過食や過食嘔吐はクセ(習慣)になるのか?

過食や過食嘔吐がクセ(習慣)になるとは、どういうことでしょうか。

 

摂食障害では中核の精神病理である「やせ願望(自己評価が体重や体型の影響を強く受けている状態)」や「肥満恐怖(体重や体型そのコントロールへの過剰なこだわり)」があり、これらは食行動異常が進行し常態化するにつれて強くなってきます。

過食や自己誘発嘔吐という摂食障害の症状には、心が動いたとき/嫌なことがあったときのストレス過食や大食、寂しさや虚しさを紛らわす過食や大食、あるいは飢餓過食や、解離を伴う過食があります。
(摂食障害の病理を欠く食行動の異常は摂食障害に含めません)

そして患者さんによっては、さまざまな程度の感情認知困難(アレキシサイミア)や、身体感覚への気づき低下(アレキシソミア)、あるいは気分不耐(感情への接触回避)がありますから、「過食や過食嘔吐がクセ(習慣)になった」と感じられるのも無理もないことなのです。

 

無理もないことなのですが、「クセ(習慣)なのかどうか」と考え込むのではなく、「日常生活のバランスを崩してまで、過食や過食嘔吐にしがみつくのは、何がストレスになっているのか」という観点が必要になります。

「この頃、ますます体型が気になるようになってきた。
ストレスが高まっているようなので、私の生活の中で何が起こっているのかを考えたい」「過食がひどくなってきたので、何がストレスになっているのかを考えてみたい」というやり方が理想的です。
「なぜ自分は体型が気になるのか」「なぜ自分は食べることにこだわるのか」と考え込むのは避けていきましょう。
水島広子『拒食症・過食症を対人関係療法で治す』紀伊國屋書店

ということなのですよね。

 

ちなみに。
「なぜ?」「どうして?」という感じ方・考え方は、自分を責める考え方につながることを、治療の土台作りのなかで教えていますよね。

 

患者さんの中には「過食嘔吐が唯一の楽しみです」と言って治ることを拒む人もいます。
そう言われて治療をためらう治療者もいるようですが、患者さんが本当に言いたいのは、「今は過食嘔吐がなければ心のバランスが保てません」ということなのです。
これは患者さんにとっての真実ですから、きちんと認める必要があります。患者さんが怖れているのは病気が治ることではなく、そのバランスを崩されることなのです。
治療で目指すのは、「過食嘔吐に頼らなくても心のバランスをとれるようになること」です。
そうやって手に入れたバランスは、かつての「バランス」などとは比べものにならないくらい、安定して満ち足りたものになるでしょう。
(中略)
何と言っても、摂食障害は基本的には「心の病」です。心が病んでいるからこそ、症状というSOSが出ているのです。
だからこそ治療する必要があるのです。
水島広子『拒食症・過食症を対人関係療法で治す』紀伊國屋書店

 

過食や過食嘔吐がクセ(習慣)になったと感じられても、それは症状というSOSが出ているということですし、クセ(習慣)であろうとなかろうと、過食や過食嘔吐に頼らなくても心のバランスがとれるようになるという治療目標は変わりありませんよね。

ここで大切なことは

重要な他者との関係に手を抜かなければ、たいていのトラブルは乗り越えられると考えてよいでしょう。
重要な他者との関係は、悪くなればそれ自体がストレス源となりますが、良好であれば心を強めてストレス耐性を高めることになります。
(中略)
自分から遠い人との関係は適当にしながら、重要な他者との関係だけは絶対に逃げないようにしていけばよいのです。
コミュニケーションを振り返るのも、基本的には重要な他者との関係において行えば十分でしょう。
(中略)
何がストレスなのかを振り返り、それを変化させるよう努める、という、それまでどおりのやり方を続けていけば、確実に回復に向かっていきます。
水島広子『拒食症・過食症を対人関係療法で治す』紀伊國屋書店

ということなのですから、とくに脳内劇場であれこれ評価を気にしている人は、重要な他者(両親やパートナー)との関係に目を向けてみてくださいね。

院長