過食症やむちゃ食い障害の対人関係療法のすすめ方

拒食症・過食症を対人関係療法で治す』には

・ダイエットをする人は「冒険好き」スコアが高い。
・「心配性」のスコアの高さがあると、ダイエットから過食症に進む。
・「冒険好き」スコアが低い患者さんの場合には、安心してどんどん食べてもらえる。(過食に移行しにくい)

と書いてありますよね。

 

過食やむちゃ食いで三田こころの健康クリニックを受診した患者さんに、クロニンジャーの「七因子モデル」の検査をしてみると、「心配性(損害回避)」は高い人が多いのはそのとおりなのですが、「冒険好き(新奇性追求)」が高い人はほとんどいらっしゃらなかったのです。

気質の「冒険好き(新奇性追求)」は低値から平均程度で、それよりもむしろ目立つのが性格(環境や対人学習の結果)の「協調性」が標準偏差を越えて高い人がかなり多いのです。

 

10年ほど前までは、境界性パーソナリティ障害との関連が言われていたように、巻き込み型の摂食障害(過食嘔吐を伴う拒食症や嘔吐を伴う過食症)が多く、「対人葛藤の解消手段としての過食」であったのが、近年は「自分自身と向き合えず、他者とのかかわりも乏しい」回避や強迫傾向をもった依存的・気分屋的な人が多くなり、過食症の発症メカニズムや表現型が変化したのではないかと考えています。

 

実は、回避傾向が強いと「自分のまわりの状況(とくに対人関係に関するもの)に変化を起こす」に取り組むことが難しいだけでなく、「自分の気持ちをよく振り返り、言葉にしてみる」も困難なため、対人関係療法がうまく進められないことがかなり多いのです。

フランさんが「ロサンジェルスで摂食障害治療を受ける」に書いていらっしゃったとおり、「教科書に沿って、気持ちの対処の仕方、気持ちの耐え方、マインドフルネスを学ぶのも大事だけど、やっぱりそれだけだと大事な気持ちのところが抜けちゃってる」になってしまっているのかもしれません。

 

時代背景による患者さんの状態の変遷があることから、対人関係療法もそれに対応できるように変化する必要があると考えているので、それぞれの人生を生きている患者さんの生活への視線や患者さんの状態に合わせた対人関係療法を行っているのです。

 

それはさておき。
上述の「損害回避」と「協調性」の高さは

・「相手はこう思っているに違いない」と推測すること
・対人関係の乏しさから顔色(非言語的コミュニケーション)の判読ミス

に関わっていることから、対人関係療法では『ダイエット依存症』にある「頭の中で想像上の相手が大活躍」している状態、三田こころの健康クリニックで「脳内劇場」と呼んでいる状態がほとんどなのです。

 

つまり、過食症では日常的な出来事をネガティブに解釈してしまい、その解釈(思考)に反応した不安などの感情に気づくことができず、また心の中で抱えておくことができないため、現実は何も変わらないのに摂食障害症状を使って解消しようとすることと、解消行動に対する罪悪感が食行動異常の維持因子になっているようです。

この背景には

☆ 内受容感覚(感情や身体感覚)に対する気づきの乏しさ
☆ 不快な感情や身体感覚に対する回避と解消行動(気分不耐)
 ・ 状況判断をすることなく、すぐ行動に移してしまう(性急自動衝動性)
 ・ 少ない報酬であっても、少しでも早く得ようとする(衝動過敏性)

という要素があることが最近の研究でわかっています。

そうなると治療は、

(1) 内受容感覚に対する気づきを高める。
(2) 思考を現実と思いこむ状態から脱けだす。(現実に戻る)
(3) 感情や身体感覚を積極的に受容できるようになる。

が治療目標になってきますよね。

 

これは三田こころの健康クリニックで行っているように

(1) 初期:治療の土台作り・人の心の仕組みと動き方を知る(自分の気持ちを振り返る・自分と向き合う)
(2) 中期:対人学習(コミュニケーション分析)・対人関係スキルを高める
(3) 終結期:自分との折り合い方を変える(思考から離れる・感情受容)

というすすめ方になるのです。

 

(2)のプロセスが「自己効力感(コントロール感)」を高め、(1)と(3)のプロセスで「自己肯定感」を高めると同時に、自分と考えが違う他人も認められるようになる本当の意味でのマインドフルな生き方ができるようになることを目指します。
(このやり方を始めてから治療効果が出やすくなりました)

とくに(1)と(3)を進めるときにマインドフルネスを使うこともあるので、『過食症の治療とマインドフルネス』も参照してくださいね。

 

このような対人関係療法のアレンジは、患者さんに最もマッチした治療法を考える鑑別治療学が土台になりますから、治療が進まないと感じられている患者さんがいらっしゃったら、どのプロセスで引っかかっているのかを考える一助になればと思い、三田こころの健康クリニックの対人関係療法のやり方を公開してみました。

院長