過食症からの回復に必要な自分との向き合い方

過食のような衝動的な行動が起きるとき、
あるいは無性にやせたいと感じてしまうときは、
心の奥底にある何かから目をそらそうとしているようです。

嫌な気持ちを感じないようにしよう、怒りや不安を打ち消そう、
寂しさや孤独を紛らわそう、空虚感を満たそう
などの気持ちから過食をすることで逃げられるのです。

過食症やむちゃ食いの対人関係療法による治療では
「過食衝動が起きたときに自分の気持ちをよく振り返る」
ことが最初の課題になりますよね。

気持ちは、感じたままにしておけるだけでなく、しっかり感じているとむしろ圧倒されにくくなるのです。
私たち著者は、摂食障害に苦しんでいた当時も今も、気持ちをしっかり感じられるようになると、偽りのない心からの喜びに満ちた人生を歩みやすくなると実感しています。
摂食障害から回復するための8つの秘訣』星和書店

このような感情とのつきあい方ができるようになることが
過食症からの完全な回復に必要なスキルになります。
そのため、三田こころの健康クリニックでは
対人関係療法による治療と合わせて
マインドフルネスを指導していますよね。

気持ちを感じても過食で紛らわすのではなく
心の中で抱えられるようになることを
「感情耐性を高める」と言います。

「感情耐性を高める」ことが課題になる感情不耐の人は
何もすることがない(余暇刺激)とダラダラ食いが起きやすく
気をそらそうと無理やり友達を合う予定を入れたりして対処してしまい、
それができないとダイエットを始めるなど
心と向き合うことを徹底的に避けようとしてしまいますよね。

ところが、体重計に乗って数キログラム増えたと知ったとたんに、突然太っている気がして、抑うつ感、無価値感、羞恥心といった気持ちが湧いてきて、そうした気持ちをなんとかして「解消」したいと思うのです。
しかし、考えてみてください。
体重計の数値や数キロ体重が増えたことが、どうしてそれほどあらゆる気持ちを引き起こす原因になるのでしょうか。
一般の人たちは、このように反応はしませんので、もしあなたがこのように反応するのでしたら、何らかの別な原因があなたの内部で起きているはずなのです。
外見の何かを変えれば内面の問題が解決するはずだと信じている間は、深い部分にある問題は潜んだままで、解決されることもないでしょう。
(中略)
また、辛くて不快な気持ちを「太っている気」に変換するプロセスは、あなたの中でいつの間にか自動化されているかもしれません。
「太っている気がする」と言うほうが、「寂しい」、「一生誰も愛せないのが怖い」などと言うよりも安全に感じられるからです。
摂食障害から回復するための8つの秘訣』星和書店

このようなときに対人関係療法では、
「周りの人に話を聞いてもらう」というやり方をしますよね。

しかし聞いてもらう話の内容が「症状」に関することであれば
ますます自己否定が強くなってしまうだけでなく、
自分が望んでいることと逆の状況を作ってしまうのです。

やがて気がつくようになりましたが、「完璧でなければならない」や「ダメな人間だ」といった私の信念は、周囲の人に対してもまるで私が彼らを評価しているような悪影響を及ぼしただけでなく、私の中でも自分には価値がなくて恥ずかしいという感じをいつまでも生み出し続けました。
(中略)
自分の思考、気持ち、行動を慎重に探ってみると、他の人たちの評価や拒絶から身を守るために完璧主義を隠れ蓑に使っていたのだとわかりました。
問題は、自分を護るためのこの方法が、心から願って切実に希望していたものを手に入れる妨げになっていた点です。
摂食障害から回復するための8つの秘訣』星和書店

どういうことかというと、

悩みを語ることで、悩む主体として自己が形成される。
薬を飲むことで、悲劇のヒロインの役割に埋没していく。
病人らしく振る舞うことで、病人としてのさらなる現実が構築されていく。
摂食障害の語り〈回復〉の臨床社会学』新曜社

ということなのです。

対人関係療法による過食症の治療ではあまり重視されませんが
自分自身と向き合うというプロセスは
自分自身との役割期待の不一致(葛藤)を解消していくプロセスで
過食症から完全に回復するためには、
どうしても避けて通れないプロセスなのですよね。

院長