特定不能の食行動障害

「神経性過食症/嘔吐を伴う過食症」では

○反復する過食エピソード
○反復する不適切な代償行動
○体型および体重によって過度に影響を受ける自己評価

の3つの特徴を満たすことが診断基準に挙げられています。

しかし最近では、症状の表現型は
「神経性過食症/嘔吐を伴う過食症」なのに
診断基準を満たさないケースが増えた印象があります。

「過食(むちゃ食い)」と「不適切な代償行動」が
平均して週1回未満(DSM-IVでは週2回未満)、
および/または3ヶ月未満であれば
「非定型神経性過食症(ICD-10)」と診断されますが、
「体型および体重によって過度に影響を受ける自己評価」
つまり「やせ願望」を認めない場合は
「特定不能の食行動異常または摂食障害」
と診断されます。

個人が特定できないよう改変した
いくつかのケースを合わせた症例を示します。

小学校の中学年頃までは交友関係に大きな問題はなく、仲のいい友人一人と一緒にいることが多かった。
中学2年頃(思春期)から相手が言ったことを真に受け、後で冗談だったと言われても納得できず、相手に何度も聞いてしまい疎(うと)んじられると同時に、人づきあいに苦手意識を感じるようになり一人で過ごすことが多くなった。

高1の頃から友達とも遊ばなくなり、何もすることがないとだらだらとおやつを食べるようになった(余暇刺激による大食)。高校2年のときに食事量を極端に減らすダイエットを開始し、食後に自己誘発嘔吐をするようになった(排出性障害)。なんとなく学校に行きたくなくなり(不登校)、この頃からダラダラ食いや自己誘発嘔吐の頻度も増えてきた。

やる気も起きず、過食もコントロールできないため自傷行為(壁に頭をぶつけるやベランダから飛び降りる)をして、精神科クリニックを受診。
双極性障害と診断され、抗不安薬、抗うつ薬、気分調節薬などを処方されていたが効いている感じはしなかった。

高校は何とか卒業し、専門学校に進学したが勉強についていけなくなり中退した。
アルバイトを始めたが過食も体調も波があり、下痢をしたりお腹が痛くなったりして急に調子が悪くなりバイトに行けなくなったりしている。

このケースは余暇刺激による大食〜過食や自己誘発嘔吐が
出来事と関連しておらず、やせ願望もみとめず、
「特定不能の食行動障害または摂食障害」
としか診断できませんでした。

病前気質は粘着気質・自閉気質であり、
双極性障害に特徴的な循環気質や執着気質などの「同調性」は認めず、
よく聞くと、場の雰囲気・状況・相手の表情の読み取りが苦手であり、
場にあった言動が難しく、かんしゃくを起こしてしまうことを
双極性障害と過剰診断されたようです。

その背景にあったのは、表情認知の偏りや、
知的能力の全判的な低さと偏りであり、
文章を何度読んでも頭に入ってこないことなどから
「特異的学習障害」と診断しました。

さらに特定の身体感覚への過敏性、
ストレスや緊張を抱えやすいため不適応を起こしやすく、
葛藤が身体化症状として表現されており、
加えて、身体症状への固執(こだわり)が認められました。

このようなケースにはどんな治療が最適なのかを考える場合
「もともとどんな人だったのか」を考えていく必要があります。

その際、知的能力障害や発達障害など神経発達症の有無や
生来的な気質や愛着スタイル、コミュニケーションスタイルなどを
対人関係療法ではアセスメントしていくのです。

その上で「排出性障害」や「非定型神経性過食症」であっても
出来事と気持ち、あるいは症状との関連に文脈が認められれば
対人関係療法で治療可能なことが多いですし、
実際に、対人関係療法の初期に過食や自己誘発嘔吐が消失し
過食や嘔吐につながった繰り返される対人関係パターンの改善に
引き続き取り組んでいらっしゃる患者さんも多いのです。

そういう意味では対人関係療法は超診断的な精神療法ですから、
過食症で通院されている方や過食症を思われる方は、ぜひ
三田こころの健康クリニックに相談してみてくださいね。

院長