自分の気持ちをよくふり返り、言葉にしてみる。

対人関係療法で重視するコミュニケーションの土台は

私は何を観察しているのだろうか(出来事を具体的にふり返る)
私は何を感じているのだろうか(解釈ではなく、気持ちを明確にする)

という「自分自身をふり返る(内省)」になります。

これを言葉にして

『「私」は、“○○”を、[……]と感じている』
『「私」は“○○”は[・・・]になって欲しい』

と伝えることが非暴力コミュニケーションですよね。

 

その人それぞれにとって、摂食障害には役割がある。』で「記述なのか、評価や判断、解釈なのかを区別することが重要」と書きましたが、摂食障害の人はほんとうにこのプロセスが苦手なようです。
そのため、期待を明確にできずに、婉曲あるいは間接的な表現で相手にわかってもらおうとして伝わらないことを「わかってもらえない」と感じてしまうことが多いようです。

これは「自分自身をふり返る(内省)」の苦手さとも関連し

☆ 内受容感覚(感情や身体感覚)に対する気づきの乏しさ
☆ 不快な感情や身体感覚に対する回避と解消行動(気分不耐)

の要素があることが最近の研究でわかっています。

ですから過食や過食嘔吐からの回復には、「内受容感覚への気づきを高める」「衝動の波に乗る」など、自分とのつきあい方を改善していく必要があるのです。

 

ちょっとムズカシイですが「自分自身をふり返る(内省)」には

受容
自己観察
再帰性

の3つの機能があります。

「受容」はあきらめて仕方なく受け容れることではなく積極的な受容、つまり、意図的にオープンであるという意味です。
「摂食障害の回復の5つの心理的段階」すべてに共通する態度(心の姿勢)で、評価や判断、解釈をストップし生きている限り誰しも感じる感情を抑圧したり抵抗したりせず、慣れ親しんだ自動操縦状態から脱するための柔軟性を高めるというプロセスになります。

「自己観察」は自分自身を客観的にみることで、自らの思考・感情・身体感覚に気づいていること、です。

これらを練習していく過程では、

・自分の独り言が批判的か判断的であるかに気づく(べき思考、推測、自己否定、反すう)。
・自分の中のもう一人の自分が発する厳しい言葉の裏にある感情に耳を傾ける。
・もう一人の自分の反応を駆り立てている、満たされない要求を検証する。
・自分自身、あるいは他者の要求を満たすものはないかを考える。

自分がほんとうに必要とするものを確かめて、自分自身で受け容れ、自分を責めるのではなく、自分に共感することが重要なポイントになりますよね。

つまり、

自分がそれまで抑圧していた感情に気付き、生きづらさ、行き場のない思いや無意識に避けている部分に気づき、認めてあげる。
それらを自分の言葉にして、自己批判することなく、ありのままを表現してみる。(感情に良い悪いはない!)

ということですよね。

 

三田こころの健康クリニックでの治療では、これらをクロニンジャーの「自己志向性(自己次元での成長)」を高めるなかで「どんな自分も認めることができる(自己受容)」として説明していますよね。

「再帰性」はかなりムズカシイですが、「自分とは、他者がどう思っていると自分が思っているものである」に気づく、自覚することです。
私たちの気分を悪くするのは現実の他者ではなく、自分の心の中の他者(他者表象)であることに気づくこと、夢の中で自分を追いかけてくる怖い人も自分の心(夢)の一部だったと目が覚めてから気づくこと、に似ていますよね。

このような心の柔軟性を高めていくことで

・ 状況判断をすることなく、すぐ行動に移してしまう(性急自動衝動性)
・ 少ない報酬であっても、少しでも早く得ようとする(衝動過敏性)

 

自動操縦状態の心の状態に対して、本来の運転手(主体的自己(me))がコントロールを取り戻し、
さまざまな場面での経験を積む、状況・場面に応じて適切で柔軟な行動を自然にできる、という「自分の行動や選択に自覚と責任をもつ」主体性を回復していくことが、摂食障害からの回復にとって必要不可欠なプロセスになるのですよね。

院長