生活習慣としての食習慣の異常〜摂食障害未満

小児・思春期医学雑誌(Archives of Pediatrics & Adolescent Medicine)に、家族と食事を摂る青年期の女子は摂食障害の発症が少ないという論文が掲載されたことがあります。

1999年から2004年にかけてミネソタ州の学生を対象に行われた調査で、週に5回以上家族と食事する女子では摂食障害の発症が優位に少なく、家庭での食事の場での、家族構成員や家族関係に敏感に反応しているのではないかと考察されていました。

この結果は、家族関係が摂食障害の発症を抑制するのではないか、とも考えられますよね。

 

逆に、家族関係が関与しない場合はどうでしょうか?

三田こころの健康クリニックでの摂食障害の対人関係療法の申込みをみていると、「むちゃ食い障害/過食性障害」に似ているけれども摂食障害と診断できないケースでは、一人暮らしのケースがほとんどで、食事習慣も、早食いどか食いダラダラ食い、あるいはTVを見ながらのながら食いが多い印象がありました。

また生活パターンでは、朝の起床が遅く、休日は昼近くまで寝ていて、朝食を食べる習慣のない人が大部分で、夕食の時間が遅く、摂取量も多いことが目立ちました。

この食事パターンは「むちゃ食い障害/過食性障害」に似ていますし、「夜間摂食症候群/夜食症候群」のうちとくに夕食後に食べてしまうタイプ、あるいは、「他の特定させる食行動異常または摂食障害」
に分類されるのかもしれません。

 

たしかにこのような生活習慣としての食習慣の異常でも、ストレスを感じたり生活リズムが乱れたりすると過度に刺激を求めるようになることがあり、何もすることがないと摂食量が増え(余暇刺激による大食傾向)たりして、いつも通りの生活リズムが保てなくなります。

あるいは、夜にたくさん食べるので朝の気分が悪く、生活リズムが乱れることで生活でのストレスも増え、対人関係を避けたり、引きこもる傾向などが「過食症」や「むちゃ食い障害」と感じられるのかもしれません。

このような「摂食障害未満」の状態は学会でも知られていないし、本にも書かれていません。
多くの摂食障害や慢性うつ病の患者さんをみていると、あきらかに生活習慣の問題とわかる人も多いのです。

 

実際、厚生労働科学研究でも中学生女子に対する調査で、摂食障害の発症危険因子は「食事のカロリーが気になる」がトップでしたが、次いで「夜遅くまで起きていることが多い(オッズ比1.83)」と生活習慣との関係が密接であることが示されています。

獨協医科大学越谷病院こころの診療科教授の井原先生が、『生活習慣病としてのうつ病』という本を上梓されているように、心の病気を疑う前に、まず生活習慣なのです。

 

このような考えは「対人関係−社会リズム療法(IPSRT)」も同じで、起床・就寝時間、食事や運動、仕事をする時間など、生体リズムを規則的にすることと刺激を調節することで気分の波が安定していく傾向が示されています。

食べることが止められない、食べすぎてしまうと感じられている方は、まず、摂食障害なのかどうかの正確な診断が必要ですし、「摂食障害未満」の場合は、早寝早起きと規則正しい生活習慣など日常生活のリズムを整えることで、食欲という身体との折り合いをつけていく必要があるということですから、必要であれば三田こころの健康クリニックで「社会リズム療法(SRM)」を受けてみてくださいね。

 

なお、水島先生も書かれているように摂食障害の対人関係療法では、

なお、過食以外の日常生活についても、第8章(対人関係療法ー摂食障害を本質的に治療する)で述べる対人関係療法の課題以外には基本的に患者さんの自由にしてもらいます。
たとえば、早寝早起きを強制したりはしません。
(中略)
生活習慣に焦点を当ててしまうと患者さんが直視しなければならない対人関係の問題から逃げやすくなってしまうからです。
水島広子『拒食症・過食症を対人関係療法で治す』紀伊國屋書店

ということですから、摂食障害と診断された人は、まず、対人関係療法の課題に取り組むことが先決ですよね。
そして、ストレス過食が減った段階で、飢餓過食への取り組みの中で「身体の声を聴く」ということや「自分が管理を任された身体」という考えで生活リズムを整えることをやっていきますよね。

院長