摂食障害はよい子がなりやすいといわれる理由

摂食障害は大人しくて自己主張をしないタイプの「よい子がなりやすい」とよくいわれますよね。

摂食障害で通院中の方や、摂食障害関連のさまざまな本を読まれた方の中には、そういうフレーズを聞いたり読んだりされた方も多いのではないでしょうか。

 

摂食障害の準備因子(背景要因)としてこれまで、

  • 女性性や成熟の否定
  • 幼少期に安全欲求や愛着(アタッチメント)希求が満たされなかった傷つき体験
  • 対人関係のストレスや忌避
  • やせ礼賛や自己管理不測としての肥満という社会風潮

などがいわれてきました。

「よい子がなりやすい」との見方と、これまで考えられていたこれらの準備因子(背景要因)を比べても、共通項が見えてきませんよね。

どういうことなのでしょうか?

 

摂食障害から回復するための8つの秘訣』も『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』でも、摂食障害行動(乱れた食行動)は、本質的な問題から目を逸らすための「目くらまし」であると説明されています。

「よい子」というキーワードも、本人も周囲の人も摂食障害の本当の原因が見えなくなっている「目くらまし」の結果なのかもしれません。

 

乱れた食行動では、食べ物が目くらましとなり、本人や助けになろうとしている家族や友達、そして医療従事者までもが、それに惑わされてしまいます。
食べ物に関する行動ばかりに注目していると、本当の原因が見えなくなってしまいます。
その錯覚にとらわれてしまう結果、克服への道のりからはずれてしまうのです。
解決策は、食べ物とはまったく違うものが握っているのですから。

ジョンストン『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』星和書店

 

対人関係療法では、過食を我慢することは自分の意思でコントロールできないものを無理にコントロールしようとしてバランスを崩し、「本当の問題」の解決に使うエネルギーが無駄に使われるため、治療中は食事のコントロールを行わず、過食を我慢しないようにといいます。

 

では、摂食障害行動(乱れた食行動)という「目くらまし」を使って向き合わずに済むようにしている「本当の問題」とは何なのでしょうか?

 

自分が嫌でたまらないとき、そして存在していること自体に苦しみや疑念を抱いているとき、依存は私たちを無意識の状態へと誘います。無意識状態にあると私たちは何も感じませんし、痛みや混乱、苦悩の存在もわかりません。
過食をしたことのある人は、誰もがトランス状態を経験したことがあるでしょう。過食が続くかぎり、現実の影が薄くなったような感覚に陥ります。
逆に自分を飢えさせている人は、だんだんと麻薬中毒のような「ハイ」な状態の誘惑に勝てなくなるような経験をします。

ジョンストン『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』星和書店

 

摂食障害の人が「人生で本当に苦しんでいること」の根底には「心の痛み」があり、「気分変調症(持続性抑うつ障害)」の人と同じように、傷つきやすさや脆弱な部分が出ないように必死で隠そうとしているかのようです。

そして傷つきやすさや心の痛みを感じなくてすむように、食行動という依存性のある「逃避ルート」を使わざるを得ないのです。

 

食べることやダイエットに依存している女性たちは、自分の体を大いに恐れています。
体には感情というものが存在しているので、感情を感じたくないがゆえに、体に一切の愛情を与えず、見捨てようとしてしまうのです。体とつながりを持つということは感情ともつながるということを意味し、彼女たちにとってそれは不快で苦痛なことなのです。感情というのは思考同様、簡単に整理して理解できるものではありません。また、行動と違って、コントロールすることができません。
依存性のある行動は、感情をコントロールしようとする努力を表しています。そしてそれ以上に、人生自体の流れをコントロールしようとするものです。依存症に苦しむ人は、物事をありのまま、自然の流れに任せるということができません。常に正しいあり方、より良いあり方、そしてより完璧なあり方でなければ気がすまないのです。

ジョンストン『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』星和書店

 

摂食障害の準備因子(背景要因)によって引き起こされた心の痛みや傷つきやすさを「正しいあり方、より良いあり方、そしてより完璧なあり方」によって必死で隠そうとする努力(べき思考)と完璧主義(白黒思考)が、「よい子」といわれる要因のようです。

摂食障害の人の多くが、自分の感情を肯定的な感情と否定的な感情に分裂させ、否定的な感情を抑え、偽りの肯定的感情をつかって相手に合わせたり、顔色を読んだり、強迫的に世話をしたり、などの愛着のタイプA方略が「よい子」と見られることにつながっているようですね。

このようなタイプAの愛着方略はまた、愛着障害と感じられたり、インナーチャイルドの傷つきとして感じられたりしますので、摂食障害からの回復に「傷つきを癒すインナーマザーの力を回復するプロセス」が必要になるのでしょうね。

 

院長