問題に向け直し、内的(自己内)コミュニケーションを通じて「自分自身との関係」を改善し、「行動の仕方」を変え、そして、外的(対人間)コミュニケーションのスキルを身につけることで「他人との関係」を改善していきますよね。

 

摂食障害の人の現実の対人関係パターンは「対人関係の欠如(対人関係の回避と対人学習の乏しさ)」のように見えますが、その根っこにある「自分自身との関係」は「役割をめぐる不和(役割期待のズレ)」の状態ですよね。

じつは、「自分自身との関係」と「他者との関係」を区別することが過食症の対人関係療法の最大のポイントになるのです。

つまり、まず「自分自身との関係」を改善し、それから「行動の仕方」を変えていき、「他者との関係」を改善していく順番で取り組んでいくのです。
(『摂食障害からの回復には自分と他者の心の状態に気づくことが大切』も参照してください)

 

私はこうして摂食障害(拒食・過食)から回復した』の中で、ジェニー・シェーファーさんは、摂食障害の部分をエド(Ed)と名づけ、エドの声と自分自身の声を区別して、エドからの自立に取り組んでいきましたよね。
摂食障害から回復するための8つの秘訣』でも摂食障害の部分と健康な部分の対話を重視しますよね。

 

これが対人関係療法で「自分自身との関係を改善する(心の状態の変化についての気づき)」と呼んでいることなのです。

 

回復の過程で私が気づいた最も意味のある発見、それは、私は過食症抜きで自分が何者なのか、どうなりたいのか、わかっていなかったということです。

そこで、より深いレベルで自分自身を知るために私は自分の外見の問題から内面の思考や感情へと、あえて意識しながら、焦点を変えていきました。

瞑想をすること、日記や手紙を書くこと、長時間にわたって散歩すること、内容のある会話をすることなどを通して、それを実現していったのです。

ホール&コーン『過食症:食べても食べても食べたくて』星和書店

 

「自分自身との関係」は、自己志向のうち深い自己受容(『摂食障害の考え方のクセと深い自己肯定感』参照)、つまり「マインドフルネス」「アクセプタンス(ウィリングネス)」そして、「セルフ・コンパッション」を通して身につけていくプロセスが、最新の対人関係療法(IPT-ED)で取り組んでいく「自分の価値や目的に沿った生き方(ライフ・ゴール:人生の目的)」を模索するプロセスになるのですよ。

 

院長