身体のシグナルを感情として読み解く

うつ病や抑うつ状態、あるいは不安障害の身体症状として、さまざまな自律神経症状が現れることはよく知られていますよね。

身体や生命が脅かされるトラウマでなく、挫折体験や死別体験を含む日常的なプチ・トラウマによる抑うつ状態でも、慢性的な身体疼痛の背後に、抑圧された感情のパターンがあることも知られるようになってきました。

英語のサイトですが、「感情状態に関連した12種類の痛み」に、「身体的な痛みの機能は、感情的な取り組みが続いていることを知らせている」と書いてあります。

頭痛や頸の張りや凝り、背中や腰の痛み、あるいは動悸(心悸亢進)や胸部圧迫感などの症状は、身体が何かを伝えようとしているシグナルでもあるのです。

 

食べ物や食べることに関する葛藤から解放されるためには、メタファーについて学ばなければなりません。空腹感はさまざまな感情、ニーズ、そして欲望を現しています。私たちの体はよく、メタファーを使って何かを伝えているのです。
(中略)
乱れた食行動を克服するには、空腹感に隠されている意味を探し出さなければなりません。そうすることで、むちゃ食いしたいという欲望は、心の何かが満たされていないことの表れだと気づけるようになるのです。
胃に物を詰め込むのは「受け入れたくない」感情や「煩わしい」感情を押し込めるときの癖かもしれません。体脂肪ゼロへの執着は、女性らしい体の曲線美を隠したいという思いのせいかもしれません。 

ジョンストン『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』星和書店

 

過食衝動という「心の飢え」のサインは、慰めやいたわり、自己表現、精神的な充実感が満たされていない空虚感のメタファーであるのですが、この「心の空虚感(飢え)」を食べものに対する「空腹感」と誤解してしまうと、本当に必要なものへの「渇望」が封じられてしまいます。

 

三田こころの健康クリニック新宿では、3つの摂食障害行動をそれぞれ、「現実から空腹感へ気をそらすための拒食」「気持ちをなだめ麻痺させるための過食(むちゃ食い)」「なかったことにする嘔吐」と説明しています。

 

自分の抱く感情、特に負の感情と呼ばれるものに恐れを感じている人はたくさんいます。
そしてそんな人たちは、痛みを感じてしまったら対処しきれずに打ちのめされてしまうのではないか、一度でも孤独を感じてしまうと永遠にそれが続くのではないか、怒りをじかに体験してしまうと物や人を傷つけて破壊してしまうのではないか、などと恐れながら暮らしています。
その結果、恐怖や悲しみ、怒りや孤独感といった「悪い」感情を無視するか、必死にコントロールすることで、それらをなるべく感じないようにしてしまいます。

ジョンストン『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』星和書店

 

摂食障害行動が対処しようとしているのは、多くの場合、ネガティブな感情として感じられます。
ほとんど知られていないのですが、ネガティブな感情だけでなく、嬉しいことや楽しいことがあって「心が動いたとき」にも過食衝動のスイッチが入ることを、皆さんは体験していますよね。

 

8つの秘訣』にも「秘訣4 気持ちを感じて、自分の考えに抵抗してみよう」があるように、摂食障害からの回復には自分の気持ちをふり返ることがなによりも大切になります。

なぜなら、摂食障害行動はすべて、感情を無視するための方略になっているからです。

 

乱れた食行動で苦しむ女性たちは、誰よりも自分の抱く感情を怖れています。自分の体を疑い、体の最も正確なコミュニケーション手段である感情を大切にしていません。自分の体や気持ちから距離を置くためにありとあらゆる活動に取り組んだり、常に食べ物のことを考えたりしています。気をそらすためなら何でもします。
彼女たちは、「頭で生きている」と言えるでしょう。というのも、思考に物事を支配させて感情をどこかに閉じ込めてしまっているからです。悲しいことですが、彼女たちの多くは、自己意識が克服への最も大切な鍵であるということに気づけないのです。

ジョンストン『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』星和書店

「頭(脳内劇場)で生きている」摂食障害の患者さんにとって、『8つの秘訣』の「秘訣4 気持ちを感じて、自分の考えに抵抗してみよう」に取り組むことは、摂食障害から回復するための必須のプロセスになります。

その取り組みは、摂食障害の部分(自動思考)と健康な部分の対話だったり、言葉づかいだったり、考えと気持ちを分けたり、身体感覚を感じてみるやり方だったり、さまざまな方向から自分自身をふり返る取り組みがあり、これらが「自己受容」を育む土台になります。

 

クロニンジャーの七因子のうち、自尊心と間違って理解されている「自己志向」は、自己の次元における成長であり、「自己受容(どんな自分も認めることができる)」と「価値や目的の創造と行動」という2つの次元からなることを三田こころの健康クリニック新宿の対人関係療法で強調しているのは、ジョンストン先生のいう「自己意識」、つまり「自己受容」が摂食障害からの回復の最も大切な鍵になるからなのですよね。

 

院長