過食・大食をともなう排出性障害

誰かから聞いた「吐けば太らない」という言葉を思い出し、食後に自己誘発嘔吐を始める方がいらっしゃいます。
人生を台無しにしかねないダイエット目的の自己誘発嘔吐は絶対にやらないで欲しいと願っています。

 

「吐けば太らない」という迷信を安易に信じ込んでしまう心理背景も問題なのですが、食後に自己誘発嘔吐を繰り返すことによって身体は飢餓状態に陥りやすくなります。

そうなると「食べたい衝動(飢餓大食)」が高まり、たくさん食べて嘔吐する、という一見、神経性過食症(自己誘発嘔吐を伴う過食症)や神経性やせ症(過食と自己誘発嘔吐を伴う拒食症)のようにみえる病態が成立してしまいます。

ダイエット目的の自己誘発嘔吐からしだいに大食や過食になり、1日に何回も過食・嘔吐を繰り返すタイプの人の他にも

・気持ち悪くて吐いたことをきっかけに、大食と嘔吐を繰り返すようになる
・食べすぎて吐いたことをきっかけに、大食と嘔吐を繰り返すようになる

タイプがあるようです。

いずれのタイプも

○ いつも胃の中を空にしておきたい
○ 通常の食事の後に嘔吐したい衝動にかられる
○ 通常の食事の後でも嘔吐してしまう

という要素が共通して見られるのが特徴です。

 

典型的な神経性過食症(自己誘発嘔吐を伴う過食症)の患者さんは、交感神経の活性亢進(過緊張や過覚醒)を伴う感情(情動)を麻痺させるために大量の食物を憑かれたように早食い過食し(満腹反応が起きない)、感情が鈍麻されると、ふと我に返り後悔をともなった自己誘発嘔吐を行い、嘔吐の後は麻痺を伴ったシャットダウン(解離)に陥ります。
(『愛着トラウマの脳科学』参照)

一方、上記のように自己誘発嘔吐から始まった患者さんでは、1回の過食(食べはじめから嘔吐まで)の量は典型的な神経性過食症の患者さんより少なく、早食いというより水や炭酸飲料、あるいはジュースで流し込むことが多く、途中でストップすることが可能であり、「過食の定義」を満たさないことも多いのです。

さらに典型的な過食症との違いは、過食や大食、および大量の水分摂取は嘔吐するための方法なので、「早く吐きたい」と思いながら食べていらっしゃる方がほとんどです。
加えて、大食(あるいは過食)と嘔吐が1回では飽きたらず、数時間にわたって1日に何度も繰り返されるのが特徴です。
(背側迷走神経のシャットダウンが起きない)

過食症の人は「過食を止めたい」を主訴に医療機関を受診されるのに対し、このタイプの人が治療を求められるときは「クセ(嗜癖)になった過食嘔吐(食べ吐き)をやめたい」と話されるのも特徴です。

吐く(自己誘発嘔吐)という症状』で触れたように、過去のいろんな出来事、たとえば幼稚園や小学校の頃のエピソードや、自己誘発嘔吐や大食・過食が始まった時のこと、最近の過食や自己誘発嘔吐につながった出来事やその時の気持ちなど「憶えていません」とおっしゃることがすごく多いのです。

このような言語性記憶とワーキング・メモリの低さは、対人間のコミュニケーションの困難を伴いやすく、セッション中の会話で的外れな応答が多くなります。

カウンセリングなどで話を聞いてもらうことでスッキリするのですが、変化のための行動を起こすことに結びつかないため治療の進み具合が非常に遅くなることが多いのです。

 

言語性記憶とワーキング・メモリの低さは自己客観視や自己内対話の乏しさと関連しているため、アタッチメント(愛着)の基盤とも関連する島と前帯状回、前頭前野内側部のつながりを強化する取り組みが必要です。
(『愛着トラウマの脳科学』参照)

 

三田こころの健康クリニックは過食症の治療を専門に行っていますので、最近はこのタイプの患者さんがすごく増えている印象があります。

現在、摂食障害、あるいは過食症ということで医療機関に通っていらっしゃる方の中にも、かなりの数の患者さんがいらっしゃるのではないでしょうか?

日本にも摂食障害専門治療施設 をつくろうプロジェクトのニュースレターで三田こころの健康クリニックで行っている『摂食障害から回復するための8つの秘訣』を併用した対人関係療法の取り組みが取り上げられました。

「排出型の過食症」や「過食嘔吐を伴う拒食症」あるいは単に「摂食障害」と診断されて通院中だけど、薬だけ処方されてなかなか改善がみられない方は、三田こころの健康クリニックに相談してみてくださいね。

院長