摂食障害症状の意味

摂食障害に限らず、うつ病をはじめ心の病気の多くが、個人的な要因だけでなく、さまざまな環境的要因や心理社会的な要因が影響しあって発症することがわかっています。

 

内省能力や言語化能力が充分に発達していない人では、身体や行動面で抑うつ状態の症状を呈することが知られており、こういった症状は、代理症状あるいは仮面症状と呼ばれてきました。

青年期から成人の抑うつ障害(いわゆるうつ病)では、焦燥感、心配過多、エネルギー喪失感、精神運動制止、早朝覚醒などが多くみられるのに対し、思春期の抑うつ障害(思春期うつ病)では、無価値感、身体的愁訴、自殺企図が多いことが知られています。

その他、思春期によくみられる代理症状(抑うつ等価症)としては、睡眠障害、学校不適応、頭痛や食欲不振などの身体症状があり、食べられない状態は「食物回避性情緒障害」と診断されることもあります。
(DSM-5では「回避性・制限性食物摂取障害」に該当します)

 

あるいは、空虚感をうめるための非行などの反社会的行動や、見捨てられることを怖れたしがみつき行動による性的逸脱行動など、心の痛みが身体や行動に置き換わって表現されることが代理症状です。

摂食障害症状を心の痛みの等価症状としてみると、感情は危険で怖ろしいもので、感情に耐えることは苦しいため、「感情は完全に取り除かれるか回避されなければならない」という心の姿勢が背景にありそうですよね。

食物制限による空腹は気持ちを麻痺させ、過食やむちゃ食いは、ネガティブな気持ちをなだめ、嘔吐することで安堵がもたらされます。

 

三田こころの健康クリニックの対人関係療法による治療で、見ないことにする「過食」となかったことにする「嘔吐」と説明しているように、感情の麻痺、感情の回避、感情をなだめるといった感情調節不全に対する等価症として摂食障害をとらえています。

自分の反応や気持ちをはっきりつかみ、コントロールし、表現することを学べば、自分を落ち着かせたり、慰めたりするために、食べ物に走らないですむようになります。
(中略)
食べ物で自分を麻痺させるのではなく、自分の気持ちに注意してはっきりつかめるようになる、つまり自分自身との関係を改善し、他人との関係を改善できれば、ネガティブな気持ちをコントロールするために食べ物を利用しなくてすむようになるでしょう。
自分の気持ちがうまく扱え、他人との関係もうまくいくようになるほど、過食はへっていくでしょう。
ウィルフリィ『グループ対人関係療法』創元社

摂食障害から回復するための対人関係療法の中で、耐えがたいものとして経験され、回避されてきた気持ちに向き合うことがなによりも必要になってきますよね。

 

気持ちに向き合うときに必要なこころの姿勢は、『摂食障害から回復するための8つの秘訣』P.146の「◎感情とは、自分の思考に身体が反応して引き起こされるものである。」のパラグラフに重要なポイントがいくつも書いてあります。

あなたの身体は、彼の言葉自体と、あなたがどのようにそれを解釈したかということに大いに影響を受けます。
(中略)
身体が思考に反応して、気持ちとそれに伴う感情を生み出すといえるのです。
自分の気持ちや身体に感じる感覚は、自分自身の身体の中にあるのだという点を理解すると役に立つでしょう。
(中略)
たとえば、「私は怒っている」というよりも、「私の中に怒りがある」という方が正確で役に立ちます。
(中略)
即ち、怒りがあなたの内部にあるのでしたら、外に出す方法を探せばよいのです。
(中略)
「怒り」という言葉は、身体の中で起きている状態を本当に説明しているでしょうか。答えは、「いいえ」です。
(中略)
目標は、気持ちと身体の感覚を自分自身から切り離し、身体を中立の状態に戻せるようになることです。
そうすれば、気持ちを客観的にとらえることができ、圧倒されたり支配されたりすることをくい止めることができるようになります。
中立の状態に戻れば、はっきりと考えることができ、何を言うべきか、また適当な行動が見極めやすくなります。
身体の中にある気持ちを認識し、表現して、自分自身から区別できるようになると、気持ちに支配されなくなり、過剰に反応しないですむようになるのです。
コスティン・他『摂食障害から回復するための8つの秘訣』星和書店

このプロセスは、三田こころの健康クリニックでは、「観察・解釈(判断)・反応」として一番最初に練習してもらっていますよね。

院長