摂食障害症状が指し示していること

摂食障害症状に隠された意味を理解する』で、「「無力感」や「不全感」あるいは「空虚感」が、どんな力が必要で、どんな行動をすればよくて、何が足りないのかを指し示してくれていることを理解する必要がある」ことを書きました。

 

この見方ができるようになるために、まず摂食障害症状や乱れた食行動は辛い感情を感じなくて済むようにしたり、耐えられないと感じられる現実から一時的に目をそらすことができたことを認め、「自分の内からの声をずっと無視することは、スキルが身についていなかった時には助けになった方法だった」と理解することからスタートしますよね。

 

テーブルに着いた自分の中に同じ感情がわき上がってくるのに気づきましたが、今度はその感情とともにいることができました。

彼女は、家族たちから認めてもらいたいという期待が猛り狂い、彼らが認めてくれないことに怒り、彼らの関心を引き出すほど「充分によく」ない自分にたいして失望し、そんな状況を変えるために次に何をしたらよいのかわからずに座っているのも極めて不安だ、ということを経験しました。

(中略)

それまで彼女を困惑させていた力と一緒になって笑えたのです。

マーク・エプスタイン『ブッダのサイコセラピー』春秋社

 

ここで書かれている「感情とともにいる」「力と一緒になる」ことは、治療に取り組んでいても難しいと感じられると思います。しかし、この2つのプロセスは過食症・むちゃ食い症の治療の最終ステップで「感情耐性(心の中で気持ちを抱えておく)を高める」として取り組んでいきますよね。

 

どんな依存症で苦しむ人にも見られるように、彼女たちもまた否定の波に巻き込まれてしまって、心が訴えている飢えに気づくことができません。心にぽっかりと空いた穴が見えないのです。

具体的なものと象徴的なものの根本的な識別ができず、具体的なもの、つまり食べ物に執着してしまいます。依存の対象物がより大きな何かを意味しているということや、それが本当に望んでいるものの象徴でしかないということも理解できません。

自分の味わっている空しさが魂や心の空虚感であって、身体的な飢えではないということを理解できていないのです。

ジョンストン『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』星和書店

 

このようなときに「衝動の波に乗る」という心の使い方が必要になります。

 

過食を始めたり、食べることをコントロールできないと感じたりしたときは、いったんストップして自問することです。

「何が起こっているのだろう。このきっかけになった対人関係上の問題は何だろう。それによって自分はどんな気持ちになっているのだろう。この状況を何とかするためには、どうしたらよいのだろう。」

はじめは難しいかもしれません。

(中略)

動揺する状況を心にとめるようにし、そのときに起こっているもの(考え)や気持ちに注目してみてください。そのときに起こっているものに、です。

これがうまくできるようになると、自分の悩みを隠すために食べ物を利用しなくてすむようになってくるでしょう。

ウィルフリィ『グループ対人関係療法』創元社

 

「衝動の波に乗る」ことは、過食を我慢してやり過ごすエクスポージャー(暴露療法)ではなく、過食衝動に触れつつ、その衝動を生みだした「象徴」が指し示す「意味」を見つけ出す自分と向き合う作業なのです。(『摂食障害から回復するための8つの秘訣』P.209も参照してください。)

 

三田こころの健康クリニックでは「心の状態の変化についての気づき」「感情・考え・情動のコントロールについての気づき」と説明していますよね。

 

摂食障害の衝動(過食衝動)が起きたときは意識変容状態を伴いやすいため、そのときだけ「衝動の波」に乗ろうとしてもなかなかうまくいきませんよね。ですから過食衝動が起きたときだけではなく、普段から自分をふり返る作業を練習しておく必要がありますよね。

 

院長

※4月から金曜日に一般外来の診療を始めます。

気分が沈む、やる気が起きない、疲れが抜けない、眠れない、いろんなことが気になる、などさまざまな症状でお困りの方は、金曜日の一般外来にお申し込みください。

また、休職者向け復職支援(リワーク)プログラム、在職者向け再発防止(リテンション)プログラムの申し込みも受けつけていますので、電話でお申し込みください。

なお、摂食障害の対人関係療法や、気分変調症や不安障害の精神療法を希望の方は、これまで通り【摂食障害から回復する専門外来】に申し込んでくださいね。