月経前症候群(PMS)と過食の向き合い方

摂食障害行動の意味を理解することは、摂食障害からの回復に必要不可欠ですよね。

たとえば、拒食や不食はコントロール不能と感じた現実から目をそらすことができますし、過食やむちゃ食いは情緒的なぐさめや情動を麻痺させ、ダラダラ食いは満たされなさ(空虚感)をなだめ、嘔吐や下剤乱用などの排出行為は過食をなかったことにして安堵感や統制感を回復してくれるように感じますよね。

 

摂食障害行動によって一時的に慰めや安堵感、統制感を感じることができますが、一時的であるために摂食障害行動は「行動嗜癖(クセになった行動)」になりやすいのです。

 

何か強い感情を抱いたときに無茶食いをする習慣がついていたら、生理前にいつもより多く食べたとしても納得がいきます。生理前というのは、感情的に最も敏感になっている時期なのです。

ですから、感情に逆らってそれを食べもので押し込めようとするのではなく、この時期を、自分の感情により近づき、摂食障害症状の引き金となっている感情をより深く理解するチャンスだと捉えてください。

気分がひどく揺れたり、感情的になって過度に反応したりする傾向も、一ヶ月を通して押し殺してきた感情があることを知らせてくれるシグナルなのです。

ジョンストン『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』星和書店

 

心の中で起きて身体感覚として感じる気持ちを食べ物で押し込めようとするのではなく、気持ちを心の中で抱えてしっかりと向き合うことが摂食障害行動から回復するために必要不可欠ですよね。

ジョンストン先生は、「月経前は感情的に最も敏感になっている時期」とおっしゃいます。
「アレキシサイミア(感情言語化困難)」や「アレキシソミア(失体感症)」の傾向がある摂食障害の人にとって、月経前は自分の気持ちや身体感覚を感じてみる良い機会だというわけです。

 

そうすれば、PMSのSはsyndrome(症候群)のSではなく、sensitivity(感受性)のSとなって、「月経前感受性(premenstrual sensitivity)」となり、幻想のベールがはがされて真実へのアクセスが最も容易な時期と見なされるようになるでしょう。

一ヶ月を通して自分や他人についていた嘘は暴露され、もはや心の奥底で感じていた気持ちに逆らって行動することはできなくなるでしょう。

つまり、(sensitivityの方の)PMSの時期というのは、体が子宮内膜をきれいにそぎ落として新しいサイクルの始まりを準備するように、感情の大掃除をし、正直さを復活させ、過去を清算して、新しく再出発する良い機会なのです。

ジョンストン『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』星和書店

 

三田こころの健康クリニック新宿でも、過食が起きたときは摂食障害から回復するチャンスが巡ってきたと説明していますよね。
過食が起きたときに「衝動の波に乗る」方法を使って、何が起きたのかと現実をふり返り、自分自身と向き合うことで、摂食障害症状から回復する良い機会になるということなのです。

 

心理学者のマリア・ホールデンは、強い情動が生じたときにすぐに行為に移るのをやめて、その情動について考える(メンタライズする)ことを意味する「一時停止ボタンの必要性」と説明しています。

この取り組みによって「内受容感覚(情動や身体感覚)」への気づきを高め、「状況判断することなくすぐに行動に移してしまう(性急自動衝動性)」と、「少ない報酬であっても少しでも早く得ようとする(衝動過敏性)」という過食/むちゃ食いや排出行為の根本のテーマと向き合っていくわけです。

 

食べ過ぎたりダイエットしたりするのではなく、一ヶ月を通してしっかりと感情を認識し、受けとめ、はっきりと表現することで感情に対処できるようになると、生理前の感情の強烈さも落ち着いてくるでしょう。
そしてそのうちに、いろいろなことに気づかせてくれる贈り物として、生理を歓迎できるようになるのです。

ジョンストン『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』星和書店

 

ジョンストン先生は、月経(生理)を歓迎することができるとの文脈で書かれていますが、上記の「生理前の感情」を「過食衝動」と読み替えても意味が通りますよね。

 

対人関係療法では、他者との関係に取り組む前に、まず自分自身との関係を改善していきます。

自分の反応や気持ちをはっきりつかみ、コントロールし、表現することを学べば、自分を落ち着かせたり、慰めたりするために、食べ物に走らないですむようになります。
(中略)
食べ物で自分を麻痺させるのではなく、自分の気持ちに注意してはっきりつかめるようになる、つまり自分自身との関係を改善し、他人との関係を改善できれば、ネガティブな気持ちをコントロールするために食べ物を利用しなくてすむようになるでしょう。
自分の気持ちがうまく扱え、他人との関係もうまくいくようになるほど、過食は減っていくでしょう。

ウィルフリィ『グループ対人関係療法』創元社

自分自身との対人関係、そして他者との対人関係に向き合うときに必要なことは、「自分や他人についていた嘘は暴露され、もはや心の奥底で感じていた気持ちに逆らって行動することはできなくなる」、つまり、「自分の心に正直になる」ということですよね。
(『自分の心との向き合い方と対人関係』『過食症の自己欺瞞に向き合う』参照)

 

この時期は夏バテも重なり、食欲が落ちやすくなります。このような時期だからこそ、自分の身体に意識を向けて積極的に養生する必要がありますよね。

 

*来週のエントリーは8月29日(火)の予定です。

院長