摂食障害を強迫性障害として理解してみる

摂食障害は、強迫性障害とは別のカテゴリーの疾患であるものの、「強迫性障害」や「醜形恐怖」「ためこみ症」、あるいは「抜毛症」や「皮膚むしり症」などに合併・併存することが多いのです。

1990年代の初めにホランダー(Hollander)らが提唱した「強迫スペクトラム障害」は以下の3つの群に分けられています。

 

身体への「とらわれ」を有する群:身体醜形障害、神経性やせ症、神経性過食症、心気症
衝動行為を特徴とする群:抜毛症、反復的自傷行為、病的賭博、窃盗癖
神経学的症候群:自閉症・アスペルガー症候群、トゥレット症候群、チック障害

「身体への「とらわれ」を有する群」に分類されている摂食障害は、外観や身体イメージ、感覚へのとらわれがあり、心の中の不安を軽減するために、身体を使って何とかしようとする反復行為が生じるとされています。

また強迫性と衝動性を対極とする「強迫—衝動スペクトラム」では「神経性やせ症(拒食症)」は強迫性寄りで、「神経性過食症」は衝動性寄りに分類されます。

 

あなたの本当の問題が、お母さんとのひどい関係や、耐えられない結婚生活、嫌で仕方のない仕事、あるいはたくさんの人がいる部屋の中でも感じる孤独感だとしましょう。すべて、打ちのめされそうになる、大きくて複雑な問題です。
ここで食べ物のお出ましです。
もし拒食をすれば、あなたは食べ物のことばかり考えます。
過食嘔吐をすれば、空いた時間は過食の計画を立て、隠れて吐ける時間と場所を探すことに費やされます。
無茶食いをするならば、ひたすら食べ物、食べ物、食べ物に集中します。
すると不思議なことに、家、学校、職場、人間関係での問題が消え失せてしまうような感じがします。
ジョンストン『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』星和書店

これを読むと、他者との関係や出来事の体験の仕方によってイヤな気持ちになり、摂食障害行動を使って心の中のネガティブな気持ちを身体や行動で解消するカテゴリー・エラーが明らかですよね。

さらにもう一つ、摂食障害でよく知られているのが、巻き込み型と呼ばれる強迫症状です。
対人関係療法では以下のように説明されます。

「患者のすべてを受け入れるということは、何でも言うことを聞けということか」と思われるかもしれませんが、それはちがいます。患者さんの気持ちを受け入れることと、言いなりになることは違うのです。
また、患者さんの気持ちをいつも無条件に受け入れるためには、聴く側にも心の余裕が必要です。一緒になって強迫観念に縛られて疲弊していたら、患者さんを迷惑だと感じこそすれ、温かく受け入れてあげるのは難しくなるでしょう。無理をせず心の余裕を残せる範囲で、患者さんのやり方につきあっていただきたいと思います。
(中略)
でも、要求がどんどんエスカレートしたり、自分の余裕がなくなったりするときは、戦略が必要です。
「子どもの要求に応えてあげられるか」ということよりも、それがどのようにコミュニケーションされているかということの方が重要ですから、本当はやってあげたいけれども、自分の能力の限界でできない、という場合は、そのとおりに言えばよいのです。
「ごめんね。本当阿やってあげたいのよ。でも、お母さんの力では、そこまではできないの。たとえば、どういうふうにすれば、その代わりになるかしら」と交渉してみることは大切です。
水島広子『拒食症・過食症を対人関係療法で治す』紀伊國屋書店

とはいうものの、一度でも家族が強迫症状に巻き込まれてしまうと、本人が抵抗したり感情を爆発させたりして、巻き込まれを止めることが難しくなってしまいますよね。

「症状は異常・悪→除去願望を強化→かえって症状に注目させる→症状を強く感じる→症状が辛い→症状除去願望を強化する」といった悪循環に陥らせるからである。
平井孝男『心理療法の下ごしらえ』星和書店

という悪循環が生じてしまうからです。

 

対人関係療法は「特定の方向に患者を導かない」「認知に焦点をあてない」ことになっているので、患者さんが心の中で起きることと現実は異なるという表象的理解が難しく、自分の気持ちをふり返るのが困難で、現実認識が誤っていたとしても、それは症状であり、症状はコントロール出来ないとして扱いません。

また別のケースでは、「患者さんのやり方につきあう」「協力する」ことで、過食の食材買い出しだけでなく、学校の宿題も手伝わされて疲弊し、治療に非協力的になり、軋轢(役割期待の不一致)が強まって、三田こころの健康クリニックにお母さんが相談に見えたこともあります。

 

このようなときに、家族はどのように接してあげたらいいのでしょうか?

摂食障害の準備・誘発・維持因子2』や『「待てない」気持ちと短期精神療法』あるいは『家族が出来る支援・してはいけない手助け』『OCDの会2009年度行動療法研修会・市民フォーラム参加レポート―家族のための行動療法―』を参照にしていただけると幸いです。

院長